経営の羅針盤
外国人旅行客向けの消費税免税制度について、政府は新たな仕組みの導入を検討しています。訪日客が日本国内で買い物した際、いったんは消費税を含む代金を支払いますが、出国時にクレジットカードなどを経由して還付を受ける仕組みの導入を検討しているとのことです。 年内に制度を固めて2025年度以降の実施を目指します。
政府はこれまでも、インバウンド需要の喚起のためとして、訪日客に対する税優遇制度を打ち出してきました。14年10月には訪日客向けの消費税免税制度が改正され、食品や化粧品なども免税対象に追加。これにより、転売を目的とする〝転売ヤー〟の存在も問題視されるようになりました。
政府の「見直し案」では、商品の転売を防ぐため、購入額が一定以上の場合は出国時に空港で現物を確認した上で税金分を返金することとします。
現行の制度では、訪日客が通常の生活で使う商品を5千円以上買った場合、事業用や販売用としての購入を除き、輸出と実質的に同じとみなされて消費税が免除されます。免税店で旅券を提示すれば、消費税を支払わずに買い物ができます。その後に購入者は空港の税関で旅券を提示する義務があり、税関は必要に応じて物品を確認することになっていますが、実際には厳格な検査を受けずに出国する人が多いといいます。
こうした事情から「見直し案」では、空港での現金による還付は手続きが煩雑になるため、キャッシュレスによる還付を促す方針です。
新たな方針を受け、免税店としての登録を急ぐ小売事業者が増えるものと予想されています。また、いわゆる〝キャッシュレス決済関連産業〟にとってはビジネスチャンスとなりそうです。
一方でインボイス制度による負担増に喘ぐ多くの国内事業者からは、「われわれには消費税の課税強化、訪日客には消費税の免税と還付の迅速化。インボイスとインバウンドとではこれほどの税格差。不公平過ぎる」との声も聞かれます。
<情報提供:エヌピー通信社>