遺贈寄附という選択
少子高齢化や婚姻数の減少などを背景に、相続人がいないなどの理由で国庫に入る相続財産が増え続けています。2021年度に相続人不存在で国庫に入れられた相続財産は過去最高を記録しました。朝日新聞の報道によると、前年度比7.8%増の647億459万円だったそうです。20年前は約107億円、10年前は約332億円だったため、20年間で6倍に増えた計算です。
身寄りがない人が死亡して、財産の受け取り手が誰もいないケースでは、利害関係者か検察官の申し立てを受けて、家庭裁判所が相続財産管理人を選任することになります。選ばれた管理人は被相続人の債権者に相続財産から弁済し、公共料金などを支払い、残りは国庫に納まります。
ただ相続人がいない状況で必ず国に財産が移るかというと、そうではありません。相続人がいない被相続人の財産は、被相続人と生計を一緒にしていた人や介護・看病をしていた人などの「特別縁故者」に該当する人であれば受け取れるためです。代表的な特別縁故者は、内縁の妻や夫で、裁判所に特別縁故者と認められれば財産を受け取ることが可能。近年では、被相続人が生前に長く過ごした養護施設などが受け取る例も出ています。16年に名古屋高裁が下した判決では、知的障害がある男性が35年間生活を送った障害者支援施設を特別縁故者と認定し、約2200万円の遺産受け取りを認めました。
内閣府によると、ここ数年の婚姻数は毎年60万組ほどで推移しています。第1次ベビーブーム世代が結婚適齢期を迎えた1970~74年の年間100万組と比べると、未婚率は大幅に上がっているのが現状。配偶者や子がいなければ財産が国のものになる可能性が高いので、もし国に財産が渡るのが嫌なら、遺言の作成や養子縁組などで財産の引き受け手を事前に決めておくのが賢明です。
<情報提供:エヌピー通信社>