請負と委任
2021年6月、改正著作権法が参院本会議で可決、成立しました。主な改正点は以下になります。
①図書館関係の権利制限規定の見直し
②インターネット同時配信に関する権利処理の円滑化
①図書館に関する改正により、図書館が蔵書や資料をメールやFAXなどで利用者に送信できるようになります。背景にあるのは、新型コロナウイルスの影響です。書籍の中には、絶版などの理由で手に入りにくいものがあります。このような書籍について、研究者やジャーナリストなどは図書館を活用し資料を集めます。ただ、改正前の著作権法では、図書館が利用者に著作物をメールやFAXなどで送ることは禁じられているので、利用者は基本的には図書館に足を運ばなければなりませんでした。
昨年、感染拡大防止のため、図書館が利用できない時期があり、研究が進まない、原稿が書けないといった声が上がりました。今回の改正で、利用者は来館せずにメールやFAXで資料等を受け取れるようになります。
ただ、こうしたサービスには著者や出版社にとって不利益になる可能性を含んでいます。そこで、改正著作権法では、メールやFAXで送信できるのは「著作物の一部分」と定め、加えて図書館は作家らへ補償金を支払うよう義務付けています。とはいえ、補償金の額や一部分の範囲など、詳細は決まっていないため、今後、詰めていくことになります。
また、国会図書館は入手困難となった書籍の電子化を進め、ウェブサイトで一般の利用者も閲覧できるように取り組んでいます。著作権法の改正により、図書館の利便性はさらに高まることが予想されます。
②放送番組の権利処理は、テレビ番組をインターネットで同時配信しやすくするため盛り込まれた規定です。
著作権法が改正され、図書館の利用者は蔵書や資料をメールやFAXなどで受け取れるようになります。今回の改正では、もう一つ、テレビ番組のネット配信についても、権利処理が円滑化され配信がしやすくなります。
近年、テレビの番組をネットで配信することが増えました。ネット配信には、テレビ放映との同時配信や追っかけ配信、見逃し配信などがあります。こうした配信の番組では、ときおり、「権利の都合上、映像を使用できません」といったテロップが流れ、テレビでは流された映像が配信では見られないときがあります。
これは、テレビ番組のほうは使用許可が下りたものの、ネット配信のほうでは許可が間に合わなかったことが要因としてあります。たとえば、バラエティ番組でテレビドラマの1シーンを利用しようとすると、原作者や出演者などに個別に許可をもらうといった、権利処理が必要になります。こうした権利処理に対して、負担が大きいといった声が上がっていました。今回の改正で著作権に関わる手続きが簡素化され、ネット配信や番組で利用する際の許可への負担が軽減されます。
今後、政府は「知的財産推進計画2021」を決定して、コンテンツなどに関して、一元的に権利処理できるようにし、利用許諾の負担をさらに軽減する方針です。また、アマチュアがFacebookやTwitter、InstagramなどのSNSに投稿した著作物に関する管理の方法も課題となっていました。「知的財産推進計画2021」により、課題解決に進むことが予想されます。
もともと、著作権法ができたとき、インターネットは存在していませんでした。今後、さらにネットに関する新たなサービスが生まれ、時代に合わせ法改正は続くと予想されます。
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)