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相続税・贈与税の基礎知識(財産評価の方法・相続税の申告と納付)

伊藤惠悦

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テーマ:相続税・贈与税

Ⅱ 財産評価の方法
財産の評価は、原則として時価によって評価することになっていますが、実際は相続税法や財産評価基本通達に
よって、資産の種類ごとに具体的な評価方法が細かく定められています。
相続税の計算をするうえで一番面倒な部分ですし、かなり細かく専門的な話になってしまいますので、どうしても確
認しておきたい重要なポイントだけ簡単に見ていくことにしましょう。

1.土地
(1)評価方法
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。
路線価方式は、市街地の土地に適用され、道路に路線価と呼ばれる1㎡当たりの単価を付け、原則としてその土地が面している道路の路線価×土地の面積によって評価しますが、角地や不整形地、間口・奥行きの状況に応じて、さまざまな補正を行います。
相続税の評価の基礎となるこの路線価については、毎年7月に国税庁から「路線価図」として公表されます。
倍率方式は、その他の土地に適用され、路線価のかわりに一定の評価倍率を設定し、固定資産税評価額(角地や不整形地、間口・奥行きの状況等に応じた補正は、固定資産税評価額段階で行われています)×倍率によって評価します。
倍率は、「評価倍率表」として、路線価図と同様に公表されます。
(2)貸地、借地権
貸地については評価額×(1-借地権割合)によって評価します。
借地権については、評価額×借地権割合によって評価します。なお、借地権割合については、地域によって、9割~3割の範囲で定められており、これも路線価図等で確認することができます。
(3)小規模宅地等の特例
相続によって取得した土地のうち、被相続人等の事業用または居住用に供されていた宅地等で一定の要件を満たしている土地(小規模宅地等)については、400㎡、330㎡または200㎡までの部分について、評価額の80%または50%を減額することができます。
なお、用件は細かく定められていますので、適用する場合には注意する必要があります。
①80%評価減できる小規模宅地等
A特定居住用宅地等(330㎡までの部分)
→被相続人の居住用宅地を配偶者、同居親族等が取得した場合など
B特定事業用宅地等(400㎡までの部分)
→被相続人が営んでいた事業(不動産貸付業等は除きます)を引き続き営んでいる場合など
C国営事業用宅地等(400㎡までの部分)
→特定郵便局の場合
D特定同族会社事業用宅地等(400㎡までの部分)
→被相続人等の持株割合が50%超である法人の事業用宅地を親族が取得し、引き続きその法人の事業の用に供した場合
②50%評価減できる小規模宅地等
貸付事業用宅地等(200㎡までの部分)

2.家屋
家屋については、固定資産税評価額×1.0(倍率)で評価します。貸地の場合は、評価額×(1-借地権割合)によって評価します。
なお、借地権割合は原則として30%となっています。

3.その他の財産
①普通預金、通常貯金…相続発生時の残高によって評価します。
②定期預金、定額貯金…相続発生時の残高に解約した場合の解約利息から源泉徴収されるべき税金を控除した額を加えた額によって評価します。
③上場株式…相続発生日の終値、その月の終値の平均額、その前月の終値の平均額、その前々月の終値の平均額のうち一番低い価格によって評価します。
④非上場株式…株式の保有割合や会社の規模等に応じて、評価方法が異なります。


Ⅲ 相続税の申告と納付
1.申告・納付
(1)申告・納付期限
相続税の申告期限は、死亡の日(相続開始のあったことを知った日)の翌日から10ヶ月以内です。たとえば、1月15日に亡くなった場合には、11月15日までとなります。
相続税の納付期限も同じです。その日が、土曜日、日曜日、祝日に当たる場合には、その翌日が期限となります。
この期限を過ぎてしまうと、原則として加算税や延滞税がかかりますので注意してください。
(2)申告書の提出先
相続税の申告書は、被相続人(死亡した人)の死亡時の住所地の所轄税務署長へ提出します。
相続人の住所地の所轄税務署長ではありませんので、注意してください。
(3)申告不要の場合
課税価格の合計額が基礎控除額以下である場合には、申告をする必要はありません。
ただし、小規模宅地等の特例を適用した結果、基礎控除額以下となり相続税額がゼロとなった場合や配偶者の税額軽減を適用した結果、相続税額がゼロとなった場合には、申告義務がありますので注意してください。

2.遺産分割ができない場合
申告期限までに遺産分割ができない場合には、法定相続分にしたがって財産を取得したものとして、申告し、納税することになります。
この場合には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は適用できませんので注意してください。
ただし、申告期限から3年以内に遺産分割が行われた場合には、分割のあった日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求を行い、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
また、相続について裁判になるなど3年以内に分割できないことについてやむを得ない事情がある場合には、税務署長の承認を受ければ、その財産が分割できることとなった日の翌日から4ヶ月以内に遺産分割が行われれば、この規定の適用が可能です。

3.延納と物納
相続税は、期限までに現金で一括して納付するのが原則ですが、支払いが困難な場合には、延納(年賦払い)または物納(現金にかえて不動産等で納付)することができます。
なお、延納の場合には、所定の利子税がかかります。


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