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伊藤惠悦(いとうけいえつ) / 税理士

伊藤輝代税理士事務所

コラム

相続税・贈与税の基礎知識(相続税の計算方法)

2017年7月20日 公開 / 2020年6月1日更新

テーマ:相続税・贈与税

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 相続 手続き退職 手続き贈与税

平成25年度税制改正によって、小規模宅地等の特例の見直し等一定の措置を講じたうえで、基礎控除額の引下げや最高税率の引き上げを含む税率構造の見直しなど相続税、直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税率の特例等一定の措置を講じたうえで、最高税率の引き上げを含む税率構造の見直しなど贈与税がそれぞれ大きく改正され、平成27年1月1日以後に相続、遺贈、贈与によって取得する財産に係る相続税、贈与税から適用されることとなっています。
ここでは、改正後の相続税、贈与税について、基本的な内容を確認していくことにしましょう。

Ⅰ 相続税の計算方法
1.相続税の計算構造
相続税の計算方法は、大きく次の三段階にわかれています。
①第一段階:財産評価による課税価格の計算
②第二段階:相続税の総額の計算
③第三段階:各人別の納付税額の計算
相続税の計算方法の流れにそって、各段階を確認していきます。
  
2.第一段階:課税価格の計算
第一段階として、相続税の課税対象となる課税価格の合計額を次の順序に従って計算します。
(1)相続(遺贈)財産の価額
相続(遺贈)によって取得した財産の、相続発生時点での価額(時価)を求めます。相続財産の種類によって評価の方法が異なっていますが、財産の評価方法については、次のⅡで説明します。
(2)みなし相続財産
みなし相続財産とは、法律上の本来の相続財産ではありませんが、相続税の計算上、相続財産とみなして相続税を課税することとしているものです。
具体的には、死亡保険金(生命保険金、損害保険金)や死亡退職金などが、みなし相続財産に該当します。
(3)非課税財産
相続(遺贈)によって取得した財産は、原則としてすべて相続税の課税対象となりますが、社会政策的見地や国民感情などを考慮して、次のような財産は非課税とされています。
①墓地や仏壇など
②相続人が取得した生命保険金のうち、500万円×法定相続人の数(非課税限度額)
③相続人が取得した死亡退職金のうち、500万円×法定相続人の数(非課税限度額)
④国等に寄付をした相続財産等
(4)債務・葬儀費用控除
相続(遺贈)によって財産を取得した人は、継承した債務(住宅ローンなどの借入金、未払いの医療費や税金など)と負担した葬儀費用を、相続財産から控除することができます。
(5)相続開始前3年以内の贈与財産
相続開始前3年以内に、死亡した人から贈与によって財産を取得したことがある場合には、その贈与によって取得した財産の価額(贈与時の評価額)を相続税の課税価額に加えることになっています。
ただし、贈与税の配偶者控除の適用を受けた場合(Ⅳ贈与税2参照)には、その金額は算入する必要はありません。
(6)課税価格の合計額
このようにして求めた金額が相続税の課税価格の合計額となります。

3.第二段階:相続税の総額の計算
第二段階として、第一段階で計算した課税価格をベースに、遺産全体にかかる相続税の総額を計算しますが、ここでは、実際の遺産分割とは関係なく、法定相続分で分割したと仮定して、仮の相続税額を求めます。
(7)基礎控除額
課税価格の合計額から基礎控除額を控除しますが、基礎控除額については、次の算式で計算します。
  「基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数」
したがって、課税価格の合計額が基礎控除額以下(たとえば、法定相続人が配偶者と子供2人のときは、3,000万円+600万円×3人=4,800万円以下)である場合には、相続税はかからないことになります。
なお、被相続人に養子がいる場合(特別養子縁組による養子などは除きます)には、法定相続人の数としてカウントする養子の数は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までとなっています。
この養子の数に関する取り扱いは、生命保険金の非課税限度額、死亡退職金の非課税限度額、相続税の総額の計算においても適用されることになります。
(8)法定相続分に応じた(仮)税額計算
課税価格の合計額から基礎控除額を控除した金額を法定相続分どおり分割したと仮定して、それぞれの分割額に税率をかけて仮の税額を求めます。
相続税の税率は、10%から55%まで8段階の超過累進税率となっており、相続税額は通常、相続税の速算表で求めることになります。
たとえば、分割後の課税価格(法定相続分に応じた額)が8,000万円の場合には、相続税額は、8,000万円×30%-700万円=1,700万円となります。
(9)相続税の総額の計算
このようにして求めた仮の税額の合計額が相続税の総額ということになります。

4.第三段階:各人別の納付税額の計算
第三段階として、第二段階で計算した相続税の税額をベースに、各人の納付税額を計算します。配偶者には、大幅な軽減措置が定められているように、各個人の状況を考慮して、最終的な納付税額を求めることになります。
(10)あん分割合に応じた算出税額
各人が取得した財産の価格に応じたあん分割合(各人の課税価格÷課税価格の合計額)を求め、その比率を用いて、各人の算出税額(相続税の総額×あん分割合)を計算します。
(11)配偶者の税額軽減
配偶者については、課税価格が、法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額までであれば、相続税がかからないことになっています。
たとえば、配偶者と子供が法定相続人である場合には、課税価格が3億円のときは、配偶者の取得分が1億6,000万円まで、課税価格が10億円のときは、配偶者の取得分が5億円(法定相続分である課税価格の2分の1)までであれば、相続税はかかりません。
(12)贈与税額控除等
配偶者の税額軽減以外に、次の控除があります。
①贈与税額控除:相続開始前3年以内の贈与財産の加算がある人については、その贈与財産にかかった贈与税額を控除します。
ただし、相続税額よりも、控除される贈与税額控除の方が大きい場合でも、超過額の還付はありません。
②未成年者控除:法定相続人である20歳未満の人については、(20歳-相続開始時の年齢)×10万円を未成年者控除額として、控除します。
なお、控除額の計算上、1歳未満の端数は切り捨てます。
③障害者控除:法定相続人である85歳未満の障害者である人については、(85歳-相続開始時の年齢)×10万円(特別障害者の場合は20万円)を障害者控除額として、控除します。
なお、控除額の計算上、1歳未満の端数は切り捨てます。
④相次相続控除:10年以内に2回以上の相続があった場合、最初の相続で課税された相続税額のうち一定の方法で計算した額を、後の相続税額から、相次相続控除額として控除します。
⑤外国税額控除:外国にある財産を取得し、その財産に外国で相続税が課税された場合に一定の方法で計算した額を、外国税額控除額として控除します。
(13)相続税の2割加算
1親等の血族(代襲相続人を含み、孫が養子となっているような場合は、除きます)と配偶者以外の人については、相続税額の2割の額を加算します。
兄弟姉妹などが相続人である場合に、この2割加算の対象となります。
(14)税額納付
以上の方法によって計算した額が、それぞれの人の納付すべき相続税額となります。


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