自律神経の乱れによる動悸・下痢|40代女性の鍼灸施術事例

中田和宏

中田和宏

テーマ:施術例

「病院で自律神経失調症と言われて薬も飲んでいるのに、動悸や下痢がすっきり治らない」。そんなお悩みを抱えて、当院に相談にいらっしゃる方は少なくありません。

はじめに


今回は、動悸と下痢を伴う強い不安感に長く苦しみ、外出も仕事も難しくなっていた40歳代の女性が、鍼灸施術をきっかけに少しずつ変化を実感されていった事例をご紹介します。

施術にたずさわって約40年、これまで多くの方と向き合ってきましたが、自律神経の不調で悩まれる方は本当に多くいらっしゃいます。とくにこの方のように、検査では大きな異常が見つからないのに、動悸や下痢、強い不安感で日常生活が立ち行かなくなってしまうケースは少なくありません。

同じようなつらさを抱えている方に、体からのアプローチという選択肢があることを知っていただけたらと思っています。

動悸・下痢・不安感が重なり退職に至るまで


最初にお会いしたとき、この方は本当に苦しそうでした。きっかけは2022年の夜勤明けの体調不良だったそうです。そこから動悸や不安感、胃腸の症状が次々にあらわれるようになりました。

心療内科や消化器内科を受診し、検査では軽度の逆流性食道炎も指摘され、服薬で一部の症状は軽くなったものの、不安感と体調への過敏さがなかなか消えなかったといいます。過去の体調不良を思い出すことで症状が悪化しやすく、食欲も落ちて体重は最大で14kgも減ってしまいました。

不安が強くなると動悸や下痢があらわれるため、外出や仕事そのものが大きな負担になり、最終的には退職を余儀なくされたそうです。ご本人にとって、それがどれほどつらい決断だったか。お話を伺いながら、まずはそのしんどさをしっかり受け止めることから始めました。

東洋医学から見た自律神経失調と不安のつながり


当院では、こうしたお悩みの原因の一つに、自律神経、つまり交感神経と副交感神経のアンバランスがあると考えています。この方の状態を東洋医学的に診させていただくと、心脾両虚(しんぴりょうきょ)・肝鬱脾虚(かんうつひきょ)を主体とした自律神経失調の状態だと判断しました。

心脾両虚とは、心(こころ)と胃腸の働きが同時に弱り、不安や動悸、下痢などがあらわれる状態を指します。長く続いた心労や育児、夜勤による気血(きけつ)の消耗と、もともとの胃腸の弱さが背景にあり、不安・動悸・下痢という形で表に出ていたのです。

実はこうした不安や動悸、下痢といった症状は、多くの方が気持ちの問題と片づけてしまいがちなのですが、体の土台である胃腸の弱りが深く関わっています。こころと体は、切り離して考えることができません。

このように、こころと胃腸の弱りが絡み合った状態は、自律神経のバランスの乱れとしても表れます。長年の生活習慣のなかで交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなると、回復力そのものが落ちてしまいます。

古来より鍼灸は、自律神経のバランスを整え、体が本来持つ力を引き出すことを大切にしてきました。私はこの方に対して、不安そのものと真正面から戦うのではなく、まず体の状態を丁寧に整えていく方針を立てました。

計16回の施術の流れ


施術方針として、私が大切にしたのは次の4点です。

自律神経の働きを整えること、胃腸の状態に働きかけること、気血を補うこと、そして不安なときにご自身で対応できる体づくりです。

具体的には、内関(ないかん)・神門(しんもん)・足三里(あしさんり)・三陰交(さんいんこう)・中脘(ちゅうかん)・関元(かんげん)などのツボを中心に、その日の状態に応じて腹部・背部・頭への鍼を組み合わせました。

不安が特に強い時期には、貼ったままにできる円皮鍼(えんぴしん)を使い、日常のなかでも刺激が続くよう工夫しています。

施術期間は2025年6月22日から2026年1月13日まで、計16回。はじめは週1回のペースで通っていただき、状態が落ち着いてくるにつれて少しずつ間隔を延ばしていきました。

慢性のお悩みでは、目安として週1回で3か月ほどをひとつの区切りに考えています。

不安なときに使えるセルフケアという安心材料


施術と同じくらい私が力を入れたのが、ご自宅や外出先でできるセルフケアの指導です。不安時にご自身の力で対処できる引き出しを持っていただくことが、大きな支えになると考えているからです。

この方には、不安を感じたときに押していただくツボとして内関と神門をお伝えし、丹田(たんでん)呼吸などの呼吸法も一緒に練習しました。さらに、外出前や緊張する場面で見返せる「安心シート」を活用していただきました。安心シートとは、不安になったときの対処法を書きとめておき、いざというときに落ち着いて行動するための手引きのことです。

「押せるツボがある」「呼吸で落ち着ける」という実感は、それだけで心の余裕につながります。不安が強い方ほど、「また症状が出たらどうしよう」という予期不安に行動を縛られてしまいがちですが、自分で対処できる手段を持っていると、その縛りが少しずつゆるんでいきます。

施術を重ねる中でのお客様の変化


施術を重ねる中で、ご本人からは「不安感や下痢が少しずつ楽になってきた」というお話をいただくようになりました。睡眠の質や食欲についても、ご自身で変化を感じられるようになったとのことです。あれだけ負担だった外出はもちろん、遠足への付き添いまでできるようになった、とうれしいご報告をいただきました。

最終的には、気になっていたお悩みについてご本人が落ち着きを実感され、仕事の再開も考えられるようになったとのことで、施術をいったん区切ることになりました。ご報告をいただいたときの、この方の晴れやかな表情は今も印象に残っています。私自身も本当にうれしい瞬間でした。

トキの森鍼灸院が鍼灸をとおして目指しているのは、症状への働きかけだけでなく、その先にある生活の質の向上です。この方が退職という形で一度手放しかけた日常を、少しずつ取り戻していかれたことは、まさにその目標に近づいたケースだと感じています。

まとめ


動悸や不安、下痢といった自律神経の乱れは、体の状態を丁寧に整えていくことで、前へ進むきっかけになり得ると私は思っています。おひとりで抱え込まず、まずは体からアプローチする選択肢があることを知っていただきたいです。

・病院で治療を受けても、動悸や不安がすっきりしない
・家事や仕事のストレスで気が重く、体調に波がある
・薬に頼りきる前に、体から整える方法を試したい

このような不調でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

石川県金沢市のトキの森鍼灸院では、自律神経失調症をはじめとする心身の不調のご相談をお受けしています。ご予約・詳細は当院公式サイト(https://harynakada.com/)をご覧ください。

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中田和宏
専門家

中田和宏(鍼灸師)

トキの森鍼灸院

初診時のカウンセリングでどんな状態か明確にし、できることを説明します。施術計画を立てて最適な施術を提供します鍼灸治療にたずさわって約40年のベテラン鍼灸師が優しく対応しますお困りならまずご相談を!

中田和宏プロは北陸放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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