「その丸い顔、“太っただけ”じゃないかもしれません」鍼灸師が気づいた危険な病気

中田和宏

中田和宏

テーマ:健康とはり



「満月様顔貌(ムーンフェイス)」から重大な病気を見つける

鍼灸院には肩こりや腰痛、不眠、自律神経症状など、さまざまな悩みを抱えた患者さんが来院されます。
その中には「ただの疲れ」「年齢のせい」と思われていた症状の背景に、重大な病気が隠れていることがあります。
今回は、体表所見(見た目から分かる身体のサイン)のひとつである「満月様顔貌」について解説します。
東洋医学では古くから「望診(ぼうしん)」と呼ばれる視診を重視してきました。
顔色、むくみ、姿勢、皮膚、体型などを観察することで、身体の異常を推測します。
満月様顔貌は、鍼灸師が早期に気づくことで命に関わる病気の発見につながることがある重要な身体所見です。

満月様顔貌とは?

満月様顔貌とは、顔が丸く膨らみ、まるで満月のように見える状態を指します。英語では「Moon Face(ムーンフェイス)」とも呼ばれます。
特徴としては、

  • 頬が不自然に丸く張る
  • 顔全体が赤みを帯びる
  • フェイスラインがぼやける
  • 首や顎周囲に脂肪がつく
  • 以前の顔写真と比べると明らかに顔つきが変化している

などがあります。
単なる「太った顔」と異なり、顔面に脂肪や水分が異常に蓄積して起こることが特徴です。

どんな病気で起こるのか?

満月様顔貌で最も有名なのは「クッシング症候群」です。

クッシング症候群とは

副腎という臓器から分泌される「コルチゾール」というホルモンが過剰になる病気です。
コルチゾールは本来、
ストレスへの対応

  • 血糖維持
  • 炎症抑制
  • 免疫調整

などに重要な役割を持っています。
しかし過剰になると、脂肪分布異常や筋力低下、糖尿病、高血圧などを引き起こします。

クッシング症候群の主な原因

① 副腎腫瘍

副腎に腫瘍ができ、コルチゾールを過剰分泌するタイプです。

② 下垂体腫瘍(クッシング病)

脳下垂体からACTHというホルモンが過剰分泌され、副腎が刺激されます。

③ ステロイド薬の長期使用

もっとも日常診療で多い原因です。
喘息、膠原病、リウマチ、皮膚疾患などでステロイド薬を長期間使用すると、薬剤性クッシング症候群を起こすことがあります。

満月様顔貌の患者さんは他にどんな症状を訴えるのか

鍼灸院で遭遇しやすい愁訴としては、

  • 肩こり
  • 慢性腰痛
  • 疲労感
  • 筋肉が弱くなった感じ
  • 階段がつらい
  • 不眠
  • イライラ
  • むくみ
  • 頭痛
  • 息切れ
  • 体重増加
  • 高血圧
  • 血糖値上昇
  • 生理不順

などがあります。特に特徴的なのは「筋力低下」です。
患者さんは、
「しゃがむと立ちにくい」
「階段で脚が上がらない」
「ペットボトルが重い」
などを訴えることがあります。
また、腹部には赤紫色の線(皮膚線条)が出現することがあります。これは急激な皮膚伸展によるものです。
さらに、

  • 皮膚が薄い
  • あざができやすい
  • 感染しやすい

なども重要な特徴です。

肥満やボトックス後の腫れとの違い

単純肥満との違い

肥満では全身に均等に脂肪がつきますが、クッシング症候群では特徴的な脂肪分布がみられます。

  • 顔が丸い
  • 首の後ろに脂肪(バッファローハンプ)
  • 体幹肥満
  • 四肢は細い

というアンバランスな体型になります。つまり「お腹は出ているのに手足は細い」という状態です。

ボトックスや美容施術との違い

最近はやり?のしわ伸ばしボトックス注射。美容医療後の腫れは局所的で、一時的です。
しかし満月様顔貌では、

  • 顔全体が丸くなる
  • 徐々に進行する
  • 全身症状を伴う

という違いがあります。
また美容施術後には通常、筋力低下や高血圧、糖尿病などは起こりません。

どのように診断されるのか

病院では、

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 唾液中コルチゾール測定
  • CTやMRI

などを行います。
治療は原因によって異なります。
副腎腫瘍や下垂体腫瘍→ 手術治療
薬剤性→ ステロイド薬の調整
必要に応じて、糖尿病治療、高血圧治療、骨粗しょう症治療なども行われます。



鍼灸院で実際にあった症例

50代、女性、会社員
主訴は「慢性的な肩こり」と「疲れやすさ」でした。
デスクワーク中心で、肩こりは10年以上続いていました。
整形外科やマッサージにも通っていたそうです。
初診時、私は顔貌の変化が気になりました。
頬が不自然に丸く赤みを帯び、首周囲にも脂肪沈着がみられました。
さらに、

  • 最近急激に太った
  • 血圧が高くなった
  • 階段がつらい
  • 脚に力が入りにくい

という訴えがありました。
診察を進めると、腹部には赤紫色の皮膚線条も確認できました。
「おかしいなぁ?」単なる肩こりではなく、内分泌疾患の可能性を疑い、内科受診を勧めました。
結果として、病院でクッシング症候群が判明。
下垂体腫瘍によるホルモン異常が原因でした。
患者さんからは、
「肩こりばかり気にしていた」
「まさか病気が隠れているとは思わなかった」
と言われました。
鍼灸院では腰痛や肩こりなどの筋骨格系症状を扱うことが多いですが、その背景に重大疾患が潜んでいることがあります。
だからこそ、身体全体を観察することが非常に重要なのです。

鍼灸師に求められる「異常に気づく力」

鍼灸師は医師ではありません。しかし、患者さんと長時間向き合い、全身を観察する職業です。
だからこそ、
「いつもと違う」
「何かおかしい」
という変化に気づけることがあります。
満月様顔貌は単なる見た目の変化ではありません。
そこには、

  • ホルモン異常
  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 免疫低下

など、全身性疾患が隠れている場合があります。
肩こりや腰痛だけをみるのではなく、「なぜその症状が起きているのか」を考えることが大切です。
体表所見は、身体からの重要なメッセージです。
鍼灸臨床においても、望診の重要性を改めて感じる症例でした。

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中田和宏
専門家

中田和宏(鍼灸師)

トキの森鍼灸院

初診時のカウンセリングでどんな状態か明確にし、できることを説明します。施術計画を立てて最適な施術を提供します鍼灸治療にたずさわって約40年のベテラン鍼灸師が優しく対応しますお困りならまずご相談を!

中田和宏プロは北陸放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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