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眉毛がぬけてる!外側の脱毛に要注意
肩こりや疲労感、不眠などを訴えて来院される患者さんの中には、単なる筋肉疲労だけではなく、内科的疾患が隠れていることがあります。
鍼灸臨床では「どこに鍼をするか」だけでなく、「何が背景にあるのか」を見極める視点が極めて重要です。
その際に大きなヒントとなるのが、顔色、皮膚、姿勢、歩行、爪、髪、眉毛などの“体表所見”です。
今回は、その中でも比較的知られていないものの、重要な身体サインである「ヘルトゲ徴候(Hertoghe sign)」について解説します。
ヘルトゲ徴候(Hertoghe sign)とは?
ヘルトゲ徴候(Hertoghe sign)とは、眉毛の外側1/3が薄くなる、あるいは脱毛する身体所見のことを指します。「クイーン・アン徴候(Queen Anne's sign)」とも呼ばれます。
この徴候は古くから内科診察で知られており、とくに甲状腺機能低下症との関連が有名です。
ただし、加齢や過度の抜毛、アトピー性皮膚炎などでも見られるため、単独で診断できるものではありません。
しかし、患者さんの訴えや全身症状と組み合わせることで、重大な疾患発見の手がかりになることがあります。
ヘルトゲ徴候なぜおこる?
ヘルトゲ徴候は一般人口で頻繁に見られる所見ではありませんが、特定疾患では比較的高頻度に出現します。
特に関連が深いのは、甲状腺機能低下症です。
甲状腺機能低下症は中年女性に多く、日本では潜在性を含めると成人女性の数%に存在するといわれています。
甲状腺ホルモンは代謝、皮膚、毛髪、体温調節、精神活動などに深く関与しているため、不足すると以下のような症状が出現します。
- 疲労感
- 冷え
- むくみ
- 体重増加
- 便秘
- 抑うつ傾向
- 脱毛
- 皮膚乾燥
- 徐脈
- 月経異常
そして毛髪異常の一つとして、眉毛外側の脱毛が起こることがあります。
実際には「なんとなく不調」「更年期かと思っていた」という形で見逃されているケースも少なくありません。
ヘルトゲ徴候で疑われる病気
1.甲状腺機能低下症
最も代表的な原因です。
とくに橋本病(慢性甲状腺炎)が背景にあることが多く、中年女性に多く見られます。
主な症状
- 強い倦怠感
- 寒がり
- 肩こり
- 筋肉痛
- むくみ
- 体重増加
- 眠気
- 集中力低下
- 抑うつ
医学的治療
血液検査でTSH、FT3、FT4などを確認し、必要に応じて甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシン)が処方されます。
適切な治療によって、倦怠感や冷え、むくみなどが改善することが多く、早期発見が重要です。
2.アトピー性皮膚炎
慢性的な掻痒や摩擦によって、眉毛外側が薄くなることがあります。
特に目の周囲を頻繁にこする患者さんでは出現しやすく、皮膚炎の存在確認が重要です。
3.栄養障害・鉄欠乏
過度なダイエット、偏食、貧血などでも毛髪異常が生じます。
鍼灸院では「慢性疲労」「めまい」「立ちくらみ」「冷え」を主訴に来院されることが多いため、注意が必要です。
4.梅毒・ハンセン病など慢性感染症
現在では頻度は高くありませんが、古典的にはヘルトゲ徴候を生じる疾患として知られています。
鍼灸臨床で体表所見が重要な理由
鍼灸師は長時間、患者さんの全身を観察します。
- 顔色
- 表情
- 皮膚の乾燥
- 姿勢
- 動作
- 呼吸
- 声の張り
- 浮腫
- 毛髪
- 爪
これらは単なる「見た目」ではなく、身体内部の状態を反映していることがあります。
特に慢性症状では、患者さん自身が不調に慣れてしまい、「年齢のせい」「疲れのせい」と考えていることも少なくありません。
だからこそ、鍼灸師が小さな異変に気づく意義があります。
鍼灸院は医療機関への入り口になることもあります。
異常を見逃さず、必要時には病院受診を勧めることは、非常に重要な役割です。
症例報告
肩こりで来院した40代女性にヘルトゲ徴候を認め、医療機関へ紹介した一例
患者:40代女性、事務職
主訴:慢性的な肩こり、首こり、疲労感
現病歴:数年前から肩こりが続いており、マッサージでは改善しないため来院。最近は朝起きても疲れが取れず、仕事中の集中力低下も感じていた。
「年齢のせいだと思う」と話していたが、
- 強い冷え
- むくみ
- 体重増加
- 眠気
- 便秘
なども認めた。
所見:診察時、顔色はやや蒼白。皮膚乾燥傾向があり、眉毛外側1/3の脱毛を認めた。いわゆるヘルトゲ徴候(Hertoghe sign)が疑われた。
また、
- 脈が遅い
- 声に張りが少ない
- 動作が緩慢
なども認めたため、甲状腺機能低下症の可能性を考え、内科受診を提案した。
医療機関受診後、血液検査にてTSH高値、FT4低下を認め、橋本病による甲状腺機能低下症と診断された。
甲状腺ホルモン補充療法が開始され、数か月後には、
- 疲労感軽減
- 肩こり改善
- 冷え改善
- 日中の眠気軽減
- がみられた。
考察
肩こりは筋骨格系の問題だけでなく、内分泌疾患によっても生じます。もし肩こりだけを局所治療していた場合、背景疾患の発見が遅れていた可能性があります。鍼灸師が体表所見に注意を払い、適切なタイミングで医療機関へ紹介したことで、早期診断につながった症例と考えられました。
まとめ
ヘルトゲ徴候(Hertoghe sign)は、眉毛外側の脱毛という小さな身体サインですが、甲状腺疾患など重要な病気の手がかりになることがあります。
鍼灸臨床では、痛みだけを見るのではなく、「全身を診る」視点が欠かせません。
患者さんの何気ない変化に気づき、必要に応じて医療機関へつなぐことも、鍼灸師の大切な役割の一つです。
肩こりや疲労感の背景に、思わぬ病気が隠れていることがあります。
気になる症状が続く場合は、早めに専門医へ相談することが大切です。
追記:40年前、勤務していた病院の同僚男性のまゆ毛外側の毛がないことを院長に相談したところ、ヘルトゲ徴候疑いで甲状腺ホルモンの検査をされていたのを思い出してコラムを書きました。結果異常はなく、事なきを得ました。疑いを放っておくより明白にした方が安心できます。取り越し苦労という言葉は病気発見にはありません。
最近の女性は眉毛を描いてたり入れ墨してたりで徴候がわかりにくいです。



