<歯科医が解説>新常識?!食後すぐに歯を磨くのはダメなのか?(むし歯予防・歯科)
某有名モデルやハリウッドスターも実践?!今、メディアで連日のように話題になっている「オイルプリング」って皆さんご存知ですか?
元はインドの自然療法である「アーユルベーダ」の健康法のひとつだとか…その辺は全く詳しくないので、よくは存じませんが、なんでも「口の中でココナッツオイルやごま油でクチュクチュうがいする」だけで、
①口の中へ体内の毒素を排出するデトックス効果、
②口内の病気(歯周病のことでしょうか?)やむし歯、口臭の改善と予防、
③歯のホワイトニング効果、
④頬の筋肉を使うのでほうれい線が消えるなどのアンチエイジング、
などなど嬉しい効果があるとか・・・?
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今朝、出勤前にテレビを見ていたら、朝からハイテンションなMCが「オイルプりングは世界中のセレブの常識になりつつあります!」などとまくしたて、クリニックに向かう車の中でJWAVE「I am」を聞いていると、「健康志向の人たちの間で広まりつつある習慣」、「ココナッツオイルが品薄」とこれ以上ないもち上げっぷり…Jwaveの良心を私は信じていたのに、こんなの取り上げるなんてちょっとショック。
藤原さんの目を覚ますため(笑)、皆さんがトンデモ科学もどきの健康法に騙されないように慌ててコラムを書くことにした次第です。
1.今さらですが・・・「デトックス」なんてウソですから!
オイルプリングに限った話ではありませんが、最近、美容や健康の話題になると、よく”デトックス”って言葉を耳にしますよね?
そもそも「デトックス」ってなんなのでしょう?ウィキペディアには「デトックス (detox) とは、体内に溜まった毒物を排出させることである。」、「この呼び名は "detoxification"、解毒の短縮形である。」と記載されています。 「デトックス」は元々、アルコールや薬物の依存症に対して行われる解毒治療=医療行為を指す言葉のようです。
人の身体には、体外から入ってきた有毒物を解毒し、排出する機構として、肝臓や腎臓といった臓器があり、免疫機能がこれを行いますが、体内に排出しきれない重金属や微量な化学物質があるのも事実です。
しかしながら、これらの物質が皆さんが気にされる不快症状や病気、老化などの原因かどうかは十分検証しなければならず、本当に取り除く意味があるのかさえ分からないはずです。
また、ダイエットなどと関連付けて「デトックス」がよく語られますが、短時間の施術で大量に重金属や化学物質をデトックスする方法なんてあるわけないですから、
「どのようなメカニズムで毒素が排出されるのか?」、
「毒素として何がどのくらいの量排出されるのか?」
などの疑問点を医学的に、定量的に明確に説明している、あるいは証明しているデトックス法があれば教えていただきたいです。もしくは、「ウチでやっているデトックスはインチキではない!」、「ちゃんと医学的に説明できる!」という実施機関の方からのご連絡もお待ちしています♪
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さらに追い打ちをかけるようで恐縮ですが、オイルプリングによるデトックスの場合、全身に溜まった毒素がどうやって口の中まで移動してくるのでしょうか?口の中まで来ないと油に溶けだせないですよね??
ご参考までに申し上げますと、に英国のNHS(国民保険サービス)は「ほとんどのデトックスという行為には科学的根拠がないし、そのようなサービスや製品の購入を勧めない」と断言しています。
2.オイルプリングで歯肉炎や歯周病、虫歯が治るのか?
これでホントに治るのなら私どもは失業ですね…しかし、今のところその心配はいらないようです(笑)
口臭の原因の大半は歯周病や虫歯によるものですから、歯周病と虫歯が治るなら、必然的に大半の方の口臭も改善することになります。
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皆さんご存知のごとく、むし歯は虫歯菌に汚染された歯質を削り取り、人工材料で修復しないと治りません。
また、クチュクチュうがいで使用するオイルに殺菌効果があるのかないのか存じませんが、虫歯菌は歯の表面にむき出しでくっついているわけではありません。
分厚く張り付いた「バイオフィルム」と呼ばれる色々な細菌同士が化学的に強固に結合した細菌膜の内側に潜んでいます。例えて言うなら、バスタブに付くザラザラ、ヌメヌメの水垢みたいなもんです、あれも一種のバイオフィルムです。お風呂用洗剤のCMみたいに「擦らずキレイ」なんてありえません。実際にはよく擦らないときれいになりませんよね?大抵の消毒薬でうがいをしても、虫歯菌は撲滅できないんです。
さらに歯周病菌は歯の根っこに沿って、歯茎の中の奥深いところ=歯周ポケットの中に住んでいますから、うがいをしても薬が届かないのです。
従ってココナッツオイルだとか、ごま油にどんなに強力な殺菌効果があったとしても、うがいだけで歯周病やむし歯が治ったり、予防になったりすることはないはずです。
またオイルプリングに使用する油はココナッツやゴマでなくても、オリーブでもひまわりでもなんでも良いとされているようですが、成分の違いを無視してどんなオイルでも同じように上記のような様々な効果が期待できる…なんてちょっとおかしいと思いませんか?怪し過ぎますよね??
3.オイルプリングの10年後を見てみたい
歯の間の汚れ=食べカスや、口の中の老廃物=口腔粘膜のアカぐらいは、たぶんクチュクチュすれば落ちるでしょうね。しかし、歯のホワイトニング(漂白)は元々の歯の質が暗い色や黄ばんでいる人の場合は、いくら擦って磨いても白くはなりませんので、漂白効果は期待できないはずです。お化粧を落とすクレンジングオイルのイメージで「汚れを落として白くなる」って話なんでしょうけど、その理屈だと皮膚の漂白にも使えることになるので、今度は美白のために顔にも塗るんでしょうか(笑)
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結論としては、お口を漱ぐならモンダミンとか市販のうがい薬の方がよく効くはずです。「オイルプリング」は現時点で医学的根拠に乏しく、普通のうがい以上の効能・効果は期待できないと思われます。
10年後もココナッツオイルが大人気なのか私には分かりませんけど、やれ「アンチエイジング」などと勧めている芸能人の方、「セレブの常識」などと取り上げたメディアの方は、結構赤っ恥だと思いますが皆さんどう思われますか?
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