列車にお辞儀する日本人~神戸ビジネススクールの人気コラムシリーズ
前回のコラムで、今話題の「日本人のちょっとヘンな英語」(デイビッド・セイン著)を疑問視する声があることをお伝えしました。http://mbp-japan.com/hyogo/kobebs/column/46525/
その中でも触れましたが、セイン氏が取り上げた日本人の英語表現について、詳細に検証したのがこのブログです。
「日本人の英語はおかしい」と主張する本の英語がおかしい件について (サザエもんさんのブログより)
http://getnews.jp/archives/446141
この方は英検1級をお持ちで英語も堪能なようです。「日本人の英語コンプレックスを刺激して売り上げを上げようとする」本がたくさん出版されていることを憂いておられます。
実は私も読み進めるうちに、かなりの違和感を感じた部分がありました。日本人が何気なく使っている英語表現が、実はとんでもない意味のスラングであったり、全く別の意味を表すものだったりすることは、確かにあるでしょう。しかし、それを英語教師が取り上げて、涙が出るほど大笑いしたり、皮肉ったりするでしょうか。
誰かがネット上で指摘していましたが、この漫画家の描き方にも問題があります。生徒である日本人の「おかしな英語」に対するセイン先生の反応がいただけません。冷や汗を流し、眉をひそめ、外国人がよくやるお手上げのポーズで、Unbelievable!という顔をするのです。あるいは、「それは面白い!」と噴出し、「くっくっく・・・面白すぎです・・・」といつまでも笑いが止まらない様子。はたまた、飲んでいたお茶を驚きのあまり「ぶっ!」と噴出し、ゴホゴホと咳き込みながら、ハンカチを口に当てる、など。
これでは、「日本人をバカにしている」「教師がこんな上から目線でいいのか」と批判されても仕方がありませんね。漫画家が勝手に描いたのだ、とか、アシスタントの若い外国人教師に任せたからこうなったのだ、とか憶測も飛び交っていますが、著者として名前を出し、出版した本である以上、セイン氏が内容をチェックしていないことは考えられません。
グレン社長と私がいつも話すことなのですが、英語能力(この場合は英会話能力)が、人間の価値を決定するわけでは決してありません。何ヶ国語も操る人は確かに頭脳が優秀なのかも知れません。しかし、ヨーロッパのように様々な言語がすぐ隣の土地で飛び交っているような場所では、天才でなくてもマルチリンガルになる可能性は高いのです。それに比べてアジアの島国で、単一民族・単一言語で何千年も生活してきた日本人にとって、外国語の習得は困難を極めます。
セイン氏は巻末で、「この本では日本人の間違った英語をおもしろおかしく取り上げているのですが、それは『だから話すのを辞めなさい』ということではありません。(中略)非ネイティブの間違った英語をねちねちと根に持つ人はいません」と書いています。さらに「この漫画を見ることで、肩の力を抜いてほしいのです。」とありますが、そのメッセージは伝わるでしょうか。セイン先生にみんなの前で笑われて真っ赤になるおじいさん、大笑いされた挙句に「ケイトさんと英語で話すのはあきらめて日本語で会話したらいいです」と言われる女子高生、「あなたはタクシーなんですか~?」と高笑いされて、唇をかみしめるサラリーマン。
「どんどん間違えながら、正しい英語を身につけていきましょう。」「そして自信を持って、たくさん発言してください」というメッセージをこの本にこめたかったのであれば、漫画というインパクトの強い手段での表現にも、そうした愛情を注いで欲しかったと私は思います。表紙にある登場人物のあだ名?からして、「ガリ勉英語リーマン」「教科書英語ちゃん」「サムライ英語じいさん」「和製英語オバちゃん」など、あまり愛情があるネーミングとは思えないのですが・・・
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