デイビッド・セイン著「日本人のちょっとヘンな英語」について考える~その2
ディズニー映画の「アナと雪の女王」が主題歌とともに大ヒット中ですね。グレン社長も私も映画好きなので、映画の話をよくします。先日私は「ウォルト・ディズニーの約束」というメアリ・ポピンズを題材にした映画を観ました。観る前に、彼に「あの映画、観た?」と聞こうとしたのですが、英語の原題がわからず、なかなか通じませんでした。実際に観に行くと"Saving Mr. Banks"というまるきり違うタイトルでした。
昔からよく言われることですが、邦題のつけ方って本当に難しいですよね。配給会社の意向などいろいろと制約があるのでしょうが、傑作と思うものが昔に比べて減っている気がします。そこで、往年の名作から最新作まで、英語の原題とかけ離れている邦題をいくつか拾ってみました。
冒頭に出した「アナと雪の女王」は Frozen です。短い英語で端的にある程度の内容は表していますが、子ども向けでもあることを考えると、邦題の勝ちではないでしょうか。他に、邦題のほうが優れていると思うものを独断と偏見でいくつか挙げます。
1 「明日に向かって撃て」 Butch Cassidy and the Sundance Kid
下の「俺達に明日はない」と同じパターン。原題は主人公の名前を並べただけですが、日本ではそれだけでは無理だったでしょう。最終シーンとあいまって、邦題がなんともカッコいいですね。
2 「俺達に明日はない」 Bonny and Clyde
銀行強盗を繰り返すボニーとクライドのカップルの破滅的な生き方をよく表していて、これもカッコいい邦題に仕上がっています。
3 「ショーシャンクの空に」 The Shawshunk Redemption
Redemptionとは「弁償、償い」の意ですが「ショーシャンクの償い」では意味がわかりません。空に向かって両手を広げるあの有名なシーンからの連想でしょうか。傑作だと思います。
4 「プラダを着た悪魔」 The Devil Wears Prada
そのままだけど、訳し方が上手い例です。「悪魔はプラダを着る」という直訳では、このイメージは出ませんね。
5 「きみに読む物語」 The Notebook
確かに1冊のノートがストーリーの鍵ではあるのですが、そのままでは漠然としすぎています。邦題では映画の切ない情景が想像でき、よくできていると思います。「君」ではなくあえて「きみ」と平仮名にしたのも訳者のこだわりが見えます。
逆に、大失敗な邦題も多多あります。
1 「リーサル・ウェポン」 Lethal Weapon
これは、英語をそのままカタカナ表記にしたのですが、「リーサル」が破壊を意味する"lethal"と思う人はごく少ないでしょう。「破壊兵器」という意味の原題は含みが多くて良いのに、残念。
2 「恋するベーカリー」 It's Complicated
メリル・ストリープのいい映画なのに、タイトルはチープな感じに仕上がっています。大体「恋する〇〇」とか「恋の〇〇」とつけると陳腐になってしまいます。原題もいいとは思いませんけどね。
3 「プライベート・ライアン」 Saving Private Ryan
第二次世界大戦が題材の、よくできた映画です。しかし、カタカナにしてしまったことで、まるでライアンのプライベートタイムのようなイメージです。Privateには「私的な」の他に軍隊の序列で「上等兵」という意味がありますが、知っている人は少ないでしょう。「ライアン上等兵を救え」という原題の意味を伝えてほしかった。
4 「私がクマにキレた理由」 The Nanny Diaries
確かにヒロインを演じるスカーレット・ヨハンセンはクマにキレるのですが(ネタばれ)、しかしこれでは何の映画だか全然わかりません。どこからこの日本語を引っ張ってきたのか謎です。これも邦題がチープな印象を与えている残念な例だと思います。
5 「愛と青春の旅立ち」 An Officer and a Gentleman
流行りましたよね、この映画。「恋の」と同様「愛の〇〇」もダサいですが、それに青春をくっつけたために、尚更ひどい感じに仕上がっています。ハイスクールものみたいな印象です。
ちなみに、昔の洋画には素敵な日本語のタイトルが多いことはよく巷でも話題に上ります。特に、漢字二文字だけで内容を言い表したものがどれも秀逸です。
「アパートの鍵貸します」The Apartment 1960年 ジャック・レモンとシャーリー・マクレーン
「旅情」Summertime キャサリン・ヘプバーン 1955年
「喝采」The Country Girl 1954年 グレース・ケリー
「裏窓」Rear Window ヒチコック監督 グレース・ケリー 1954年
「慕情」Love is a Many Splendored Thing ジェニファー・ジョーンズ 1955年
「パリの恋人」Funny Face オードリー・ヘプバーン 1957年
英語がきれいなので、昔の映画は勉強にもなります。書いているうちに、またこういう映画を観たくなってきました。
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