「うわ~、懐かしい!」~英語に訳せないことば
5年ほど前から、私は趣味で裏千家茶道を習っています。茶道の作法として、自分がいただく前には必ず、右の人に「お相伴いたします」左の人に「お先にいただきます」と挨拶することになっています。茶碗や茶杓といった道具が回ってきて拝見する際にも、やはり同じです。あまり丁寧にすると時間がかかるので、「お先に」と会釈で済ませることもあります。先日そこで、教室の生徒さん方と「お先に」って英語あるかしら?という話になりました。
「お先にどうぞ」は、"After you." "Please go ahead."が一般的です。自分が後になってもかまいません、とエレベーターやドアの所で相手に譲るときの表現です。たいてい、手で方向を示すジェスチャーとともに使います。短く"Please."だけでもかまいません。
しかし、順番が決まっていて、自分が先になる時に一言断りを入れる「お先に」は意味が違いますね。
ゴルフでは、自分が連続してパターを打つ時などに使います。あるいは、自分がお風呂に先に入った時、先に休憩に入った時などにも「お先でした」と声をかけると思います。ゴルフのパターなら、"Let me finish it."がいいと聞いたことがあります。その他 "I'll go first." "I'll go ahead." などが略式として、他の場合にも使えるかもしれません。
茶道裏千家の英語訳には、”Excuse me for going before you."となっています。確かに、状況を見るとこれが一番日本語の「お先に失礼します」に近い気がします。しかし、これでは茶席には少し長すぎるので "Excuse me."だけでも良いかもしれません。何を謝っているのかと思われる可能性もあるので、私ならアイコンタクトとお辞儀だけにしておきます。
NHKのテキストでは、オフィスを後にするという状況での「お先に失礼します」は、"Sorry to leave before you."という訳になっていました。無理に訳をつけるとこうなるのでしょうが、そもそも英語ではこういう表現をあまり使わないでしょう。欧米や他国では、残業している人より早く自分が退社する事に対して、罪悪感をもつことはあまりありません。自分も当然残るべきなのに、どうしても事情があって先に帰る時などは別でしょうが。
「お先に失礼します」が英語になりにくい原因の一つとして、こうした文化の違いが根本にはあります。しかし、日本語でも本来の意味は弱くなり、今は「さようなら」に代わるあいさつの一つとなっている場合がほとんどです。ですから、帰宅する際には"See you tomorrow." "I'm leaving now, bye."などの軽い感じでいいと思います。
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