列車にお辞儀する日本人~神戸ビジネススクールの人気コラムシリーズ
弊社の本「ビジネスコミュニケーションに本当に役立つ英語」はアマゾンのプリント・オンデマンドシステムにより、出版されます。昨日、もう間もなくという連絡が出版社より入りました。先般より重ねてお詫びを掲載していますが、最終原稿を入稿してから2ヶ月近く長引いている上に、出版日の遅れに対して満足のいく説明や回答がなく、私達も非常に困っているところです。お待ちいただいている皆様にはご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません。
今回は私達が利用しているアマゾンのプリント・オンデマンドという出版形態について考えてみたいと思います。そもそもプリントオンデマンドというのは、デジタル印刷機を使用して需要の都度、迅速に印刷する方法を言います。ここで言うプリント・オンデマンドとは、Amazon.co.jpが、オンデマンド印刷技術により、お客様の注文に応じて1冊からでも迅速に印刷し、出荷するサービスを指します。(詳しくはこちらをご覧下さい
「プリントオンデマンドって何?」http://mbp-japan.com/hyogo/kobebs/column/42884/
「プリントオンデマンド出版の未来」http://mbp-japan.com/hyogo/kobebs/column/42895/)
このアマゾンのサービスは、正しくは紙書籍の自己出版(セルフ・パブリッシング)と呼ぶべきものです。自己出版とは、出版社や編集者を通さず、自分の力で出版・販売することです。原稿の電子ファイルを作成し、アマゾンやアップルを通して販売します。日本で昔からある自費出版と違うのは、電子書籍が主であるという点です。
まず、電子書籍の自己出版について考えてみましょう。以前であれば、自費出版は百万円単位の費用が掛かりました。しかし、電子書籍の登場により、出版社を通さずに自分の本を世界に公開することが可能になりました。英語で書けば、キンドルを持っている世界中の人に読んでもらえるかも知れないのです。海外ではすでに、電子書籍でベストセラー作家になった人が登場しています。
イギリスの例で言うと、電子書籍は1ダウンロード1ポンド以下と格安になっています。中でも話題になっているのが、官能小説の売り上げが、女性読者を中心に飛躍的に伸びた点です。電子書籍なら人目を気にする必要はありません。通勤途中のキャリアウーマンが電車の中ででも、キンドルを使って官能小説を読むことができるようになったのです。
今注目を集めている官能小説のベストセラー小説家、タリー・ローランド(Talli Roland)氏は、電子書籍の自己出版で成功している作家の一人です。彼女は、英国のガーディアン誌のインタビューで、自己出版について次のように話しています。
'As wonderful as self-publishing is, it does have its limits'「自己出版は素晴らしいけど、限界もある」
http://www.theguardian.com/books/2013/aug/13/talli-roland-self-publishing
彼女の話を要約します。「出版社との共同作業という形で最初の2つの小説を出しましたが、とても満足のいく結果でした。しかし、売り上げ金の分配がほとんどないという点が問題でした。そこで、編集者と装丁デザイナーに料金を支払った残りの利益を、自分で取ることができる方が理にかなっていると考えたのです。自分でやることに決めてから、3つの小説と2つの短編集を出し、英国のアマゾンで3度ベスト10入りしました。出版社を離れるということは賭けでしたが、全く後悔はしていません。
「編集者と共同作業をしていた頃は、最終決定権は彼らにありました。表紙のデザインから話の構成まで、全てを自分が決めるのは、少し怖いことでもありましたが、とても刺激になりました。本が売れなければ全責任は自分にあるので、そのプレッシャーに押しつぶされそうになることもあります。クリエイティブであると同時に、ビジネスとして成立するかも考えなくてはなりません。大変ではありますが、とても手ごたえを感じる仕事です。
「しかし、self-publishing(自己出版)というこの方法が万人向けだとは思いません。自らのボスになるということは、製作、営業、経理の全てを一人でこなすことを意味します。充分なやる気と、自分のキャリアを追及するという決意がなければ難しい仕事だと言えるでしょう。また、全工程の作業を一人でやるので、孤独感にも苛まれます。」(原文は英語)
良いことずくめのように思える自己出版ですが、ローランド氏が言うように大変な作業になります。また、誰でも出版できるようになったということは、天文学的な数字の電子書籍が毎日世に出ている事を意味します。彼女のように既に通常の本でベストセラー作家になってから自己出版をするならともかく、全く無名の人間の本が世界市場でベストセラー入りすることは、宝くじに当たるようなものです。
次回は、アマゾンのPODサービスについての実体験を交えてお伝えしたいと思います。
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