プリントオンデマンド出版の未来

グレン・ブラウン

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テーマ:副校長の部屋

先日、プリントオンデマンド出版について詳しくお伝えしました。実は、私自身、「コラムを本にしませんか?」と出版の話をいただくまで、恥ずかしながらプリントオンデマンドのことは知らなかったのです。本の原稿を進めていくにつれ、プリントオンデマンドの未来について気になってきたので、インターネットで調べてみました。

「電子書籍の未来は? OnDeck編集長 井芹 昌信氏に聞く」というネット対談から抜粋します。 井芹昌信氏は、長年出版や電子書籍事業に携わっている株式会社インプレスの代表です。http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/ebook2013/20130702_605822.html

井芹氏:
「プリントオンデマンドは、みんなが使いやすいイノベーションだと考えています。ただし、これを“少部数印刷機”と思ってはいけません。注文したその時、その場で、紙の本になる、というところがポイントなんです。

ユーザーがカタログを見て、ほしい本を見つけて注文した瞬間に、ストアの中でデジタルデータの“版”から印刷され、そのまま倉庫経由で直送されます。ここで重要なのは、出版社からストアまでは電子出版であって、ストアからお客様の間は物流になっていること。つまり、ストアが電子データをリアルの本に変えている。ここが非常に大きなイノベーションで、印刷という行為の主体が今まで出版社だったものが、ユーザーに変わっているんです。そういう意味で“革命”なんです。」

それでは、出版社側にとってPODプログラムに参加するメリットは何でしょうか?デザインエッグ株式会社佐田幸宏氏は次のように話します。

「PODに適しているのは、ITや法律など、常に情報が新しくなり、数ヵ月単位で細かく変更を行う必要がある書籍や、数千部から数万部の販売見込みがたたない書籍です。PODを使えば、電子書籍と同じ速度で紙の書籍も更新し続けることができるため、常に最新情報を読者に届けることができるようになります。

(中略)PODになると在庫本を倉庫に保管するコストの問題や,増刷の必要性もなくなり,出版社は大量の部数を印刷するリスクや,在庫を保管する費用が不要になります。また絶版本や希少本,特注本,外国語版や大活字版など,従来は比較的コストがかかり割高であった書籍も,比較的低コストで長期間にわたって提供できるようになるので,これまで出版することが躊躇されていた本も作られ易くなるはずです。
これまで,一部の大学図書館にしかなかったような専門書であっても,PODを使うことで誰でも手軽に入手できるというのは画期的なことですし,そのような書籍を必要とする日本の研究者や専門家などにも歓迎されることでしょう。」
2011年5月 竹橋コミュニティスクエアhttp://www.tpc-cs.com/news/no2590.html

つまり、PODは出版というビジネスでの、出版社の従来の役割を根底から覆しかねないようなものなのです。出版社は、在庫管理・価格設定・印刷部数・増刷など、様々な難しい判断をしながら、本を出版しています。ところが、PODの場合、注文に応じて印刷するので、必要なものはデータ管理のみで、在庫を抱える必要がなく、また保管場所も不要です。この意味において、PODは「本屋に本を並べて売る」という常識を破るものと言えます。

それを言うなら、電子書籍でいいではないか、という声が当然上がってくるでしょう。PODもやはり紙に印刷した本ですから、ユーザーの側から言うと、価格・持ち運び・保管などの面で、電子書籍に比べると不利になる面もあります。ところが、日本では当初の予想ほど電子書籍の普及が進んでいません。これは、縦書きであるという日本語の特性と無関係ではないと私は思っています。紙に印刷されたものを読むという行為が、日本語で文章を読むことが好きな人にとっては、特に重要なのではないでしょうか。

私だけかも知れませんが、電子機器の端末で縦書きを読むとき、横にスクロールしていくことに対して違和感がぬぐえません。また、電子書籍は確かに複数の資料の持ち運びには便利ですが、紙の頁を繰る楽しみがありません。仕事に使うための資料に目を通すことは読書とは言いません。純粋な楽しみとしての読書を考える時、自分の本棚に並べてある本を読み返す、電車や旅先で、カバンの中に単行本を一冊入れておく、そういったアナログな楽しみを読書家は捨てられないのではないかと思います。

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