「アジアの超優秀企業トップ50」続編

グレン・ブラウン

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9月に「アジアの超優秀企業トップ50」というコラムを掲載しました。http://mbpkobe.com/kobebs/column/39280/
この中で、フォーブス誌が毎年発表するこのランキングに日本企業は2011年以来ただの一社もこのリストにランクインしたことがない、というショッキングな事実をご紹介しました。そのせいかこのコラムは人気になっているようですが、「その理由についての私の分析をまたご紹介します」と書いてそのままになっていました。今日はその分析を遅ればせながらお届けします。

その答えは、フォーブスが優秀企業50社を選ぶ基準にあるのかもしれません。原文に載っているものを要約すると次のようになります。

「収益と資本還元率・株価の動きの記録をたどり、将来の展望も評価に入れ、借入金のうち政府からのものが50%を超える場合は除外する。」

では日本を代表する企業の一つであるトヨタを例にとって、なぜトップ50入りしていないのかを考えてみましょう。ここで問題になるのは、上記の基準の冒頭の部分です。トヨタは円高の影響もあり、過去5年間の実績はかなり不安定なものでした。2009年には記録的赤字を出し、2011年から2012年には収益が一時的に減りました。ここだけを見ると、安定して収益を伸ばし続ける企業であるとは言い難いことになります。この不安定な動きは投資家や株主への配当にも影響し、株価は2011年以来上昇を続けているものの、配当金はあまり増えていません。したがってトヨタはリストから除外されることになるのでしょう。

次に、楽天やソフトバンクと言ったIT系企業を見てみましょう。彼らがリスト入りしていないことは非常に不思議に思えますが、これは基準の中の「将来の展望」という点のためと思われます。ここで判断されるのはその会社が発展していく可能性です。日本国内の市場が成熟している今、少子化の影響もあって国内ではその可能性はおおむね低いと言わざるを得ません。国際市場ではもっと可能性があるように見えますが、楽天やソフトバンクに代表される新興企業にしても、アジア市場での影響力は未知数です。IT企業はそれぞれ自国内で既に強力な基盤を築き上げています。シンガポールや香港、中国のように人口の増加とともに市場も成長し続ける東南アジアの国々で、日本企業が競争に打ち勝つことは非常に困難でしょう。

最後に「政府からの借入金」の部分を考えてみます。日本の大企業の大多数は政府機関から多額の融資を受けています。長年にわたる日本経済の停滞と円高の影響により経営が困難に陥っていたパナソニック・シャープ・ソニーといった大企業も例外ではありません。トヨタの例では、2009年に42億USドルの損失を出した結果、金融子会社が国際協力銀行に30億ドルの緊急外貨貸付を要請しました。この株式会社国際協力銀行は、日本政府100%出資の特殊銀行ですから「政府からの借り入れ」と見なされます。ソニー・東芝も同行から多額の融資を受けています。従って、これらの会社もリスト入りできなくなるのです。

要約すると、財政が不安定、将来の展望が見えない、多額の債務、この三点の理由により日本企業はフォーブスの"Asia's Fabulous 50"に選ばれなかったようです。たかが雑誌の勝手なランキングだから気にする事はないとお考えですか?近年、アジア圏においてビジネスの相手を探している企業は増えつつあります。こういったランキングに名前を連ねる会社が、世界中の投資家に注目されることを考えると、そう楽観視はできないかもしれません。


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