列車にお辞儀する日本人~神戸ビジネススクールの人気コラムシリーズ
前回に続き、ハーバード・ビジネス・スクール のクレイトン・クリステンセン教授の”The wrong type of innovation”「間違った種類のイノベーション」からお届けします。原文はこちら(http://www.inc.com/christine-lagorio/clayton-christensen-capitalist-dilemma.html)
前回では、クリステンセン氏によるイノベーションの3種類の分類を見ました。
1.Empowering innovation 経済を活性化するイノベーション
2.Sustaining innovation 存続するためのイノベーション
3.Efficiency innovation 効率を上げるイノベーション
アメリカ経済におけるこうしたイノベーションの役割を見るとき、3番目の効率重視のイノベーションは、1番目の市場を活性化するイノベーションよりもはるかに人気があります。手っ取り早く利益を上げ、株主を満足させなくてはならない時、結果がでるのに5年以上かかるイノベーションに投資していたのでは間に合わないのです。その結果、効率重視のイノベーションにほとんどの資金が流れて行きます。
そこで得た利益は、再び効率を上げるために使われるというサイクルが生じます。しかしこの流れでは、研究開発といった種類への長期的な投資は大幅に減らされてしまいます。その結果、全体としての経済の流れを鈍くし、新たな雇用を減らすことになります。アメリカが直面するジレンマがそれです。目先の利益を追うばかりで、本当に意味のあることをしなくなっているのです。この20年間を振り返るとき、世界中のempowering innovationのうち、3分の1はアメリカが行ってきました。経済を活気づけるこのイノベーションをしなくなったことの、未来への代償はどんなものでしょうか。
彼の最後の一言は、日本人にとってショックです。
"If you want to know what the future of America looks like, just look at Japan. You can feel the same thing happen in the United States, and I worry a lot about that."
アメリカの未来が知りたければ、日本を見てください。アメリカにも同じことが起きると感じるでしょう、私はそれを非常に危惧しているのです。
ここでクリステンセン氏が指すのは、日本経済の停滞に他なりません。80年代まで家電製品や自動車といった分野で、他国の追随を許さないほど日本はトップを走っていました。ところが、急激なグローバル化・デジタル化の変化に追いつくための破壊的イノベーションが進みませんでした。そして3番目の「効率化」を追い求めるイノベーションを推進し、コスト削減によって収益を確保しようとしたのです。
阿倍首相がすすめるアベノミクスにより、景気回復を目指す日本。第一、第二の矢を放って以来、長年にわたって暗雲がたれこめたような日本経済に光が差しつつある感があります。そして日本経済にとって最も重要とも言われる三番目の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」が6月に放たれました。これは、グローバル競争に勝ち抜ける製造業の復活を目指し、民間企業の設備投資、研究開発、事業再編を応援することにより、企業が活動しやすい環境を作ろうとするものです。
言い換えればこれは、クリステンセン氏の言う”Empowering Innovation”に他なりません。
9月末の訪米中に、”Buy my Abenomics!”と日本への投資を促し、「日本を米国のようにベンチャー精神あふれる起業大国にする」と発言した阿倍首相。果たして、正しい種類のイノベーションを進めることができるでしょうか。
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