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5月14日、シャープは現在副社長執行役員の高橋興三氏を社長に昇格する人事を発表しました。取締役でもない執行役員からの抜擢で異例の人事と言われた、現 奥田社長は在任わずか1年3カ月で退任することになります。その背景には、約3千人の人員削減という大胆なリストラの実行にもかかわらず、2年連続の巨額赤字、業績不振から抜け出せない経営責任を明確にするとともに、社内の求心力を高めようという狙いがあるようです。
構造改革を進め、経営体制を見直すために、現在12人いる取締役を大幅に減らし、相談役や特別顧問も廃止する。さらに海外経験豊富な高橋副社長を起用することで出遅れた海外事業を挽回し、経営再建に結びつける考えとみられる。(日本経済新聞)
2013年3月期連結決算で過去最悪の5453億円の最終赤字を計上した奥田社長時代の1年間は「スピード感がなく、社内外からの不満は高まる一方」(金融機関幹部)と指摘され続けた。期待した台湾・鴻海精密工業からの約669億円の出資は挫折。再建への資金源と見込んだ海外の液晶テレビ工場も売却できていない。(毎日新聞)
シャープでは、この10年あまりの間に社長が次々と交代しましたが、いずれも前任の社長もしくは会長によって抜擢、指名されています。今回退任が決まった片山幹雄会長は奥田社長の後ろ盾と言われていますが、町田勝彦相談役によって社長になっています。プリンスと呼ばれたエリート奥田社長も町田氏が指名。その絶大な力を持つ町田氏も、今回の人事で退任を発表。そこには、複数の元・現トップが経営に関与することが業績悪化の原因と考える取引銀行の意向が反映されているようです。現に、主力取引銀行の三菱UFJとみずほから役員を受け入れることも決定しています。
こういった「誰がトップなのかわからない」状態が長く続いたシャープは、ある意味で日本式経営の典型例と言えるかもしれません。重役室が複数並ぶ社内、特別顧問や相談役など多すぎる役員たち、世代交代を阻む権力抗争、といった複数のマイナスの要素は、旧態依然とした日本式経営に特有のものです。結果、会議の数が多くなり、報告書の数が増え、意思決定に時間がかかることになります。
さて、次期社長となる高橋氏は、米国の営業本部長を務め、海外事業にも精通しています。彼は、グローバルな視点を取り入れて、合理的で結果が出せる経営にシフトしていけるでしょうか。
高橋副社長は、米クアルコムや韓国サムスン電子との出資交渉でも前線に立ち、意思決定の遅さや社員の受身の姿勢など自社の欠点を感じてきたと言う。「上からの指示を待たない風土にしないとダメ」(中略)「経営判断の遅さが課題だったが、新体制では現場に権限と責任をどんどん委譲し、市場の変化に迅速に対応できるようにしたい」(産経新聞)
「すべての権限と責任が髙橋に集中することになる。私も片山も、この形を崩さないように運営していく。これによって新生シャープになれる。昔のシャープの輝きを取り戻していきたい」と話す奥田氏ですが、行く手に様々な困難が待ち受けていることは間違いありません。日本を代表する家電メーカーの一つであるシャープはよみがえることができるのでしょうか。
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