ノマドワーカーについて考える (3) 

グレン・ブラウン

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テーマ:副校長の部屋

ノマドという言葉に興味を持ったことがきっかけで、今話題の本にたどり着きました。イケダハヤト 「年収150万円で僕らは自由に生きていく」星海社新書

すでにご存知の方も多いと思いますが、一応彼の経歴をまとめておきます。イケダ氏は、86世代(ハチロク)と自らを呼んでいますが、1986年生まれ、ただ今生後2ヶ月のお子さんの育児エンジョイ中です。
プロブロガーと称されますが、職業としては、「ITジャーナリスト」と答えています。名前をカタカナにしたのは、池田隼人元首相と同姓同名のため、検索で混同されないようにするためだそうです。以下、彼のHPのプロフィールより抜粋します。

中学生で個人ニュースサイトを運営。2009年にルネサステクノロジに入社するも、入社した月に合併が決定。ブログをきっかけに知り合ったトライバルメディアハウスの代表、池田紀行さんに誘われ、2010年3月に転職。ソーシャルメディアコンサル事業を立ち上げ。

2011年4月、NPO支援、ライター活動により多くの時間を割きたくなり、フリーランスに転向。「テントセン」という名前でNPOマーケティングを支援するプロボノ集団も作っています。
(注・プロボノとは、各分野の経験者が専門知識・スキルを生かして社会貢献するボランティア活動。ラテン語のPro bono publico「公共善のために」に由来)

大学卒業後3年で会社員をやめた彼が大企業で働きたくない理由は、前述の著書「年収150万円で~」に詳しく書いてあります。が、私が言い得て妙だと思ったのが、ブログでの表現「ロシアンルーレット」です。リストラにしろ、単身赴任・海外赴任にしろ、次は誰の番かわからない。断ることもできず、クビになりたくなければ運命の流れには逆らえない。そういう状況を指すのに「ロシアンルーレット」はうまい表現だと思います。 

『自分の人生に最大限のコントロールを持ちたい「わがまま」な人間、そんな「わがままが許されやすくなっている」今の時代で本当に良かった』と言うイケダ氏。私のような昔気質人間からすると、本を読み進むうちに目から鱗がバラバラと剥がれ落ちたような気がしました。それは、一言で言うと「こういうのってありなんだ」という驚きでした。

『今後の日本社会においては、高いスキルを持っている人に関しては、「わがまま」の許容度はますます高まっていくように感じます。スキルフルな人材は、自分の好きな場所で、好きな人と、好きな時間に、好きなだけ働くことができるようになるでしょう。いわゆるハイパーノマドですね。』

本当にそんな時代が来るのでしょうか。もちろん、限られた業種においてではあります。製造業・サービス業・農林水産業などはそんな訳にはいきません。「そんな事を言っていたら、日本は滅びる!」と湯気をたてて怒るオジサマ達の顔も私の脳裏には同時に浮かびます。

「メディアがそういう人間を25歳の代表として取り上げることに多大な不快感を持つ」という反論も読みました。「『本当は会社勤めが嫌で、人間関係とか面倒くさくて、朝早く起きるのも嫌だし満員電車も嫌だ。だから仕方なくやってます、すみません…』と言うべきなのだ。」というイケダ氏への非難。

その通り、イケダ氏は自著「年収150万円で~」の中でそれを肯定し、なんら正当化はしていません。自分のような人間は会社勤めはできない、さりとて収入もなく誰かに面倒を見てもらいながら惨めな暮らしを細々と送っているのではない、150万円でも心豊かに暮らすことは可能だ、と言うのが彼の主張です。まぁ、実際には講演や執筆などにより、もっと高収入のようですが。(当たり前ですけどね)「自由を売るくらいなら貧乏であれ」「お金がないと何もできないのは逆に貧しい」「所有はダサい」「なぜ僕らは働くのか?を問い直せ」など、本の中には論議をかもしそうな見出しがずらりと並びます。

公開討論会でのイケダ氏の発言に対し、「高校生が放課後のミスタードーナツで薄いアメリカンコーヒーを何度もお代わりして話す、世間話というか妄想トークの域を出ていなかった。・・・言う内容も実にチャイルディッシュなユートピア論に過ぎず、要するにネットで人は幸せにできるという話だった。」という批判もあります。ミスドで放課後の高校生!(笑)うまいこと言いますね。

もちろん、こういう批判はもっともです。常識的に言えば「まだ青いよね」という事になるでしょう。ですが、興味深く本を読み終えた私は「こういう若者が日本に出てきて、これだけ共感を得ているのだ」と感慨を持ちました。「人と違うこういう生き方をしているボク」っていうのを、批判は承知の上であるにせよ、世の中に発信できる時代になったという感慨です。ある意味、社会が成熟したのではないかと感じます。

以上、雑文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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