英語公用語化を発表した企業が目指すものは?

グレン・ブラウン

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テーマ:副校長の部屋

グローバル化が進み、日本の企業ではそれに対応できる人材の育成が急務となっています。それに伴い、英語力が必須であると言う認識は共通になりつつあります。ご存知のように、楽天とファーストリテイリングは2012年から社内英語公用語化の方針を打ち出しました。英語研修への取り組みの事例から、二社が目指すものを探りたいと思います。

<楽天の例>
‐社内に約80人からなる「英語化推進プロジェクトチーム」を編成
‐英語学習支援(eラーニング、事業部単位での英語学習会、TOEIC受験)を会社負担
‐TOEIC基準点に達さない社員向け4ヶ月224時間の特訓
‐会社負担でフィリピン・セブ島への短期語学留学

TOEIC受験に関しては、「TOEIC基準点(現社員は600点)はスタート地点」という位置づけのようです。 世界27か国への進出と、海外取扱高比率70%を目指すという三木谷社長の方針のもと、「英語が本当に必要になってからでは遅い」というわけで、まずは英語公用語の風土を社内に作ろうとしているという見方もあります。 その結果、「TOEICの個人スコアを張り出し競い合う、進学塾と見まがう光景が出現」し、「一時は本社のある品川界隈の英会話学校は楽天社員ばかりいると噂にもなったほどです」(楽天副社長 國重氏談)
三木谷氏は「日本語だけを使っていると、世界で何が起きているか把握できない。日本の産業界は目を覚ますべきだ」また、「日本の大企業は英語ができず、世界のリーダーになれなかった」と自身も流暢な英語で講演する実力の持ち主です。社長が良い手本となって、社員も刺激され後に続こうと努力を続けるのでしょうか。事実、社員のTOEIC平均点が1年半で530点ほどから700点ほどまでアップしたそうですから、立派です。反面、TOEICの点数を管理職(800点基準)への昇格条件にしたため、他の面で優れていても認められない例が相次いでいると言います。その場合、基準点に達するまで社内の英語講習会で特訓を受け、条件を満たさなければなりません。そうなると管轄部署の業務にも支障が出てくるはずです。既に高得点を取得している社員に仕事のしわ寄せがいくという事態も当然起こってくるでしょう。
そもそもTOEICのスコアで英語力を図る事自体にかなり無理があります。かと言って他に指標となるものがない現状では、手っ取り早く結果が見えるテスト得点に頼らざるを得ないのでしょう。

<ファーストリテイリングの例>
‐社員向け英語学習プログラム・TOEIC受験は「業務」と位置付け
‐大手英会話スクールと契約し、社員一人ひとりに個別カリキュラムを組む
‐社員は自宅のパソコンからサイトにアクセス・スカイプ電話で受講
‐不参加の社員に対しては「怠けている」として受験料などの返却を求める

現在は、母語が異なる人が対象の資料や会議は英語で行っているものの、国内店舗の日本人同士の会議や打ち合わせは日本語を使っているそうです。しかし、2020年には海外店の比率を60%にする予定ということで、いずれ会議も英語で行なわれることになります。本社社員と店長の約3000人はTOEIC700点以上が義務化されました。
  
柳井正ユニクロ(ファーストリテイリング)代表取締役会長兼社長は、次のように述べています。
「今回のうちの英語化にしても、ともすると勘違いされてしまうんです。『国を売るのか』とか『日本語という魂の世界にメスをいれるのか』とか。そうじゃなくて、英語なんて、所詮ツールですよね。欧米人の所有物じゃないんです。それはうちの社員だけじゃなくて、どの会社の日本人にも必要不可欠なツールとなるはずです。」「日本語という殻の中にとどまっていては、会社はもはや成長しないし、多国籍の社員との価値観の共有もできないんです。」「危機意識をもって早急に変わらないと、外国人が中間管理職以上のポストを占めて、日本人は使われる末端社員になります。」対談抜粋「英語社内公用語化の傾向と対策(森山進 著)」 

私個人の考えとしては、上記の柳井社長の持論におおむね賛成です。特に、「英語なんて所詮ツール」という句は常々学生さん・受講生の方に申し上げていることです。ただ、やはりここでもTOEIC700点以上を義務化し、業務と位置づけたことに疑問を感じます。学習サイトにアクセスした時間をパソコン上で会社がチェックするという話を読みましたが、それは過剰な社員管理と言えないでしょうか。

英語を使えるグローバル人材育成が企業にとって急務であることは間違いありません。しかし、その手段としてTOEICスコアを指標にするしかないのでしょうか。確かに、500点取得までは基礎英語力としてリスニング・リーディング強化を行わなければなりません。聞き取れなければ、また読めなければ始まりませんから。しかし、その後、膨大な時間を費やして700点・800点を目指していくことがビジネスで使える英語力の向上につながるとはあまり思えません。

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