職業病かな?人形見本市へ出陣です(笑)
先日、私が研修でお世話になっているマル武人形さんの社長様が亡くなられました。
私のことを沢山叱ってくれ、沢山褒めてくれた方です。
店をたたむかもしれないと思った時期に
11年前、私が福順号を継ぎ始めた頃、景気が悪く「このままでは福順号を畳むのかな」と考えていました。
私のオヤジ(2代目)が、いい人形を扱っているのは知っていたのですが、黙っていても売れる時代を経験していたため、商品の案内ではなく、「価格」の案内がメインでした。
時代の背景の違いにより決して否定するわけではないのですが、私としてはやはり「価格」ではなく「モノ」で選んでもらいたい。
しっかりとした説明、商品知識を付けたい、職人さんの「こだわり」に唸って頂きたい。
そんな思いを秘めつつ
「でも、少しずつ自分で勉強して覚えていくしかないんやな~」
「その間にもっと景気が悪くなり知識を付ける前に店を畳むんちゃうか」
など、当時は真剣に考えました(笑)。
そんな事を考えている時期にちょうどお声を掛けてくれたのが、マル武人形さんの社長様です。
人形への「熱い」思い
初めて研修に参加させて頂き、驚きの連続でした。
商品説明、人形の構造、仕立て方、素材、言葉の言い回し、人形に対する思い、
職人の「こだわり」を分かりやすくしっかり「言語化」してくれ、私の欲している情報を惜しげもなく講義してくれました。
頷きっぱなしで、どんどん頭に吸収されるのが分かりました。
特に印象に残った言葉は「千の問いに答えられてこそ、専門(千問)店と言える」です。
初めての研修を終え、向かえたその年の雛シーズン、お客様から「兄ちゃんの説明すごく分かりやすかった、これ貰うわ」と言って頂き、めちゃくちゃ嬉しかった事を鮮明に覚えています。
通常、研修は一回(三日間)で終わる方が多いようですが、
私は、翌年も二年連続で参加させて頂き、
その次の年も、
またその次の年も。
毎年のように参加させて頂いていました。
しかしながら、研修先のホテルで、他のお人形屋さんと話をさせていただく機会があり、
「研修早く終わんないかな~」、
「話長いよね」
「福順号さん、何回も参加して意味あります?」
という会話をされる方もおり、私は苦笑いをしながら、心の中で「え~、うそやん、めっちゃ面白いねんけど」と驚いたことががあります。
今思えば人形に対する「温度差」だったような気がします。
当時、社長に知識で敵うわけは無いのですが、社長の「温度」と私の「温度」は同じ熱さだったような気がします。
だから、何度聞いても面白かったのでしょう。
「聞く側の意識で、ここまで違うんやな~」と感じました。
確かに行くたびに同じ講義内容の場合も多々ありましたが、面白いもんでその年その年、売り場にたって経験を積み、再び研修に参加をすると、より「知識」や「言葉」のもつ意味に奥行を感じました。
講義中たまに下ネタを言うこともありましたが(笑)、間違いなく私の自慢の師匠です。
商売柄・・・
生があり、死がある。
縁起物の商売をさせて頂いており、こんなコラムを書くのは「どうかな?」とも思いましたが、
この世に生まれてきた時点で「死」はつきもの、
生まれてきて「おめでたい」が商売だからこそ、「生命の尊さ」を考え、対極的にある「故人への偲び」にしっかり向き合ってもいいように思い、コラムを書くことにしました。
師匠へのご冥福をお祈り致します。
本当にお世話になりました。
福順号 江戸唐音