33【不動産投資】FIRE大家FPが考える不動産の売却時機の目安と売却事例

竹下昌成

竹下昌成

テーマ:不動産投資

不動産で成功する方法は大別すると2つです。
・長く所有する
・たくさん所有する

 「成功」の定義はそれぞれですが、仮に「金額的に損をしないこと」だとします。
例えば、悪く言われがちな新築ワンルームでもマトモなCFで35年のフルローンを耐えきれば無担保の物件が手に入るわけです。首都圏など物件価格・家賃の減少が緩やかな場合はやらないより断然マシでしょう。サブリース契約内容にもよりますが、途中で辞めるから損失が発生・拡大したりします。そして、無理してたくさんやりすぎることで失敗します。

不動産投資で規模を拡大する方法は大別すると2つです。
・インカムとキャピタルを組み合わせる
・借入(レバレッジ)をフル活用する

 最近は不動産価格が上昇、つまり利回りが低下しています。インカムだけでなくキャピタルを組み合わせることを意識しないとスピード感や規模感は望めません。売るためには持っておく必要があります。売るための物件は現金購入が向いていますが、自己資金だけでは限りがあるので借入の利用も当然の選択肢です。自分のゴールをどこに設定するのか、によって組み合わせを判断していく。積極的に不動産投資を進める場合は、物件の売却、入れ替えは必須です。今後の不動産市場はどんどん2極化が進み、物件のタイプによっても入れ替えは必要になるでしょう。

不動産は買う時も悩ましいですが、売る時はもっと悩ましいです。
今売るべきなのか?もっと高く売れるんじゃないか?めんどくさい、せっかく苦労して買ったのになー。いろんなことを考えます。
単純なキャピタル、税金絡めたキャピタル、ローン残高を考慮した現金の戻り金額・・・ややこしいです。
あらかじめ「前向きな売却」について考えておきましょう。

1.売却の注意点

①売るとインカムがなくなる
②買い替えるとCFが減少する 
市況は値上がりしている 次の物件も値上がりしてる=CFが減少する
③売ると仲介手数料はじめいろんな費用がかかる
④売ると譲渡所得税がかかるケースが多い
 譲渡所得=(売値-仲介手数料ほか)-買値+減価償却費
ざっくり言うと、売値と買値が同じでも経過年数分の減価償却額が利益となります。 
減価償却額を上回る値下がり幅の場合(地方都市の新築ワンルームなど)は譲渡益は出ません。譲渡所得税が発生しなくてラッキー、とはなりませんよね。単純に値下がりしていますので売却してもローン残債を精算できないことがあります。

2.売却を考えるタイミング

①購入して5年後以降
  長期譲渡所得税が20%(所得税15%住民税5%)に変わるタイミング
  正確に言うと購入して5年経過した次の1月1日以降

②買値より高く売れる時
  短期譲渡所得税39%(所得税30%住民税9%)を考慮しても得、であれば売却

③ローン残高が減少し、戻り現金で変わらないCFを確保できる時
  ローンで購入した物件の返済が進んだり、相場が上昇したりして売却額と逆転した場合

3.概算売却事例 2023年11月

7年前(2016年)に2,400万円で購入
東京都港区 1R35平米 築33年 本体2,000万円 フルリノベ400万円
家賃125,000円。月々のCF2万円。2023年6月に退去。
2023年11月に2,600万円で売却。

*資金総額2,610万円 (現金500万円、ローン2,110万円)
*ローン
 スタート時    2,110万円
 売却時      1,736万円
*減価償却
 対象額 本体  895万円 計上額 482万円
     リノベ400万円  計上額 186万円
          計      668万円

①単純な利益
売値ー買値  2,600万円―2,400万円=200万円
②税金上の利益 
売値―買値+減価償却済金額  2,600万円―2,400万円+668万円=868万円
譲渡所得税額  868万円x20%=174万円
③CF上の利益(売却時の現金手残り)
売値―ローン残高―(譲渡所得税+売却時諸費用)
2,600万円―1,736万円―220万円=644万円
④トータルの利益(所有期間の現金増)
CF上の利益+7年間のインカムー初期費用
644万円+197万円-100万円=741万円

*購入時の目的

・値上がりを想定せず、ローンとトントンで資産形成
・東京に1室持っておきたい

*売却理由

・想定より値上がりした 
・戻り現金で同水準のCFが確保できる
・管理組合が自主管理。理事長が独裁的で保有継続懸念
・博多に物件を集約させたい 博多は取引先会社、別荘・老後利用、都市の将来性で優位

*効果・考察

・同水準のCFを維持しつつ借入が1,736万円減少
 検討物件は博多のワンルーム450万円、月次CF25,000円
 次に使えるのが644万円なので予算内

・初期費用とリノベ部分の500万は現金なのでトータル741万円から差引き241万円の現金増。
 譲渡所得税174万円がいかに大きいかがわかります。
 一方で「現金500万円が7年間で741万円、つまり1.5倍に増えた」、とも言えます。
・「不動産で成功するにはたくさん持つ」
 一件では241万円でも10件なら2,410万円、100件なら2億4,100万の利益です。
・「不動産で成功するには長く持つ」
  ローン終了まで所有したなら当然に利益はもっと大きくなります。
  今回の損益レベルなら「最初から買い換え物件を買っとけば・・・」って話かも。
・ストレス減少
 実は今回は「理事長」が売却の主因です。詳細は省きますが大変でした。
 普通ならまだ賃貸継続ですが、貴重な自分の人生で関わってる暇なんてありません。
 「許容できる損益になっていたので売却」です。

4.売却に対する9つの心得

なんでもそうですが「モノは考えよう」です。
現実から目を背けるのではなく別の角度から考えるとラクになることもあります。

①考え方を柔軟に、ある程度ドンブリ・割り切りも必要
②買う時に売却時のことまで考えておく
③売却時はこだわりすぎない。全てを満たす場合は少ない。
  いろんな数字や指標が出てくるが都合のよいもの・優先順位で考える。
④「次」を重視する。例えば、買い替え。
 旧物件が想定金額より100万円安くでしか売れなかった
 =新物件を相場より100万円安く買えた、でチャラ
⑤初期費用や減価償却費は不動産所得で費用計上しているため譲渡所得の利益が増える。
 いわば譲渡所得のメリットを先食いしていることを頭の片隅に置いておく。
⑥個人の税制では譲渡所得は物件毎にかかる
 ただし、マイナスの物件とプラスの物件があった場合は通算できる
 つまり、大きな利益の出る物件がある年は問題物件を損切りできるチャンス。
⑦リフォーム費用はこまめに資産計上
 本来は資産計上すべきだが、不動産所得で計上してしまっている人も多いのでは?
 まともな物件であれば譲渡所得は出てくるので費用計上するのではなく資産計上を
 リフォームは15年で別明細で資産計上するとわかりやすい
⑧複数、通算で考える
 初めてやってうまくいったり、一回だけでうまくいくことは少ないですよね。
 「毎回うまくいくとは限らない」「今回はうまくできた」という感覚も大事
⑨自己資金に対してのリターンについて考える
 30万円の利益でも自己資金10万円だったなら3倍に増えていることになる。
 全体の投資額と自己資金についても意識を

まずは、お持ちの物件や購入を検討している物件で試算をしてみてください。

*こちらも併せてご覧ください
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20年を超える不動産投資・不動産運用歴を基に、不動産にまつわるさまざまな疑問に答えます。初心者でも分かりやすく伝えることをモットーにしています

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