30【不動産投資】裁判をやってみた件「入居者過失の原状回復費用請求事件」

竹下昌成

竹下昌成

テーマ:不動産投資

世の中にはいろんな人がいます。僕の物件に住んでいた入居者がペットの糞尿まみれ、残置物だらけで退去しました。その入居者過失の裁判の経緯をご紹介します。
通常であれば「諦めて次!」なのですが、今回は個人的に訴訟を起こしました。
20年超の不動産投資歴で初めてです。

①良い物件だったので損傷が許せなかったこと
②ペット特約をつけているのに原状回復負担を拒んだこと
③入居管理会社がポンコツで使い物にならなかったこと
以上が理由です。

弁護士を使うと割に合わないし、リース会社勤務時代に回収業務や裁判の経験もあったため自分で作業を行いました。
金銭債権と違い、なかなか大変でした。

1.請求額
請求額 1,097,597円
内訳  原状回復工事代 828,300円
   残置物撤去費用  49,500円
    工事期間家賃   200,000円
裁判費用     19,797円

別途回収額 400,000円
内訳  敷金      100,000円   
   保証会社より  300,000円

差引請求額 697,597円

2.概略
兵庫県西宮市の戸建て(3階建て延べ105平米・セキスイハイム施工)を月額10万円にて賃貸していたが、2022年12月末日の退去後に確認するとミシンなどの残置物をはじめペット(小型犬2匹)の糞尿、獣臭、砂、蜘蛛の巣まみれの状態であった。元入居者は4年間使用。なんと職業は住職という70代の夫婦。セキスイで原状回復見積もりすると220万円。回収が不透明なため最低限の原状回復を82万円程度で行った。
敷金10万円、保証会社あり。僕は火災保険加入済。賃貸契約にペット特約あり。

原告(僕)の主張
①ペット特約で原状回復は入居者負担と記載。
 一般管理契約でも通常損耗を超える損傷は入居者過失として入居者が負担する。
②保証会社に対し被告は分割で支払いを開始している。保証会社は原告に支払った30万円を被告に求償している。
  つまり、保証会社は被告の責任を認めており、被告も自分の責任を認めている。

3.経緯抜粋

2022年
12月31日 退去

2023年
1月7日  内装確認
1月17日  自分で掃除機がけなど
1月21日  残置物撤去49,800円
2月6日  三井住友海上へ保険申請について問い合わせ
2月10日   裁判所へ訴状書式確認開始
2月14日 元入居者の住民票取得、以前の住所で不動産謄本取得すると差押歴発覚。
     被告は信用できない人物。督促して入金なければ裁判を決意
2月16日  三井住友海上保険金50,377円給付
3月3日  裁判所で書式チェック 金額から通常訴訟
3月6日  西宮簡易裁判所へ訴状申し立て
3月22日  訴状訂正申し立て完了
4月10日   保証会社から30万円の入金あり
4月28日   裁判期日決定 6月9日15時
5月16日   裁判所からTEL「被告が訴状受け取らず」別の住所へ送付
5月24日   裁判所からTEL「訴状届かず、宛所なし」元の勤務先へ送付
6月8日  裁判所からTEL「被告へ訴状送達OK、裁判は予定通り」
6月9日  被告は欠席。裁判官から厳しい口調で質問攻めを40分受ける
     次回は7月21日。証拠写真の不備を補うために僕が証人尋問される予定。
     1時間半くらいみっちりやるとのこと。
7月21日  裁判所よりTEL「裁判官が体調不良のため延期」
7月24日  次回期日9月15日15時
9月15日  第二回裁判 被告欠席
  原告の証人尋問は1時間半と脅されてたけど15分で済んだ。雰囲気も前回よりフレンドリー。
判決は10月13日。読み上げだけなので出席不要。内容は郵便で通知が来る。

4.それぞれの印象
・三井住友海上
電話対応の女性はいったん全額給付して、入居者に請求する。すなわち求償すると自信満々に回答していたが、結局は5万円しか出なかった。まずは保険会社で回収しようと動いていたので初動が遅れた。
・保証会社
上限の30万円が給付された。こちらも保険会社の結果が出てからの申請だったが、対応は早かった。このあたりは保証会社で変わってきそう。
・裁判所
「弱者の味方」で「公平な審議」をすると言っていたが、1回目の裁判は原告が加害者か?という扱い。金銭債権と違い損害を確定させるのが面倒だと思った。また、社会通念上は「賃借人=弱者」であることが根底にあると感じた。本件に限らず、まともに掃除など維持管理をしている入居者ばかりではない。きちんと使用していない入居者は相応の負担をすべきだと思う。途中、裁判官の体調不良で2か月も延期になった。判決まで7カ月。



5.今後の見通し
10月13日の判決次第は勝訴を見込む。被告の支払いがなければ強制執行する。
給与・預金・不動産などの差押え。
ただし、必ず当たるというものではないため根気よく続けていく。 
改めて、契約時の特約や管理会社の退去立ち合いや督促業務は重要だと思った。

*併せてこちらもご覧ください
「入居者過失の回収方法」







追記
10月13日  判決
郵便で判決文が届きました。

勝訴。。。

原状回復と残置物撤去費用は全額の支払い命令。
ただし、原状回復工事期間中の家賃は却下されました。
「退去」の概念は建物の状態はともかく、明け渡しになるようです。
入居者(消費者)にまだまだ甘々です。
このあたりも退去時の管理会社、入居時の特約が今後の課題でしょう。

次は実際の回収作業です。
まずは請求書の送付、並行して強制執行の準備、です。





追記
2024年4月15日
預金差押と給与差押が不調だったため2月に債権回収会社に依頼。
債務者と現地面談し2年の分割返済でまとめてくれました。
3月から回収開始。メドがつきました。
債権拐取会社は成功報酬約40%ですが依頼して良かったです。

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20年を超える不動産投資・不動産運用歴を基に、不動産にまつわるさまざまな疑問に答えます。初心者でも分かりやすく伝えることをモットーにしています

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