金利上昇への備えは万全ですか ―世界的な長期金利の上昇が示すこと―

森岡寛将

森岡寛将

テーマ:資産運用のポイント

お客さまにお伝えしたいこと

  • 米国・欧州・日本など世界的に長期金利が上昇しており、米国30年国債利回りは約19年ぶりの高水準に達している
  • 背景には、各国の財政赤字拡大、AI関連の巨額資金調達、資源高などによるインフレ懸念など複合的な要因があるとみられている
  • 金利上昇は保有債券の価格下落など運用資産にマイナスの影響を及ぼす一方でプラスの側面もあり、ポートフォリオ全体での見直しに加えて株式を組み合わせた分散投資や複利運用の活用など、ご自身の状況に合わせた備えを検討することが重要

 世界の主要な国債市場では利回りが軒並み上昇し、数十年ぶりの高水準に達する動きが見られました。米国では30年国債利回りが2026年7月末時点で5.27%と約19年ぶりの高水準に、ドイツの30年国債利回りも2011年以来初めて3.70%に達し、日本では新発30年国債の利回りが3.98%と発行が始まった1999年以降で最高水準を更新しています。

 長らく低金利が続いてきた日本を含め、世界的な金利上昇が起きたことに驚かれた方も多いのではないでしょうか。
 今回は、金利上昇の背景と、資産運用にどのような影響が及ぶのか、そしてどのように備えればよいのかを整理します。

【なぜ世界的に長期金利が上昇しているのか】

長期金利上昇の背景として、主に以下の要因が指摘されています。

①各国の財政赤字拡大への懸念

 米国では財政赤字を補うための国債発行の必要性が高まり続けており、2026年8月18日には米国の債務総額は40兆ドルに達しています(*)。
 欧州で財政均衡を重視する保守的な財政運営で知られていたドイツは、コロナ禍の2020年以降に財政方針を転換して財政出動を行っており、今後も防衛費の増額などにより財政赤字拡大への懸念があります。
 日本でも2020年度以降は税収の増加で財政赤字が縮小していましたが、2025年10月に現在の政権が発足してから拡張的な財政運営へ転換したことで、将来の財政リスクが懸念されて将来に対する上乗せ金利(タームプレミアム)の上昇が続く可能性があります。

(*)米財務省が日々更新している公的債務残高ベース(Debt to the Penny)

②AI関連の巨額な資金調達の急増

 データセンター等のAI関連投資資金を賄うため、米大手ハイテク企業が想定を上回る規模で社債発行を進めていることで2025年第4四半期以降で長期債務残高が急拡大しています。
 高格付けの社債と国債は代替関係にあるとされ、社債の大量発行が国債を含む金利全体に上昇圧力をかけている可能性があります。

③資源高などによるインフレへの警戒

 中東情勢の緊迫化を背景に原油価格が高止まりするなど資源高が進み、インフレ懸念が強まっています。2025年の消費者物価指数上昇率(前年比)は主要国の中央銀行が目安とする2%を超える水準となっています。

④政策金利の利上げ観測

 インフレ警戒を受けて、米国や欧州および日本の政策金利が引き上げられるとの見通しから市場では利上げ観測が織り込まれつつあるとされています。

 なお、急激な利回り上昇を受けて、米財務省は2026年8月19日、既発長期国債の買い戻し規模を「少なくとも倍増」させると発表しています(*) 。これを受けて利回りは一旦は低下したものの、財政赤字拡大やAI関連の資金調達増といった構造的な要因は変わらないとの見方も示されています。

 市場関係者の間では、今回の利回り上昇を「危機」ではなく「必要な調整(正常化)」と捉える声がある一方、これらの構造的な要因を踏まえて金利上昇圧力が当面続く可能性を指摘する声もあります。
(*)米財務省プレスリリース

【金利上昇は資産運用にどう影響するか】

 金利が上昇すると、既に発行されている固定利率の債券は相対的な魅力が薄れるため、市場で売買される価格(時価)が下落します。これは、新しく発行される債券がより高い利率で発行されるようになるためです。
 この価格変動の大きさは、債券の残存期間が長いほど大きくなる傾向があり、この感応度は一般的に「デュレーション」という指標で表されます。たとえば残存期間の長い超長期国債などは、金利変動に対する価格の感応度が特に高くなります。

一方で、金利上昇には資産運用にとってプラスの側面もあります。預貯金の金利が改善するほか、これから新規に購入する債券はより高い利率で発行されるため、将来の利金収入の増加が期待できます。ただし、住宅ローンなど借入を行っている場合には返済負担が増える可能性がある点にも注意が必要です。

【金利上昇局面への備え方】

 金利変動リスクへの備え方として以下のような考え方があります。

まずは、ポートフォリオ全体で保有する債券の満期管理です。
 金利変動リスクを気にされる場合は、残存期間の短い債券を組み入れる、あるいは変動金利型の商品を活用するなど、保有する債券全体の満期構成・金利感応度を調整するという考え方があります。個別の債券だけでリスクを判断するのではなく、保有する資産全体でバランスを見ることが重要です。このほか、満期保有債券の活用なども一つの選択肢となります。

もう一つは、株式の活用です。
 今回のような金利上昇が、景気の強さやインフレを背景に生じている場合、企業の売上・利益が拡大しやすく、株式のリターンを押し上げる面があります。
 特に銀行など金融関連の業種は、貸出金利と預金金利の差(利ざや)が改善しやすいことから、金利上昇局面で相対的に注目されやすい業種とされています。

 一方で、将来の利益成長への期待を株価に大きく織り込んでいるグロース株(成長株)は、将来の利益を現在価値に割り引く際の割引率が上昇するため、相対的に評価が下がりやすい傾向があるとも指摘されています。

 債券は金利上昇局面で価格が下落しやすい一方、株式は景気やインフレの動向次第でプラスに働く場合があり、両者を組み合わせて保有することで、金利変動に対する資産全体への影響を和らげる効果が期待できます。ただし、株式は債券とは異なる値動きのリスク(元本変動リスク)を伴う点にはご留意ください。

さらに債券による複利運用の活用もあります。
 あわせて、債券運用では受け取った利金や満期時の償還金を、その時点でより高い利回りの債券に再投資していくことで、複利効果を活かした運用も期待できます。金利上昇局面では、償還・利払いのたびに、より高い利回りの新発債券に再投資していくことで、ポートフォリオ全体の平均利回りが徐々に改善していく可能性があります。ただし、再投資の都度、その時点の市場環境や新たな発行体の信用状況を確認する必要がある点にはご留意ください。

こうした再投資・乗り換えを個別の債券で都度行うには手間がかかるため、債券ETF(上場投資信託)を活用する方法もあります。債券ETFは、満期を迎えた組入債券を運用会社が随時入れ替え、分配金も再投資する仕組みを持つ商品もあり、個人で個別の債券を管理・乗り換えるよりも手軽に、複利効果や金利上昇局面での利回り改善の恩恵を受けやすい面があります。 
 一方で、債券ETFは個別債券と異なり満期という概念がなく、市場で売買される価格が金利変動の影響を常に受け続ける点には注意が必要です。

【まとめ】

 世界的に長期金利が数十年ぶりの高水準まで上昇しており、日本も例外ではありません。各国の財政赤字拡大、AI関連の巨額な資金調達、資源高によるインフレ懸念など、複数の要因が重なっていると考えられています。
 金利上昇は保有資産の価格下落につながる面がある一方、預貯金や新規購入する債券の利回り改善というプラスの側面もあります。ポートフォリオ全体での債券の満期管理に加え、景気の強さを背景とした金利上昇局面では株式のリターンが押し上げられる面もあることから、債券と株式を組み合わせた分散投資や複利効果を活かす運用も選択肢の一つです。ご自身の状況に合わせた備えを検討していくことが大切です。

※本コラムは情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。将来の金利動向や運用成果を保証または示唆するものではなく、投資判断にあたっては、市場環境やリスクを十分にご理解いただいたうえで、ご自身の判断により行っていただく必要があります。

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森岡寛将
専門家

森岡寛将(最高運用責任者)

株式会社アンバー・アセット・マネジメント

「顔が見える運用」「家族に勧められる商品・サービス」をコンセプトに、顧客本位の資産運用サービスを提供。運用現場からバックオフィス業務まで豊富な経験を有する最高運用責任者より役立つ情報発信に注力。

森岡寛将プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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