【自治体職員必見】生成AIを活用した、一秒監査・多重照合、RAGによるベテランのノウハウ継承とは?

濱田金男

濱田金男

テーマ:生成AIによる業務効率化

こんにちは!今回は、ある自治体向けに実施している技術研修「生成AIを活用したヒューマンエラー防止と技能伝承」のテキストから、実務に直結するAI活用のエッセンスを要約してお届けします。

自治体の業務では、膨大な資料の確認や複雑なルールの適用が求められます。本研修は、単なるツールの使い方を学ぶものではありません。AIを「疲れ知らずの副担当」として使いこなし、ミスの撲滅と組織全体の技術力向上を目指す革新的なアプローチです。

1. 精神論から脱却!ミスは「仕組みの限界」
人間がミスをするのは「不注意」や「やる気不足」といった精神論が原因ではありません。人間の脳の処理容量(ワーキングメモリ)の限界や、マルチタスクによる疲弊といった「アナログな仕組みの限界」が根本的な原因です。

これからの時代は、「AI vs 人間」ではなく「AI with 人間」の姿勢が求められます。AIは忖度せず、24時間365日同じ精度でチェックを行ってくれます。ミスを個人の責任として隠すのではなく、AIに正直に伝えて一緒に原因を分析する「心理的安全性」のある環境づくりが重要です。

2. 「一秒監査」と「多重照合」で目視チェックを自動化
人間が最も苦手とする「単調で高精度を要する作業」はAIの得意分野です。
①一秒監査: AIにマニュアルから確認用の「動的チェックリスト」を生成させ、作成した資料と突き合わせて数秒で項目の漏れや基準との矛盾を炙り出します。

②多重照合: 申請書と図面など、複数の異なる資料をAIに読み込ませ、数値や日付、論理的な整合性に矛盾がないかを網羅的に確認させます。

ただし、AIは時に誤認識をすることがあるため、最終的なダブルチェックと責任は必ず人間が持つことが鉄則です。
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「一秒監査」と「多重照合」の具体的な活用例をご紹介します。
これらは、人間が最も苦手とする「単調で高精度を要する確認作業」をAIに任せ、ミスを構造的に防ぐための手法です。

(1)一秒監査の具体的な活用例
一秒監査は、基準となるルールと作成した資料を突き合わせ、一瞬で不備を炙り出す手法です。

<実施要領に基づく資料チェック>
まず、基準となる「実施要領」や「マニュアル」をAIに読み込ませ、「若手がミスしやすいポイントを5項目抽出してチェックリストを作成せよ」と指示し、動的(案件ごとに最適化された)チェックリストを自動生成させます。

次に、自身が作成した資料(積算資料など)を入力し、「先ほどのチェックリストに基づき、この資料を監査せよ。数値の転記ミスや項目漏れ、基準との矛盾を指摘せよ」と指示することで、数秒で不備を洗い出します。

(2)多重照合の具体的な活用例
多重照合は、2つ以上の異なる資料を同時に読み込ませ、それらの間に矛盾がないかを網羅的に確認する手法です。より高度な「深掘り」テクニックとして以下のような活用が可能です。

複数資料の整合性確認(道路占用許可申請などの例) 「申請書(新規)」「図面・現場仕様書」「過去の決定通知書・工事台帳」などの複数資料をAIに読み込ませ、数値、日付、氏名、住所、および論理的な整合性に矛盾がないか徹底的に比較させます。

「異なる単位」の換算照合 申請書には面積が「平米」で記載されている一方、図面には「坪」や「辺の長さ(m)」で記載されているような場合、AIに計算を含めた換算を行わせ、面積が一致しているかを検証させます。

「日付の論理的順序」の照合 「申請日」「証明書発行日」「着工予定日」などを比較させ、「証明書の発行日よりも前に申請が行われている」といった、行政手続き上不自然な日付の前後関係がないかを特定させます。

「住所表記」のゆらぎ照合 資料Aには「本町6丁目50番地の10」、資料Cには「本町6-50-10」と記載されている場合、表記の揺れを除外した上で、すべてが同一の場所を指しているかを確認させます。

矛盾点に基づく「補正指示書」の自動作成 多重照合で発見した矛盾点をもとに、申請者へ書類の修正を求める「補正指示書」の文章をAIに作成させます。「どの資料のどこが矛盾しているか」という理由と、「どのように修正して再提出すべきか」という案内を含んだ、丁寧で角の立たない公用文を迅速に作成できます。

※ 実用上の注意点(ダブルチェックの必須化)
これらの機能は非常に強力ですが、AIが画像データ等の文字を読み間違える(OCRミス)可能性や、「正当な理由による例外」を判断できない場合(ハルシネーション等)があります。 そのため、AIが「矛盾あり」と指摘した箇所や重要な数値については、必ず人間が原本を確認し、最終的な判断と責任を持つ(ダブルチェックを行う)ことが鉄則とされています。
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3. ベテランの「暗黙知」を言語化し、RAGでノウハウを継承
熟練職員が長年培った「現場の勘」や「独自のノウハウ」といった暗黙知は、退職とともに失われてしまう危機にあります。

AIをインタビュアーとして活用し、ベテランの思考メモなどから「判断基準」を抽出・言語化させます。さらに、RAG(検索拡張生成)という技術を使い、過去の報告書や技術マニュアルなどの特定のデータをAIに参照させることで、若手でもベテランと同じ精度で、基準に基づいた具体的な回答を引き出せるようになります。
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RAG(検索拡張生成)を活用してベテランのノウハウ(暗黙知)を継承する具体的な手順を解説します。
AIを活用した技術継承を成功させるには、いきなり全業務を対象にするのではなく、特定の分野に絞って「スモールスタート」で以下のステップを踏むことが推奨されています。

<RAGでベテランのノウハウを継承する5つのステップ>
(1)対象分野の選定 まずは、最も技術継承が危ぶまれている「特定の1分野」に絞ります。以下の条件に当てはまる業務が最適です。

ベテランの退職が数年以内に迫っている。
現場写真や過去の報告書がある程度デジタル化(PDF等)されている。
若手が判断に迷い、ベテランに電話や対面で質問することが多い業務。

(2)データの収集と「暗黙知」の言語化 ベテランの頭の中にある「勘」や「コツ」をAIを使って言語化(テキストデータ化)します。

AIをインタビューアーにする: ベテランが過去に書いたメモや備忘録をAI(Copilotなど)に入力し、「以下の思考メモを読み取り、私が何を基準にこの判断を下したのか整理せよ。不足している情報があれば質問せよ」と指示します。

これにより、ベテラン自身も無意識に行っていた「判断のポイント」が客観的なリストとして抽出・整理されます。また、過去10年分の工事復命書などの資料も整理・PDF化しておきます。

【注意点】: ノウハウとして蓄積するデータには、個人情報や企業固有の機密情報が含まれないよう、必ず匿名化・マスキングを行います。

(3)RAG(検索拡張生成)によるプロトタイプ構築 抽出した判断基準や過去の技術マニュアルをAIに参照させ、若手の質問に答えるAIアシスタント(プロトタイプ)を作ります。

AIに「以下の【技術マニュアル】や【過去事例】の内容のみに基づき回答せよ」と指示した上で、ステップ2で用意した内部データを読み込ませます。

これにより、一般的なAIの回答ではなく、自社の独自ルールやベテランの基準に沿った精度の高い回答を引き出せるようになります。

(4)現場での試行と深掘り 作成した仕組みを実際の現場で試し、若手職員がベテランと同じ判断基準を引き出せるかを検証します。

答え合わせ: 実際の現場の数値(気温や寸法など)を入力し、AIがマニュアルの計算ルールを正しく適用できるかを確認します。

深掘り: 回答が浅い場合は、AIに対してさらに追加質問を投げかけ、より具体的なアドバイスを引き出します。

(5)組織的なルーチンへの組み込み 現場での試行を通じて不足している情報があれば補足し、システムをブラッシュアップします。最終的に、若手が迷った際は「まずベテランAIアシスタントに聞く」というフローを組織の標準的な業務手順(ルーチン)として定着させます。

このように、AIに「マニュアルという教科書」と「ベテランの思考の型」を渡すことで、昨日入ったばかりの若手職員でも、ベテランと同じ「基準通りの回答」を得ることが可能になります。
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4. 過去の失敗をAIで客観的に分析し、ルールを改善
誤送付や書類紛失などの事故報告書をAIに分析させることで、当事者の感情や「焦っていたから」といった主観を排除し、物理的な環境要因やシステム・手順の欠陥を客観的に抽出できます。

AIに「ベテランの視点」を与えて実効性のある再発防止策を提案させ、個人情報などを匿名化して教訓化した上で、組織の正式な手順書(マニュアル)へ自動反映させる仕組みを作ります。

5. 組織力を底上げする「プロンプト」の共有
AIを安全に業務で使うにあたっては、ガイドラインを遵守し、個人情報を含まない「機密性2」までの情報に限定することが大前提です。

また、AI活用の成果は「聞き方(プロンプト)」に依存します。若手職員がベテラン並みの成果を出すために、以下の工夫で組織全体の思考プロセスを底上げします。

①AIに深掘りさせる: プロンプトの末尾に「不足している情報があれば質問せよ」と加え、AIからの逆質問を引き出します。

②共有プロンプト集: ベテランが気にする「チェックの視点」をあらかじめ組み込んだ定型文をチームで共有します。

おわりに
生成AIの導入は単なる業務効率化にとどまりません。職員を「ミスによる心理的負担」から解放し、より創造的な業務や高度な判断に注力するためのインフラ構築です。
AIという強力なパートナーと共に、データが溜まるほど安全になる新しい自治体の働き方を実現していきましょう!

 ★具体的なAIへの指示方法「プロンプト」を知りたい方は、お気軽にお問い合わせ
  ください。

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濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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