世界を支える「見えない巨人」(7)「ものづくり」と「カイゼン」の精神
3.3 強靭なサプライチェーンと中小企業の役割
日本の産業は、大企業と中小企業が緊密に連携し、高度に計画され、品質管理された
強靭なサプライチェーンを構築しています。特に、中小企業が持つ専門性の高い技術
力が、このサプライチェーンの強さを支える重要な要素です。
日本のサプライチェーンは、製品開発から配送まで、サプライチェーンプロセスのあ
らゆる側面を計画的に進める「高度な計画性」が特徴です 。メーカーは厳格な品質
管理システムを用いて高い基準を満たす製品を生産し、顧客満足度を高めています 。
生産と配送プロセスに技術と自動化を導入し、効率性を追求しています 。長年の輸出
経験から、世界中に広がるグローバルサプライチェーンを構築しています 。自動車、
電子機器、食品など多様な製造業が存在し、異なる市場や顧客の需要に適応できる
柔軟性があります 。
「イコール・パートナー」という発想で、複数の取引先との間で密な情報連携を展開
する企業群が成功しています 。この連携により、在庫削減、供給リードタイムの短縮、
業務重複の解消によるコスト削減といった成果が期待されます 。
日本企業の99.7%が中小企業であり、全従業員の80%を占めています 。大田区のよ
うな地域には、高度な技術力を持つ中小企業が集積しており、大企業のデジタル家電
生産拡大の波及効果も受けています 。
半導体のようにスケールメリットが求められる分野では、中小企業は最終製品には
手を出せないものの、生産に必要な設備や検査機器の分野でその技術力が生かされ
ています 。
例えば、携帯電話に集積回路を搭載する自動装置や液晶検査機器に、大田区の中小
企業の技術が活用されています 。政府は「ものづくり補助金」や「成長型中小企業
等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」を通じて、中小企業の技術開発、生産性向上、
研究開発計画策定から事業化までの一貫した支援、そして大学や大手企業との連携
を促進しています 。サプライチェーンマネジメント(SCM)は中小企業にとっても
デジタル化を通じて競争力向上に大きく貢献できます 。
日本のサプライチェーンの強靭性は、大企業だけでなく、高度に専門化された中小
企業が不可欠な「パートナー」として機能し、精密部品や高度な加工能力を提供す
ることで、レジリエントで深く統合された産業基盤を形成している点にあります。
サプライチェーンの成功が「イコール・パートナー」との密な情報連携に依存して
いるという記述と、日本企業の99.7%が中小企業であるという事実は、単に大企業
がサプライチェーンを支配しているわけではないことを示唆しています 。これらの
SMEは単なる一般的なサプライヤーではなく、「技術力の高い企業に仕事が集中」
し、携帯電話の集積回路搭載自動装置や液晶検査機器に技術が活かされていること
から、高度に専門化された技術力を持っていることがわかります 。
政府の支援プログラムも、SMEの技術開発と連携を後押ししています 。このSME
の専門知識が分散されたネットワークが、サプライチェーン全体の強靭性と高品質
な製品生産能力を支えています。
この強固で垂直統合された協調的なサプライチェーンは、SMEの技術的卓越性を基
盤とし、日本産業が高品質で高精度な中間財を安定して生産することを可能にし、
世界の製造業における「見えない」が不可欠な役割を確固たるものにしています。
サプライチェーンが「効率的」であり「品質管理」に重点を置いているならば 、
そしてそれが高度な技術力を持つSMEによって支えられているならば 、このサプ
ライチェーンから生み出される製品(部品や材料)は必然的に優れた品質と精度を
持つことになります。これが、信頼性と性能を重視する世界のメーカーにとって、
日本の製品が魅力的な選択肢となる理由です。
最終製品に組み込まれることで、その貢献は「見えない」ものの、その品質は、
この洗練された、協調的で、しばしば目に見えないサプライチェーンネットワー
クの直接的な結果です。これは、日本の貢献が個々の企業だけでなく、産業エコ
システム全体によって支えられているという考え方を補強します。



