肩こり、首こり、腰痛になりやすい姿勢と改善法!【岐阜の理学療法士のコラム】
暑くて動けない日は、身体を責めなくてよい|夏の肩こり・腰の重さを「同じ姿勢」から見直す
梅雨が明けて本格的な暑さが始まると、外を歩く時間が少なくなります。
買い物へ出る回数が減り、散歩も控え、冷房の効いた部屋で過ごす時間が長くなる。夏を安全に乗り切るためには、自然な生活の変化です。
一方で、室内で過ごす時間が増えてから、次のような変化を感じる方もいます。
夕方になると肩が重い
椅子から立つと腰が伸びにくい
ソファで過ごした後、身体が固まったように感じる
腕を上げると肩や腰に力が入る
少し歩いただけで脚が重い
運動不足が気になるが、暑い中で動くのは不安
こうしたとき、「もっと運動しなければ」と焦る必要はありません。
暑い日の屋外運動には熱中症の危険があります。まずは涼しい環境を確保し、水分補給や休息を優先することが大切です。
そのうえで見直したいのが、運動量の少なさだけではなく、同じ姿勢が長く続いていないかという点です。
身体は、大きく運動するときだけ動いているわけではありません。立つ、歩く、振り向く、手を伸ばすといった日常の小さな動きによって、関節や筋肉の役割を少しずつ入れ替えています。
暑い日は、涼しい室内で3分だけ姿勢を変えることが、身体の使い方を見直す入口になります。
夏に減るのは、歩数だけではありません
外出が減ると、「運動不足になった」と考えがちです。
しかし、身体に起こる変化は、歩数や消費カロリーの減少だけではありません。日常の中にあった、さまざまな方向への動きも少なくなります。
外出する場面を思い浮かべてみましょう。
玄関で靴を履くときには、片脚へ体重を移します。階段では足首、膝、股関節が曲がったり伸びたりします。店内では立ち止まり、方向を変え、棚の商品へ手を伸ばします。
荷物を持てば、左右の体重配分も変化します。車へ乗り降りするときには、身体をひねりながら脚を動かします。
これらは本格的なトレーニングではありません。しかし、足裏、足首、股関節、骨盤、背骨、肩甲骨を少しずつ使う機会になっています。
外出が減り、椅子やソファで過ごす時間が増えると、こうした小さな姿勢変化も減ります。
筋力がすぐに大きく低下するというより、まずは身体を動かす方向や、姿勢を切り替える回数が少なくなると考えたほうが、日常の変化を捉えやすいでしょう。
長時間の座位では、股関節と骨盤が動きにくくなります
椅子に座ると、股関節は曲がった状態になります。
骨盤は椅子に支えられ、立っているときよりも動く必要が少なくなります。パソコンやスマートフォンを見続けていると、骨盤が後ろへ傾き、背中を丸めた状態が続くこともあります。
反対に、背筋を伸ばそうとして、腰を反らしたまま座り続ける方もいます。
丸い姿勢と反った姿勢のどちらが絶対に悪い、というわけではありません。
問題になりやすいのは、どちらか一つの形から動けなくなることです。
長く座った後に立ち上がると、本来は股関節が伸び、骨盤の位置が変わり、背骨も立位に合わせて動きます。
ところが、股関節や骨盤の動きが小さくなっていると、腰を大きく反らして身体を起こそうとすることがあります。
その結果、立ち上がった瞬間に腰が重い、数歩歩くまで身体が伸びにくい、と感じる可能性があります。
腰がつらいときでも、腰だけが問題とは限りません。座り続けた股関節や骨盤の動きにくさが、背景の一つになっていることがあります。
肩が重いときも、肩だけを見ないことが大切です
腕を上げる動作では、腕の付け根だけが動いているわけではありません。
肩甲骨は、肋骨でつくられる胸郭の上を滑るように動きます。鎖骨も動き、胸の背骨もわずかに伸びたり回ったりします。
肩関節、肩甲骨、鎖骨、胸郭、背骨が協力することで、腕を無理なく上へ運びます。
長時間の座位で背中が丸まり、胸郭の動きが小さくなると、肩甲骨も動きにくくなることがあります。
その状態で腕を上げようとすると、肩をすくめたり、腰を反らしたりして動きを補う場合があります。
たとえば、次のような動作です。
洗濯物を物干し竿へ掛ける
高い棚の物を取る
髪を乾かす
上着を着る
車の後部座席から荷物を取る
肩の重さが気になると、肩を大きく回したり、強く揉んだりしたくなるかもしれません。
それで楽になる場合もあります。しかし、繰り返し重くなるときは、肩だけでなく、呼吸に伴う胸郭の動きや、背骨、骨盤まで含めて見直すことが大切です。
姿勢は「正しい形」より、変えられることが大切です
姿勢の悩みでは、「猫背を直さなければ」「背筋を伸ばさなければ」と考えやすくなります。
けれども、背筋を伸ばした姿勢であっても、長時間固めていれば身体には負担がかかります。
良い姿勢を一つの完成形として考えると、その形を保つために身体へ力を入れ続けることになります。
肩を後ろへ引く。
胸を張る。
お腹を固める。
腰を反らす。
こうした姿勢は、一時的にはきれいに見えるかもしれません。しかし、呼吸がしにくくなったり、肩や腰の筋肉が休めなくなったりすることがあります。
身体にとって大切なのは、一つの姿勢を長く守ることではありません。
少し丸くなる。
少し伸びる。
右へ体重を移す。
左へ移す。
立ち上がる。
また座る。
状況に応じて姿勢を変えられることが、負担を分散する助けになります。
猫背や脚を組む姿勢をすべて禁止する必要もありません。「その姿勢を取ってはいけない」のではなく、「その姿勢のまま長く固まっていないか」を見直してみましょう。
呼吸は、胸郭と背骨を動かす小さな運動です
身体を動かすというと、腕や脚を大きく動かす運動を想像するかもしれません。
しかし、呼吸でも身体は動いています。
息を吸うと肋骨が広がり、吐くと元の位置へ戻ります。胸の前だけでなく、肋骨の横や背中側にも小さな動きが生まれます。
呼吸に伴って胸郭が動けば、胸の背骨や肩甲骨が動くための土台も変化します。
長時間パソコンやスマートフォンを見ていると、呼吸が小さくなったり、息を吸うたびに肩をすくめたりすることがあります。
そのようなときに、無理に深呼吸をしようとすると、かえって首や肩へ力が入る場合があります。
大切なのは、たくさん空気を吸うことではありません。
肩の力を抜き、肋骨の横や背中が少し広がっているかを静かに感じることです。
呼吸は、運動を始める前の準備ではなく、それ自体が姿勢を小さく変える動きだと考えられます。
ピラティスは、身体を固める筋力トレーニングではありません
ピラティスというと、「腹筋を鍛える運動」「体幹を固めるトレーニング」という印象を持つ方もいるでしょう。
確かに、腹部や背中の筋肉を使うエクササイズは多くあります。
しかし、目的は強く力を入れ続けることだけではありません。
呼吸に合わせて背骨を動かす。
骨盤を安定させながら股関節を動かす。
肩に余分な力を入れずに腕を動かす。
左右の体重移動を感じる。
このように、動く場所と支える場所を調整しながら、身体の使い方を学ぶ点もピラティスの特徴です。
資料に整理された基礎エクササイズにも、骨盤・腰椎の安定、脊柱の動き、股関節の分離運動、体幹の安定といった目的が示されています。
ただし、暑くて身体が重い日に、難しいエクササイズへ挑戦する必要はありません。
ピラティスの考え方を、椅子に座った呼吸や骨盤運動、立位での体重移動へ置き換えるだけでも、身体を部分ではなく全体で見る練習になります。
涼しい室内で試したい3分の動き
暑い日には、冷房などを使って室内を涼しくしてから行います。
汗をかくことを目的にせず、呼吸が乱れない程度で動きましょう。
1分目は、背中まで広げる呼吸
椅子に浅めに座り、足裏を床につけます。
背筋を強く伸ばさず、楽に座ります。鼻からゆっくり息を吸い、胸の前だけでなく、肋骨の横や背中が広がる感覚を探します。
口から細く息を吐き、肩と腕の力を緩めます。
3~5呼吸を目安にします。
大きく吸おうとして肩が上がる場合は、呼吸を少し小さくして構いません。
2分目は、骨盤を前後に揺らす
両手を太ももの上へ置きます。
骨盤を前へ転がすと、背中が少し伸びます。次に骨盤を後ろへ転がし、背中を少し丸くします。
腰だけを大きく反らしたり、強く丸めたりする必要はありません。
骨盤の動きに背骨がついてくる範囲で、6~10回ほど繰り返します。
どちらか一方向が動きにくい場合でも、無理に同じ大きさへそろえず、動かせる範囲を確認します。
3分目は、左右へ体重を移す
椅子の背や壁に手を添えて立ちます。
両足を腰幅程度に開き、右足、左足へゆっくり体重を移します。
体重を乗せた側の足裏で床を感じながら、反対側の足が少し軽くなる変化を探します。
慣れていれば、体重を移した側と反対の腕を軽く前へ伸ばします。
腕と脚を交互に動かすことで、歩行に近い身体のつながりを感じやすくなります。
ふらつきがある方は、足を持ち上げる必要はありません。両足を床につけたまま、小さく体重を移しましょう。
3分を完璧に行うより、座り続ける時間を区切る
3分の動きだけで、肩こりや腰痛が治るわけではありません。
大切なのは、運動の効果を急いで求めることではなく、長く続いた姿勢を一度途切れさせることです。
朝に一度だけ長く運動するより、座り続ける時間の途中で、こまめに姿勢を変えるほうが取り入れやすい場合があります。
パソコン作業が一区切りついたとき。
テレビ番組が終わったとき。
飲み物を取りに立ったとき。
昼食後に座り続けていると気づいたとき。
夕方、肩や腰が重くなる前。
こうした生活の節目に3分を組み合わせます。
毎回すべて行う必要もありません。
呼吸を3回する。
骨盤を数回動かす。
立って左右へ体重を移す。
そのうちの一つだけでも、同じ姿勢を続ける状態から抜け出すきっかけになります。
続けられないことを、意志の弱さや努力不足として捉えないことも大切です。暑さが厳しい日は、身体を守るために活動を控えているとも考えられます。
安全を守りながら、できる範囲で姿勢を変える。その小さな選択を積み重ねていきましょう。
体調がいつもと違う日は、運動を優先しない
暑い時期は、室内であっても熱中症が起こることがあります。
めまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気、強いだるさ、筋肉のけいれん、いつもと様子が違うといった症状がある場合は、運動を中止してください。
涼しい場所へ移り、衣服を緩め、身体を冷やします。自力で水分を飲めない場合や意識がはっきりしない場合は、速やかに救急車を要請する必要があります。
肩や腰についても、強い痛み、しびれ、力の入りにくさ、発熱、外傷後の症状、急な悪化などがある場合は、セルフケアだけで判断せず医療機関へ相談しましょう。
暑い日に外へ出られなくても、焦る必要はありません。
涼しい部屋で呼吸し、骨盤を動かし、左右の足へ体重を移す。わずかな時間でも、身体のつながりを思い出すきっかけになります。
身体は、強い運動だけで変わるものではありません。
「同じ姿勢が続いていた」と気づき、次の姿勢へ移る。その小さな変化から、身体との付き合い方を見直してみましょう。


