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睡眠の質とは何だろう?「寝ても疲れが取れない」を睡眠休養感と身体の使い方から考える

小木曽信裕

小木曽信裕

テーマ:睡眠

「昨日はそれなりに寝たはずなのに、朝から身体が重い」

「睡眠時間は確保しているのに、疲れが残っている気がする」

そんな経験はないでしょうか。

反対に、いつもより少し睡眠時間が短かったのに、思ったよりすっきり起きられた日もあるかもしれません。

睡眠について考えるとき、まず気になるのは「何時間寝たか」という数字です。

もちろん、睡眠時間は大切です。

ただ、身体の状態を考えるなら、もう一つ見ておきたいものがあります。

それが、

「眠ったあとに、休めたと感じられているか」

という感覚です。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠時間を睡眠の「量」を反映する指標とする一方、「睡眠で休養がとれている感覚」を睡眠休養感と呼び、睡眠の「質」を反映する指標の一つとして位置づけています。

睡眠の質について考えるとき、「深く眠るにはどうしたらいいのか」だけに目を向けるのではなく、一日の身体の使い方まで少し広げて見てみると、違った景色が見えてきます。

「睡眠の質が良い=深い睡眠が長い」とは限りません

最近はスマートウォッチやスマートリングなどを使って、

「深い睡眠は○時間でした」

「今日の睡眠スコアは75点でした」

と睡眠を数字で確認できるようになりました。

自分の生活を振り返るきっかけとして、こうした機器は便利です。

ただ、「睡眠の質」という言葉は、一つの数字だけで表せるほど単純ではありません。

睡眠研究では、寝床に入ってから眠るまでの時間、途中で目が覚める回数や時間、ベッドにいる時間のうち実際に眠っている割合など、複数の要素から睡眠の状態が考えられています。

睡眠の質について検討した専門家のコンセンサスでも、寝つくまでの時間や途中で起きている時間、睡眠効率などは良い睡眠を考える指標とされています。一方、「深い睡眠が何分あれば質が良い」といった一つの基準だけで判断できるわけではありません。

そこで、私たちが日常生活の中で確認しやすいものの一つが、朝起きたときの感覚です。

「少し休めたな」

「今日はわりとすっきりしているな」

反対に、

「何時間寝ても重たいな」

「朝からもう疲れている感じがするな」

こうした感覚にも目を向けてみます。

厚生労働省も、朝目覚めたときの睡眠休養感を、その人に必要な睡眠が足りているかを考える手がかりの一つとしています。

睡眠時間と同じように、「休めた感じ」も大切にしてみる。

それが睡眠の質を考える一つの入り口になります。

「質が良ければ短くても大丈夫」という意味ではありません


ここで注意したいのが、「睡眠は時間ではなく質が大切」という言葉です。

一見もっともらしく聞こえますが、少し丁寧に考えてみる必要があります。

必要な睡眠時間には個人差があります。

長めの睡眠が必要な人もいれば、比較的短い睡眠時間で十分な人もいます。

そのため、

「全員が必ず7時間寝なければならない」

というように一つの数字を全員に当てはめることも適切ではありません。

一方で、

「睡眠の質さえ高ければ、睡眠時間はいくら短くてもよい」

ということでもありません。

厚生労働省の睡眠ガイドでは、成人について個人差を認めながらも、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することを勧めています。それと同時に、生活習慣や睡眠環境を整え、睡眠休養感を高めることを推奨しています。

つまり、

「量か質か」ではなく、「必要な量を確保しながら質も考える」

という見方が近そうです。

最近は「ショートスリーパー」という言葉を耳にすることも増えました。

実際に、もともと短い睡眠時間で生活できる人が存在することを示す研究もあります。

ただ、「もともと必要な睡眠時間が短いこと」と「睡眠時間を意図的に削ること」は同じではありません。

誰かが5時間睡眠で元気だからといって、自分にも5時間が適しているとは限りません。

睡眠についても、他の人と時間を比べるより、

「今の睡眠で、自分はきちんと休めているだろうか」

と考える方が、自分の身体を理解する手がかりになります。

寝ても疲れが取れないとき、夜だけを見なくてもよい

朝起きて疲れが残っていると、

「枕が合っていないのかな」

「マットレスを変えた方がいいのかな」

「寝る前にストレッチをした方がいいのかな」

と考えることがあります。

もちろん、寝具や寝室環境は睡眠と関係します。

ただ、睡眠を夜だけの問題として考える必要はありません。

私たちの身体は、一日を通して動いています。

朝起きて光を浴び、仕事や家事をし、歩き、食事をし、休み、夜になる。

睡眠も、この一日の流れの中にあります。

厚生労働省の睡眠ガイドでも、良質な睡眠につながる生活習慣として身体活動や運動が挙げられています。

ここでいう「身体を動かす」は、必ずしもジムでトレーニングをすることではありません。

少し遠くまで歩く。

買い物に出かける。

掃除をする。

階段を使う。

長く座っていたら、一度立ち上がる。

こうした日常の動きも身体活動です。

運動習慣をつくらなければと考えるよりも、

「今日はどのくらい身体を使っただろう」

と振り返ってみるところからでも十分です。

ピラティスなども同じです。

「ピラティスをすればよく眠れる」と考えるのではなく、呼吸をしながら身体を動かし、自分の身体の感覚に目を向ける時間をつくる。

一日の中で身体を使う選択肢の一つとして捉える方が自然でしょう。

「疲れている」と「身体を使っている」は同じではありません

ここは少し分かりにくいところです。

一日仕事をしたあと、

「今日はすごく疲れた」

と感じていても、身体そのものはそれほど動いていないことがあります。

パソコンの前で長時間同じ姿勢を続けたり、車での移動が多かったりすると、精神的には疲れていても、身体活動量は多くありません。

身体を動かさずに疲れている。

そんな状態もあります。

だからといって、

「運動不足だから疲れている」

と単純に考える必要もありません。

仕事の負担、考え事、ストレス、暑さ、食生活など、疲労感にはさまざまな要素が関係します。

ただ、

「疲れているから今日は身体を動かさない」

という日が続いているときには、

「疲労感」と「身体活動」を一度分けて考えてみてもよいかもしれません。

5分だけ外を歩いてみる。

座りっぱなしなら少し立って身体を動かす。

肩を大きく動かしながら呼吸してみる。

頑張る運動ではなく、身体に少し違う刺激を入れてみる。

こうした小さな動きも、一日のリズムをつくる助けになることがあります。

肩こりや腰痛と睡眠は、どちらか一方だけの問題とは限りません

「腰が気になってなかなか寝つけなかった」

「肩が重くて、夜中に何度も目が覚めた」

ということがあります。

反対に、

「よく眠れなかった翌日は、いつもより身体のつらさを強く感じる」

という経験がある方もいるでしょう。

睡眠と身体の痛みについても研究が進んでいます。

2024年に医学誌『PAIN』に掲載されたシステマティックレビュー・メタ解析では、16報の論文、11の研究集団、合計約11万7千人の成人を対象とした前向き研究が検討されました。

その結果、睡眠の問題がある人では、その後の慢性的な筋骨格系の痛みと関連する可能性が示されています。

一方で、痛みから睡眠の問題へ向かう関係については、研究によって確実性に差があります。

つまり、

「睡眠不足だから肩こりになる」

「腰痛があるから睡眠の質が下がる」

と単純に一本の矢印で説明するのではなく、お互いに影響し合う可能性があるものとして考える方がよさそうです。

身体の不調には、

姿勢。

関節の動き。

筋肉の働き。

身体活動。

仕事の負担。

心理的なストレス。

生活リズム。

睡眠。

さまざまな要素が関係しています。

痛い場所だけを見るのではなく、その人の一日の過ごし方まで少し広げて考えてみる。

睡眠も、その中の一つです。

「身体が硬いから眠れない」と決めつけないことも大切です

身体を扱う分野では、

「筋肉が硬いから眠りが浅い」

「姿勢が悪いから睡眠の質が下がる」

という説明を見かけることがあります。

しかし、このように一つの原因だけで説明するのは慎重になった方がよいでしょう。

眠りにくさには、睡眠環境、生活時間、カフェインやアルコール、ストレス、睡眠障害など、さまざまな背景があります。

身体を整えることは選択肢の一つですが、それだけですべてが解決するわけではありません。

反対に、睡眠だけ整えれば身体の不調がなくなるとも限りません。

身体は、一つの要因だけで動いているわけではないからです。

だからこそ、

「原因を一つ探す」

より、

「最近、自分の身体にはどんな負担が重なっているだろう」

と考えてみる方が役立つことがあります。

夏は「暑さを我慢して眠る」ことにも注意したい

暑い時期は、睡眠環境についても少し目を向けたいところです。

夜になっても室温が下がらず、寝苦しさで何度も目が覚めることがあります。

「冷房は身体によくないから」と我慢している方もいるかもしれません。

ただ、暑い環境そのものが睡眠を妨げることがあります。

厚生労働省の睡眠ガイドでも、夏季にはエアコンなどを使用して寝室を涼しく保つことが重要とされています。

もちろん、快適と感じる温度には個人差があります。

冷やせば冷やすほどよいわけでもありません。

大切なのは、

「何度に設定するべきか」

だけではなく、

暑さや寒さで途中で目が覚めていないか

という自分の感覚です。

同じように、光や音、寝具なども、「一般的に良いもの」を探すだけでなく、自分が休みやすい環境になっているかを見てみます。

夕方以降のカフェインも、少し振り返ってみる

コーヒーやお茶を楽しむこと自体が悪いわけではありません。

ただ、カフェインには覚醒作用があります。

厚生労働省の睡眠ガイドでは、夕方以降のカフェイン摂取を控えることが勧められています。

「眠れないからコーヒーを完全にやめる」

と極端に考える必要はありません。

たとえば、

「夕食後にも毎日コーヒーを飲んでいたな」

「夕方になると眠気覚ましにエナジードリンクを飲んでいるな」

と気づいたら、少し時間を早められないか考えてみる。

そんな小さな見直しでもよいでしょう。

睡眠を良くすること自体を、新しい宿題にしない

健康について調べていると、やるべきことがどんどん増えていきます。

毎日運動する。

食事を整える。

姿勢を良くする。

早く寝る。

スマートフォンを見ない。

7時間以上寝る。

そうしているうちに、

「きちんと眠らなければ」

ということまで、新しいプレッシャーになってしまうことがあります。

睡眠も100点を目指さなくて大丈夫です。

まずは明日の朝、

「今日は少し休めた感じがするかな」

と振り返ってみる。

もし最近あまり休めた感じがないのであれば、

睡眠時間は足りているだろうか。

夜中に暑さで目が覚めていないだろうか。

夕方以降にカフェインを摂ることが増えていないだろうか。

日中ずっと座ったままになっていないだろうか。

身体のつらさで眠りにくくなっていないだろうか。

一つずつ見ていけば十分です。

「寝ても疲れが取れない」が続くときは、生活習慣だけと決めつけない

睡眠休養感が低いからといって、必ず病気があるわけではありません。

一方で、「生活習慣を整えれば何とかなる」と決めつけないことも大切です。

十分な睡眠時間を確保しているのに強い眠気が続く。

大きないびきや睡眠中の呼吸停止を指摘される。

眠れない状態が長く続いている。

朝起きても強い疲労感が続き、日常生活に影響している。

こうした場合には、睡眠時無呼吸症候群をはじめとした睡眠障害や、別の体調変化が背景にある可能性もあります。

厚生労働省の睡眠ガイドでも、睡眠の不調や睡眠休養感の低下が続く場合には、生活習慣だけでなく病気が潜んでいる可能性にも留意するよう示されています。

気になる状態が続くときには、自己判断だけで抱え込まず、医療機関へ相談することも一つの選択肢です。

## 「何時間寝たか」と一緒に、「どう目覚めたか」も見てみる

睡眠時間は分かりやすい数字です。

6時間。

7時間。

8時間。

だからこそ、ついその数字だけを比べたくなります。

けれど、必要な睡眠時間には個人差があります。

誰かが短い睡眠時間で元気だからといって、自分も同じようにする必要はありません。

反対に、数字として十分な時間を寝ているからといって、それだけで身体が十分に休めているとも限りません。

「何時間寝たか」と一緒に、

「今朝、自分の身体は休めたと感じているだろうか」

にも目を向けてみる。

そして睡眠だけを切り離すのではなく、

日中どのくらい身体を使ったか。

長時間同じ姿勢が続いていなかったか。

肩や腰など気になるところはなかったか。

一日の終わりまで緊張した状態が続いていなかったか。

そんなところまで少し広げて振り返ってみます。

身体は、起きている時間と眠っている時間で別々になるわけではありません。

日中の活動と夜の休息は、一日の中でつながっています。

「もっと良い睡眠をとらなければ」と頑張るのではなく、まずは自分がどのように一日を過ごし、どのように朝を迎えているかに気づいてみる。

睡眠の質を考えることは、自分の身体の状態を少し丁寧に知るきっかけにもなりそうです。

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小木曽信裕
専門家

小木曽信裕(理学療法士)

THYME Physical Coorditioning Academy(たいむフィジカルコーディショニングアカデミー)

理学療法士に直接相談ができ、機能改善の施術と健康維持のためのエクササイズをワンストップで実現。体や健康についての正しい知識の提供を重視する独自の理念「ラーニングリハビリ」をサポート。

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