暑い時の水分補給には何が良いのか?
糖尿病とがんの間になんらかの関係があることは近年ほぼ疑いのない事実となったが,それに対してどう対応すべきかについては,まだほとんど手付かずの検討課題として残されている。糖尿病医学の進歩により,糖尿病患者が心血管疾患や腎障害によって死亡する割合は年々減少している。代わって右肩上がりに増加しているのががんによる死亡だ。1990年代のわが国の糖尿病患者の死因第1位はがん(34.1%)であり,糖尿病患者にとって糖尿病がありながらがんの治療を受けることは現実の問題となってきている。
糖尿病患者では全がんリスクが約1.2倍,肝がんリスクが1.97倍,膵がんリスクが1.85倍,大腸がんリスクが1.40倍に有意に上昇すると結論付けている。「喫煙が全がんを増やすリスクはおよそ1.6倍,たばこが肺がんを増やすリスクは4.5倍とされる。それに比較すれば糖尿病ががんに及ぼすリスクは大きくないが,確かに存在するとはいえるだろう」と糖尿病研究者は述べている。
糖尿病とがんの関連について読み解く場合は,共通の危険因子(高齢,男性,肥満,不健康な食事,運動不足,喫煙,飲酒過多)に注意する必要がある。今年報告された研究では,肥満した糖尿病患者におけるがん死亡リスクを検討した結果,糖尿病患者の体格指数(BMI)とがん死亡リスクにはJカーブ現象があること,ただし喫煙歴がない患者ではJカーブではなく,BMIが高いほど死亡リスクが上昇する直線の関係が見られることが明らかにされた。
糖尿病によるがんリスク上昇の機序には,インスリン抵抗性とその結果としての高インスリン血症,さらに高血糖による酸化ストレスの関与が指摘されている。インスリン抵抗性が生じると,肝臓や脂肪,筋肉といった組織ではインスリンによるシグナル伝達効率が低下するが,それ以外の細胞ではアポトーシス(細胞死)の低下や細胞増殖を促すシグナルが過剰に伝達される可能性がある。高インスリン血症はインスリン様成長因子の活性も亢進させ,やはり細胞増殖を進展させることになる。