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糖尿病に肥満パラドックスは存在しない?

佐藤浩明

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 肥満は一般には予後が悪く,かつ心不全や末期腎不全の危険因子となる。しかし,ひとたび心不全や末期腎不全を発症した患者では肥満を合併していた方が予後が良い。こうした一見矛盾した現象を肥満パラドックスと呼ぶ。以前から糖尿病患者でも肥満パラドックスが存在する可能性のある論文が紹介されていたが、このたび,糖尿病においては肥満パラドックスは存在しないとするデータが報告されましたのでご紹介します。
 本研究は,米国の有名な研究の中で,新たに糖尿病を発症した人を別に登録し,その後の平均15.8年間の経過観察の中で生じた死亡と,登録時のBMIとの関係性を見たものである。また,糖尿病の合併症としての死亡に限定して検討するために,喫煙者や早期死亡者を除外した解析もしている。
 その結果,年齢などで調整した死亡率の危険率を体格指数(BMI) 22.5~24.9を基準として表すとJ字型の関係性が示されており,これは男性、女性いずれで分けても,また喫煙者を除外しても同様であった。
 一見,今回の報告は以前に報告されていたものと異なる結果を示しているように思われる。以前の報告は糖尿病発症者は2,625人であるが,今回の方が糖尿病発症者は1万1,427人であるから,規模としては今回の研究の方が大きい。すなわち,以前の研究では449人の糖尿病患者の死亡で検討しなくてはならなかったので,体格指数(BMI)の群別が正常体重と25.0~(過体重・肥満)の2群でしかなかったのである。今回の検討では,正常体重者をBMI 18.5~22.4と22.5~24.9に分け,BMI 22.5~24.9を基準にして他のBMI群での死亡率の危険率を見ている。
 そして,今回の検討でも,BMI 18.5~22.4のやせ群はBMI 30.0~34.9の肥満群に匹敵する死亡率となっており,この集団が以前の研究においても正常体重群の死亡率を押し上げていた可能性が高い。しかし,このBMI 18.5~22.4の群における死亡率の高さは喫煙者と早期死亡者を除外すると消失した。よって,喫煙経験がなく,現時点でなんらかの(がんや結核のような)致死的な消耗性の疾患を有していなければ,糖尿病発症時の正常体重は特に問題にならないといえよう。

 *この報告は北里研究所病院糖尿病センター 山田悟先生の文章を抜粋し、簡略化しております。

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佐藤浩明
専門家

佐藤浩明(内科医)

さとうクリニック内科・消化器科

患者さんに寄り添う医療体制で、「経鼻内視鏡検査」に取り組み、内科・消化器疾患の徹底した検査と治療を行います。信条の「人と、地域と向き合う医療」という姿勢を守り、より高い専門性をもって地域に貢献します。

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