暑い時の水分補給には何が良いのか?
米飯を食べてから魚や肉を食べる場合に比べ,魚や肉を食べてから米飯を食べる方が,食後の血糖上昇が有意に抑制されることを,関西電力病院の研究者が報告しました。同氏はそのメカニズムについても検討し,血糖降下作用を持つ2種類の消化管ホルモンが関わっているとした。
同氏らの研究で,魚類に含まれるなんらかの栄養素が消化管ホルモン分泌を促進する可能性が示された。同氏は,これを食事療法に応用できないかと考え,食べる順番について検討した。糖尿病患者に2日間の食事負荷試験を実施。1日目は先に魚を,15分後に米飯を食べてもらう。2日目は米飯→魚の順に喫食。結果,「米飯が先」に比べ「魚が先」の方が,食後の血糖上昇は有意に抑制され,同ホルモン分泌は有意に増加した。
それでは,肉ではどうか。エネルギー量および栄養素比率を魚と同等にした肉を使用して,同様の食事負荷試験を行ったところ,やはり「米飯が先」に比べ「肉が先」の方が食後の血糖上昇が有意に抑制されていた。
使用した魚(サバの水煮)と肉(牛ロース)の成分解析の結果,各アミノ酸の含有量に魚と肉で大きな差はなかった。肉ではホルモン分泌を促進する飽和脂肪酸のパルミチン酸やステアリン酸,一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が多く,対して魚はGIP分泌に影響の少ないエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に富むことが分かった。
以上をまとめると,米飯を喫食する前に魚または肉を摂取することで,食後の血糖上昇は有意に抑制される。魚・肉のいずれもホルモン分泌を促進するが,肉は他のホルモン濃度も上昇させる。矢部氏は「他のホルモンには脂肪蓄積作用があるため,肉を先にという食べ方を長期に続けていった場合,肥満を助長してしまう可能性がある」と指摘し,調理法についても考慮すべきとした。
最後に同氏は,食べる順番による食後血糖上昇抑制のメカニズムについて仮説を提示。まず野菜を食べると食物繊維が血糖上昇を抑える。続いて魚や肉を食べるとインクレチンが分泌され,膵臓でインスリン分泌の準備が整う。その状態で米飯などを取ると,タイミングよくインスリンが分泌され,血糖上昇が最大限に抑制できる。
同氏は「食事療法では摂取エネルギーやバランスに加え,食べる順番も重要。それを考えながら栄養指導を行っていく必要がある」と結んだ。