特殊加工のヘルプ(スライス)加工
「レンズは薄型レンズでお願いします」という要望をいただくことがあります。
そう言われると、最近は「薄型レンズ」という言葉も、一人歩きしているように感じます。
また、メガネを作る際に、「とにかく薄いレンズで」という方もおられます。
もちろん、レンズが薄くなることにはメリットがあります。
ただ、薄ければ薄いほど良いのでしょうか?
今回は、レンズの「厚さ」について考えてみたいと思います。
薄型レンズと屈折率
レンズの厚さを考えるときに、まず関係してくるのが「屈折率」です。
屈折率が高い素材ほど、同じ度数のレンズを比較した場合、薄く作りやすくなります。
メガネレンズでいうと、以前は屈折率1.50のレンズを「標準レンズ」、
1.60を「薄型レンズ」と呼ぶことが一般的でした。
ただ、現在では1.60のレンズも広く普及しており、
以前の「薄型レンズ」が、現在では標準的な選択肢の一つになっています。
そのため、「薄型レンズ」という言葉だけでは、
具体的にどの屈折率なのか分からない場合があります。
個人的には、
「1.60です」
「1.67です」
「1.74です」
というように、屈折率を数字で確認した方が分かりやすいと思います。
さらに薄いレンズ
1.60よりも高い屈折率のレンズもあります。
例えば、当店で使用しているレンズを大きく分けると、
1.60
1.67
1.74
といった屈折率があります。
メーカーによっては1.67ではなく1.70、1.74ではなく1.76などの屈折率もあります。
また、1.60より薄くできるレンズを「超薄型レンズ」などと呼んでいる場合もあります。
ただし、「薄型」「超薄型」といった呼び方には、
業界で統一された明確な基準があるわけではないと思います。
そのため、
「薄型レンズだから、どのくらい薄いのか?」
ではなく、
「屈折率はいくつなのか?」
と確認する方が、レンズの違いを理解しやすいと思います。
薄いレンズは軽い?
レンズ素材には、屈折率以外にもアッベ数など、さまざまな特性があります。
その中で、レンズの重さに関係するのが「比重」です。
「薄いレンズの方が軽くなりますよね?」
と聞かれることがありますが、これは必ずしもそうとは限りません。
一般的に、高屈折率のレンズ素材は、同じ体積で比較すると重くなる傾向があります。
そのため、「薄くなった分だけ、必ず軽くなる」とは言えません。
例えば、同じ大きさの板を作る場合、密度の高い素材ほど、同じ重さなら薄くできます。
レンズも同じように、薄さと重さは別々に考える必要があります。
ただし、プラス度数のレンズでは、
レンズの中心部分を薄くする
「ヘルプ加工」「スライス加工」「メッツ加工」などと呼ばれる加工があります。
こうした加工では、レンズの厚みそのものを減らすことで、
レンズ重量を軽くできる場合があります。
「少しでも軽い方が良い」という方の場合は、
単純に屈折率を上げるだけではなく、こうした加工について検討する方法もあります。
誰でも薄い方が良い?
個人的には、「薄い=良いレンズ」とは限らないと思っています。
例えば、度数が軽い場合は、もともとのレンズがそれほど厚くならないため、
高屈折率レンズに変更しても、価格に対する厚みの変化が小さい場合があります。
また、リムが厚い樹脂フレームなどでは、レンズの厚みがフレームに隠れるため、
薄くするメリットが小さくなる場合もあります。
一方で、ツーポイントフレームやハーフリムなどでは、レンズの厚みだけでなく、
レンズの強度や加工方法なども考える必要があります。
薄くしすぎることが、必ずしもメリットになるとは限りません。
さらに、フレームの大きさや形、PD(瞳孔間距離)などによっても、
仕上がりの厚さは変わってきます。
同じ度数であっても、大きなフレームと小さなフレームでは、
レンズの厚みが変わることがあります。
そのため、レンズの厚さは「度数」だけで決まるものではありません。
実際にレンズを加工してみないと正確な厚さが分からない場合もありますが、
フレームの形や大きさ、PD、度数などから、ある程度の厚さを予測することはできます。
「このフレームに、この度数なら、どのくらいの厚さになりますか?」
と、購入時に眼鏡店へ聞いてみるのも良いと思います。
また、レンズ素材によっては、アッベ数や色収差など、
薄さ以外にも考慮したい要素があります。
まとめ
現在では、屈折率1.60のレンズも、一般的な選択肢の一つになっています。
さらに薄くしたい場合には、1.67、1.74など、より高い屈折率のレンズを選ぶ方法があります。
ただし、「屈折率が高い=必ず軽い」ではありません。
また、「薄い=必ず良い」というわけでもありません。
度数が軽い方の場合、高屈折率にしても厚みの変化が小さいことがあります。
フレームによっては、薄くするメリットが小さい場合もあります。
逆に、強い度数の方や、フレームの形状によっては、
薄型レンズを選ぶメリットが大きくなる場合もあります。
つまり、レンズの厚さは、
「度数」「フレーム」「PD」「レンズ素材」「加工方法」など、
いくつもの要素から考える必要があります。
「とにかく一番薄いレンズで」と考えるのではなく、
「自分の場合は、どのくらい薄くする必要があるのか?」
を眼鏡店に相談してみると良いと思います。
薄くすること自体が目的なのではなく、その人にとって必要な薄さにする。
それも、メガネを作る上では大切な考え方だと思います。
次回は、「メガネを作る時、なぜ仕事や趣味を聞かれるの?」について。


