第6回 お客様は「待っていても来ない」 ~売る前に考えたい「来店していただく理由」のつくり方~

「成功する店長と、成功しない店長の違いは何だろう。」
私は、16年間の店長経験の中で、何度もこのことを考えてきました。
売上を大きく伸ばす店長。
スタッフから信頼される店長。
お客様から支持される店長。
一方で、思うように成果が出ず、悩み続ける店長もいます。
では、成功する店長には、特別な才能があるのでしょうか。
私は、必ずしもそうではないと思っています。
なぜなら、私自身が決して優秀な店長ではなかったからです。
失敗もしました。
判断を間違えたこともあります。
スタッフとの関係に悩んだこともあります。
売上が伸びず、どうしたらよいのか分からなくなったこともありました。
それでも、店長という仕事を続けてきました。
そして今、振り返って思うことがあります。
「成功することよりも、学び続けることの方が大切なのではないか。」
今回は、第1章「店長という仕事」の締めくくりとして、私が大切にしてきた「継続する力」についてお話ししたいと思います。
成功は一瞬、継続は毎日の積み重ね
店舗運営では、時として大きな成功を経験することがあります。
売上目標を大幅に達成した。
新しいキャンペーンが大成功した。
前年を大きく上回る実績を残した。
もちろん、素晴らしいことです。
しかし、店長の仕事は、その日だけ成功すればよいわけではありません。
翌日もお店を開けなければなりません。
翌月も売上を確保しなければなりません。
翌年もお客様に来店していただかなければなりません。
つまり、店舗経営で求められるのは、一度の成功ではなく、成果を生み出し続けられる店舗をつくることなのです。
私は、これが店長という仕事の難しさであり、面白さでもあると思っています。
私は失敗から多くを学んできた
これまでモスバーガー、家電量販店、インターネットカフェなど、さまざまな業種の現場で仕事をしてきました。
業種が違えば、商品も違います。
お客様も違います。
働くスタッフも違います。
しかし、店長として求められる基本は、それほど変わりませんでした。
お客様に満足していただくこと。
スタッフが働きやすい環境をつくること。
売上と利益を確保すること。
そして、お店を成長させること。
言葉にすれば簡単です。
しかし、実際には思うようにいかないことばかりでした。
若い頃の私は、何か問題が起きると、その問題を早く解決することばかり考えていました。
しかし、経験を重ねるうちに、
「なぜ、その問題が起きたのか。」
「同じ失敗を繰り返さないためには、どうすればよいのか。」
と考えるようになりました。
失敗をなくすことは難しくても、失敗から学ぶことはできます。
失敗したことが問題なのではなく、失敗から何も学ばないことが問題なのです。
「当たり前のこと」を続ける難しさ
店長の仕事には、特別なことばかりが求められるわけではありません。
挨拶をする。
店内を清潔に保つ。
お客様の話を聞く。
スタッフに感謝を伝える。
売上を確認する。
問題があれば改善する。
どれも当たり前のことです。
しかし、この当たり前のことを、毎日続けるのは意外と難しいものです。
忙しいから。
人が足りないから。
売上が悪いから。
疲れているから。
理由はいくらでもあります。
私自身、忙しさを理由に、基本的なことがおろそかになってしまった経験があります。
しかし、どんなに忙しくても、基本を忘れてはいけません。
私は、「当たり前のことを、当たり前に続けられること」が、店長にとって大きな力になると考えています。
店長は完成する仕事ではない
16年間店長を務めたからといって、私は店長という仕事をすべて理解できたとは思っていません。
むしろ、経験を重ねるほど、
「まだまだ学ぶことがある。」
と感じるようになりました。
例えば、スタッフとのコミュニケーション。
同じ言葉を伝えても、相手によって受け取り方は違います。
同じ指導方法でも、うまくいく人とそうでない人がいます。
お客様への接客も同じです。
昨日うまくいった方法が、今日もうまくいくとは限りません。
だからこそ、学び続けなければならないのです。
店長とは、役職に就いた瞬間に完成するものではありません。
日々の経験を通して、少しずつ成長していく仕事なのです。
時代が変われば、店長も変わらなければならない
私が店長をしていた頃と現在では、店舗を取り巻く環境も大きく変わりました。
インターネット通販の普及。
スマートフォンの普及。
SNSによる情報発信。
キャッシュレス決済
そして、生成AIの登場。
お客様の購買行動も、店舗の運営方法も変化しています。
以前の成功体験だけに頼っていては、これからの時代に対応できなくなるかもしれません。
だからこそ、私は65歳になった今でも、新しい技術を学び続けています。
生成AI。
ICT。
プログラミング。
これまで経験してこなかった分野にも挑戦しています。
もちろん、簡単なことばかりではありません。
分からないこともあります。
何度もやり直すこともあります。
しかし、そこで諦めてしまえば、それ以上の成長はありません。
これは店長の仕事も同じです。
過去の経験を大切にしながら、新しいことを学び続ける。
その姿勢こそ、これからのリーダーに必要なのではないでしょうか。
継続とは、同じことを繰り返すことではない
ここで、一つ大切なことがあります。
私は「継続が大切」とお話ししていますが、決して同じことを繰り返せばよいと言っているわけではありません。
成果が出ない方法を、何も考えずに続けても意味がありません。
大切なのは、
実行する。振り返る。改善する。そして、また実行する。
この繰り返しです。
例えば、売上を伸ばすために新しい販促を実施したとします。
思ったほど成果が出なかった。
そこで終わらせるのではなく、
「何が悪かったのか。」
「お客様の反応はどうだったのか。」
「次は何を変えるべきか。」
と考える。
そして、改善して再び挑戦する。
これは、マネジメントの基本であるPDCAサイクルにも通じる考え方です。
継続とは、ただ続けることではありません。
改善しながら続けることです。
店長の成長が、お店の成長につながる
私は、店舗運営において一つの考えを大切にしています。
それは、
「店長が変われば、お店が変わる。」
ということです。
店長が挨拶を変える。
スタッフの接し方を変える。
数字の見方を変える。
お客様への考え方を変える。
すると、少しずつスタッフの行動も変わっていきます。
そして、お店の雰囲気も変わっていきます。
もちろん、店長一人の力でお店が変わるわけではありません。
スタッフ一人ひとりの協力が必要です。
しかし、そのきっかけをつくることは、店長にもできるはずです。
だからこそ、私は店長自身が学び続けることを大切にしてほしいと思っています。
今日からできる実践ポイント
・一日の終わりに、良かったことと改善すべきことを一つずつ振り返る。
・失敗を責めるのではなく、次に生かす方法を考える。
・挨拶、清掃、接客など、基本的なことを継続する。
・過去の成功体験だけに頼らず、新しい知識を学ぶ。
・成果が出ない時は、やり方を変えて再挑戦する。
・店長自身が成長する姿をスタッフに見せる。
第1章「店長という仕事」を終えて
今回で、100回連載の第1章「店長という仕事」が終了します。
これまで9回にわたり、店長の役割についてお話ししてきました。
第1回では、店長の使命は「利益をつくること」だとお伝えしました。
第2回では、売上が良い時こそ、その理由を分析することの大切さ。
第3回では、言葉より行動で示す率先垂範。
第4回では、スタッフが辞めない職場づくり。
第5回では、データを活用したマネジメント。
第6回では、お客様に来店していただく理由づくり。
第7回では、リアルマーケティングの重要性。
第8回では、スタッフを動かすリーダーの言葉力。
そして第9回では、生成AIを活用した新しいマネジメントについて考えてきました。
どのテーマにも共通していることがあります。
それは、店長自身が考え、行動し、学び続けることです。
店長に必要なのは、特別な才能だけではありません。
昨日より今日。
今日より明日。
少しずつでも成長しようとする姿勢です。
私は、16年間の店長経験の中で、多くの失敗をしてきました。
決して自慢できることばかりではありません。
しかし、その失敗があったからこそ、今の自分があると思っています。
そして65歳になった今でも、まだまだ学びたいことがあります。
まだまだ挑戦したいことがあります。
成功は一つの結果にすぎません。大切なのは、成功しても失敗しても、そこから学び、次へ進み続けることです。
これが、第1章の最後に、私からお伝えしたいことです。
第11回からは、新たに第2章「店長の心得」が始まります。
店長になったら、まず何をするべきなのか。
店長として、どのような心構えが必要なのか。
責任とは何か。
信頼とは何か。
これまでの経験を振り返りながら、店長という仕事の本質をさらに掘り下げていきたいと思います。
次回、第11回は、
「店長になったら最初にやるべきこと」
をテーマにお話しします。
新しく店長になった方にも、すでに店長として活躍されている方にも、改めて考えていただきたい内容です。
引き続き、お付き合いいただければ幸いです。
本連載について
本連載は、私の著書『新米店長の道しるべ―16年の失敗と成功から学ぶ』をベースに、現場で新たに得た経験や生成AI時代のマネジメント・マーケティングの視点を加えながら再構成しています。20年以上にわたる店舗運営の経験が、店長やリーダー、経営者の皆さまの実践に少しでもお役に立てれば幸いです。
著書紹介
『新米店長の道しるべ―16年の失敗と成功から学ぶ』では、20年以上の店舗運営と16年間の店長経験をもとに、現場で培ったマネジメントやマーケティングの考え方を実例とともに紹介しています。理論だけではなく、実際の失敗や成功から得た「現場で使える知恵」をまとめた一冊です。
新米店長の道しるべ16年の失敗と成功から学ぶ
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https://mbp-japan.com/fukuoka/cncconsultingpro/service1/
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