第2回 なぜ売上が良い時こそ分析すべきなのか ~成功を偶然で終わらせない店長になる~

Instagram、X、TikTok、LINE、ホームページ……。
今、店舗の集客を考えるとき、SNSやWebを抜きにして考えることは難しくなりました。
「これからはSNSをやらないと集客できない。」
「フォロワーを増やさなければ。」
そんな言葉を耳にすることもあります。
確かにSNSは便利です。
私自身も現在、インターネットや生成AIを仕事に活用していますし、デジタルを否定するつもりはまったくありません。
しかし、20年以上店舗の現場に立ってきた私は、こんな時代だからこそ、店長には忘れてほしくないことがあります。
それが、
「リアルマーケティング」です。
SNSでお客様に店を知っていただくことはできます。
しかし、最終的にお客様が、
「また、この店に来たい。」
と思うかどうかを決めるのは、画面の中ではありません。
実際に店を訪れた時の体験です。
フォロワーが増えることと、売上が増えることは同じではない
SNSを始めると、どうしても数字が気になります。
・フォロワー数。
・「いいね」の数。
・閲覧数。
・再生回数。
数字が増えれば嬉しいものです。
しかし店長として、一度考えてみてほしいのです。
「その数字は、お店の目的につながっているだろうか?」
フォロワーが1万人いても、誰も来店しなければ店舗の売上にはつながりません。
反対にフォロワーが100人しかいなくても、その中から毎月何人ものお客様が来店してくださるのであれば、店舗にとって大きな価値があります。
SNSを使う目的は、SNSで人気者になることではありません。
店舗であれば、
お客様との接点をつくり、来店していただき、満足していただき、また来ていただくこと。
ここを見失ってはいけないと思います。
リアルマーケティングとは何か
私が考えるリアルマーケティングとは、単にチラシを配ったり、イベントを開催したりすることだけではありません。
お客様と実際に接する中で行われる、さまざまな働きかけです。
例えば、
・「いらっしゃいませ」と笑顔で迎える。
・商品を探しているお客様に声を掛ける。
・名前を覚える。
・以前購入された商品のことを覚えている。
・「その後、いかがですか?」と声を掛ける。
・話を最後まで聞く。
・帰られる時に「ありがとうございました。またお待ちしています」と伝える。
どれも特別なことではありません。
しかし、こうした小さな接点の積み重ねが、
「この店は感じがいい。」
「また、あの人から買いたい。」
という気持ちにつながっていきます。
これこそ、リアル店舗が持っている大きな武器です。
商品ではなく「人」が来店動機になる
長く店舗運営に携わっていると、とても嬉しい言葉を聞くことがあります。
「○○さん、いますか?」
お客様がスタッフを名前で訪ねてくださる。
これは、店舗にとって非常に大きな価値です。
最初は商品を目的に来店されたお客様が、やがて、
「あの人に相談したい。」
「あの人から買いたい。」
という理由で来店してくださるようになる。
商品は他のお店でも買えるかもしれません。
価格もインターネットの方が安い場合があります。
それでも、その店へ来てくださる。
そこには、価格だけでは比較できない「人の価値」があります。
私はこれこそが、リアル店舗のマーケティングにおける最大の強みの一つだと考えています。
私は今も家電販売の現場で感じています
現在も私は、家電量販店の現場でお客様に商品をご案内する機会があります。
お客様は、最初から購入する商品を決めているとは限りません。
「どれがいいの?」
「この二つは何が違うの?」
「私にはどちらが合っている?」
こうした疑問を持って来店される方がたくさんいらっしゃいます。
そこで必要なのは、一方的な商品説明ではありません。
・家族構成。
・使用環境。
・現在使っている商品。
・困っていること。
・予算。
こうした話を聞きながら、その方に合った商品を一緒に考えていく。
すると最後に、
「聞いて良かった。」
「分かりやすかった。」
と言っていただけることがあります。
私は、この瞬間にリアル店舗の価値があると思っています。
インターネットには膨大な情報があります。
生成AIに質問すれば、商品の違いを調べることもできます。
しかし、
目の前のお客様の表情を見ながら、その方が本当に必要としているものを一緒に考える。
これはリアルな接客だからこそ生み出せる価値です。
SNSを否定する必要はない
ここまで読むと、
「SNSは必要ないと言っているの?」
と思われるかもしれません。
そうではありません。
むしろ私は、SNSやWebは積極的に活用すべきだと考えています。
ただし、
デジタルか、リアルか。
という二者択一にしないことが重要です。
例えば、
SNSで商品を知ってもらう。
↓
店舗へ来ていただく。
↓
スタッフが丁寧に接客する。
↓
満足して購入していただく。
↓
LINEなどで次の情報を届ける。
↓
再び来店していただく。
このように考えれば、デジタルとリアルは競争相手ではありません。
お互いを補完する関係です。
私はこれを、デジタルとリアルを組み合わせたハイブリッドなマーケティングとして考えています。
SNSに力を入れる前に、店内を見てほしい
店長には、ぜひ一度確認してほしいことがあります。
・SNSに掲載する写真はきれいなのに、実際の店内は汚れていないでしょうか。
・SNSでは笑顔なのに、来店されたお客様への挨拶ができていないことはないでしょうか。
・「お気軽にご相談ください」と投稿しているのに、お客様がスタッフへ話しかけにくい雰囲気になっていないでしょうか。
SNSでどれだけ素晴らしい情報を発信しても、来店後の体験が悪ければ次にはつながりません。
だから私は、
SNSを磨く前に、まず現場を磨く。
この順番が大切だと思っています。
口コミは最強のリアルマーケティング
良い接客を受けたお客様は、誰かに話してくださることがあります。
「あのお店、良かったよ。」
「店員さんが親切だったよ。」
「詳しく説明してくれたよ。」
この一言は、企業が発信する広告とは違います。
実際に利用した人からの言葉だからこそ、強い説得力があります。
そして今は、そのリアルな口コミがGoogleのクチコミやSNSを通じて、再びデジタルへ広がっていきます。
つまり、
リアルがデジタルを生み、デジタルがリアルへの来店を生む。
この循環をつくることが、これからの店舗マーケティングでは重要になってくると私は考えています。
今日からできる実践ポイント
・SNSのフォロワー数だけを成果にしない。
・「また来たい」と思っていただける店内体験を考える。
・お客様との小さな会話を大切にする。
・「○○さんに相談したい」と言われるスタッフを育てる。
・SNSとリアル店舗を別々に考えず、一つの流れとして設計する。
・SNSで発信する前に、実際の売り場や接客を確認する。
時代はこれからも変わっていきます。
SNSも進化します。
生成AIもさらに身近になっていくでしょう。
しかし、店舗という場所には変わらない強みがあります。
それは、
人と人が直接出会えることです。
・目を見て話す。
・話を聞く。
・笑顔になる。
・「ありがとう」と言っていただく。
こうしたリアルな体験を大切にしながら、デジタルの力も上手に取り入れていく。
私はそれが、これからの店長に必要なマーケティングだと考えています。
デジタルで知ってもらい、リアルで好きになってもらう。
この二つをつなぐことができれば、店舗はまだまだ強くなれるはずです。
次回、第8回は、
「スタッフを動かすリーダーの言葉力」
をテーマにお話しします。
同じことを伝えているのに、人が動く店長と動かない店長がいるのはなぜなのか。
「言った」ではなく「伝わった」を大切にする、現場のコミュニケーションについて考えていきます。
本連載について
本連載は、私の著書『新米店長の道しるべ―16年の失敗と成功から学ぶ』をベースに、現場で新たに得た経験や生成AI時代のマネジメント・マーケティングの視点を加えながら再構成しています。20年以上にわたる店舗運営の経験が、店長やリーダー、経営者の皆さまの実践に少しでもお役に立てれば幸いです。
著書紹介
『新米店長の道しるべ―16年の失敗と成功から学ぶ』では、20年以上の店舗運営と16年間の店長経験をもとに、現場で培ったマネジメントやマーケティングの考え方を実例とともに紹介しています。理論だけではなく、実際の失敗や成功から得た「現場で使える知恵」をまとめた一冊です。
新米店長の道しるべ16年の失敗と成功から学ぶ
■ すべてのコラムはこちら
https://mbp-japan.com/fukuoka/cncconsultingpro/service1/
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