伝え方が空気を変える:職場コミュニケーション

鎌田千穂

鎌田千穂

テーマ:心のあり方のヒント

サウナ猫

そのひと言は相手にどう届いていますか?

この業務、お願いできますか?
今日の資料、仕上がっていますか?

日々交わされる何気ない言葉。

ですが、その響き方ひとつで、受け手の気持ちや場の空気が大きく揺れることがあります。
“言葉の中身”よりも、“どう置かれているか”…。

そのニュアンスこそが、職場の温度や人間関係を形づくっていくもの。
そんな視点から、私は「伝えることの余白」について、改めて考えています。

1. 伝え方の違いが、人間関係の温度を左右する

職場での言い回しは、一見ささいに思えても、影響力は大きいものです。

ちょっとお願いできますか?
〇〇してくれると助かる。
〇〇さんなら安心です。

どれも内容は似ていても、声のトーンや文脈によって、受け取り方はまるで違います。

気持ちの余白があるかどうか。
それが協力や信頼につながるか。
摩擦や距離になるかを決定づけるのです。

2. 言葉には“安心の余白”が必要

産業カウンセラーの立場から言えば、
「どう言われたか」より「どう感じたか」が、人の心に深く残ります。

言葉に余白があることで、人は自分で動ける余地を持つ。
その余地は、選択の自由であり、関係性の柔らかさでもあります。

たとえば——

〇〇してください → 圧や義務の印象
〇〇していただけると嬉しいです → 信頼とゆだね
どうしましょうか? → 対話への誘い

…ただし、すべての人がその余白を受け止めるわけではありません。

丁寧に言葉を選んでたとしても、
不満だけはしっかり受け止める
という方もいます。

こちらが意図を込めても、その文言だけを切り取り、
その言い方が気に食わない
と述べる声も。

まるで、自分に届くまでの“余白”を一切受け取らずに、ただ言葉のラベルを見て選別しているような光景です。

それでも私は、“余白を添えて伝える”選択をやめません。
なぜなら、それを受け止められる人との対話には、静かな信頼が生まれるからです。

3. 伝え方は、文化を育てる土壌

言い回しのクセや雰囲気は、個人の特徴であると同時に、組織文化の反映でもあります。

- 丁寧すぎると遠慮が生まれる
- 強めの言い方が“普通”になる
- 思いやりのつもりが“押しつけ”になる

こうした「言葉の習慣」は職場の空気をじわじわ染め上げます。

だからこそ、言葉の置き方に気を配ること。
そのことが、職場文化の土を耕すことにつながるものだなぁと感じています。

まとめ:言葉に心の距離を整える力を育む

伝え方は、ただの技術ではなく、関係性を編む繊維のようなもの。

業務を進めるための言葉であっても、その背景にある想いは、受け手に伝わります。
時には、丁寧に伝えたつもりの言葉が疎まれることもある。

ですが、ひるむことなく選び続ける。
そのことで、じんわりと信頼は築かれていく。

言葉に余白を添えることは、“関係を大切にする意志の表現”。
その意志を大切にしたいから、今日も私は伝え方に時間をかけます。
たとえ、誰かがその余白を見ず、文句だけを選んでいたとしても。

次回は、

Vol.4|ことばが触れる場所:感情の通訳としての表現を考える。
感情を言葉にしたとき、何が届き、何がこぼれるのか。
表しきれなさの中にある、優しさや誤解の余地について、静かに向き合ってみたいと思います。

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鎌田千穂
専門家

鎌田千穂(産業カウンセラー)

Chi-ho’s studio

組織課題を広い視野で捉え、主体性を持った思考と行動力、公私の均衡を図る自律型人材育成を行うこと。分析・統計による業務改善の解決策を示し、個人の悩みを解き放ち、企業の繁栄に繋げることが専門です。

鎌田千穂プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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