トップ営業の「暗黙知」を分解し、チーム全体の営業力を底上げする

なぜ、あの人の営業だけが上手くいくのか？

～属人化をなくし「チームで売る」ための「営業の型」の作り方～

「うちのエースはすごいが、彼がいないと売上が立たない…」
「トップ営業のやり方を真似させようとしても、なぜか他のメンバーは成果が出ない…」

営業マネージャーとして、このような「属人化」の問題に頭を悩ませていませんか？ 特定のスタープレイヤーに依存する組織は、その人が異動や退職をした瞬間に、一気に崩壊するリスクを常に抱えています。

多くの組織が陥る間違いは、トップ営業の成果を「あの人はセンスがあるから」「コミュニケーション能力が高いから」といった、個人の才能や資質の問題として片付けてしまうことです。

しかし、本当にそうでしょうか？

苦しんでいた時期

かつての私も、営業成績が上がらずに苦しんでいた時期があります。当時のトップ営業の先輩は、いつも楽しそうに、そして圧倒的な成果を上げていました。私は彼を「天才」だと思っていました。

しかし、ある時彼がこう言ったのです。

「俺は感覚で話しているように見えるかもしれないけど、実は頭の中には『勝ちパターン』の地図があるんだ。」

彼は、「じつは、この質問をしたら、次はこれを聞く。この反応が来たら、この資料を見せる。
全部、型にはまってるんだよ」


衝撃でした。彼が持っていたのは、曖.昧な「センス」ではなく、再現可能な「技術（仕組み）」だったのです。

この経験から、私がコンサルタントとして提唱しているのが、
トップ営業の「暗黙知」を、誰もが実践できる「形式知（＝営業の型）」に変えるアプローチです。

【なぜ「見て学べ」ではダメなのか？】

トップ営業の商談に若手を同席させるだけでは、彼らは「すごいな」と思うだけで、何をどう真似すればいいのか分かりません。それは、名画をただ眺めているのと同じです。画家の筆の動かし方、色の混ぜ方まで分解して教えなければ、誰も同じ絵は描けません。

【「営業の型」を作る3つのステップ】

1. 商談プロセスの「分解」
　　トップ営業が行っている商談を、「アプローチ→ヒアリング→提案→クロージング→フォローアップ」といったフェーズに分解します。
　　さらに、各フェーズでの具体的なアクションやトークを洗い出します。


2. 「ツール」への落とし込み
　　分解した要素を、具体的なツールに落とし込みます。
・ヒアリングシート
　　これさえ聞けば顧客の課題の本質に迫れる、という質問項目をまとめたシート。
　　新人でもベテランと同じレベルのヒアリングが可能になります。

・提案書テンプレート
　　自己満足のスペック羅列ではなく、顧客の「未来」を描くストーリー型のテンプレート。
　　誰が作っても心を動かす提案書が作れます。

・ カウンター（切り返し）トーク集
　　「検討します」「価格が高い」といった定番の断り文句に対する、効果的な切り返しトークをデータベース化。
　　経験の浅い営業担当者の不安を解消します。



3.「ケーススタディ会議」での共有
　ツールをただ配布するだけでは定着しません。重要なのは、ロープレのような「個人の発表会」ではなく、実際の成功事例や失敗事例（特に失注事例）を基に、「なぜ上手くいったのか」「次はどうすればいいか」をチーム全員で議論する「作戦会議」を行うことです。失敗は個人の責任ではなく、チーム全体の「資産」として次に活かす。
この文化が、型を陳腐化させず、常にアップデートしていく力になります。

営業の楽しさが失われる？

「型にはめると、営業の楽しさが失われる」と考える人もいるかもしれません。しかし、逆です。空手の「型」を知っているからこそ、自由な組手ができるように、「守るべき型」があるからこそ、営業担当者は安心して挑戦し、自分なりの「型破り」な工夫を凝らすことができるのです。