不安を落ち着かせる行動が、なぜ逆に不安になるのか

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:働く人のメンタルヘルス対策

不安を落ち着かせる行動が、なぜ逆に不安になるのか

不安を落ち着かせたいのに、なぜか逆に強くなってしまう。
そんな経験はありませんか?

「ちゃんとしなきゃ」「失敗しないように」と考えるほど、未来が怖くなり、頭の中が止まらなくなる。
実はそれ、不安への向き合い方が少しズレているだけかもしれません。

この記事では、不安が強まる理由と、無理に消そうとしなくても自然と落ち着いていく考え方をお伝えします。


1.未来に対する不安を落ち着かせられなくなるのはどんなときか


不安感、いやですよね。
小さくても落ち着かないし、強まれば夜も眠れなくなる。
抑えようとすればするほど強くなる。分かってるけど放置も出来ない。

不安とは、まだ来ていない未来に対して心配したり緊張感が高まってメンタルが不安定になる状態です。
予測できないことで、「もしも~~になったら」という思いが膨らみ続けます。

本来人は、安心感を得られることで自由に活動が出来ます。
例えばボウルビィの「アタッチメント理論」で有名な「安全基地」という存在があるからこそ、子どもは探索行動とその範囲を広げることが出来、外の世界で仲間を作ったり挑戦することが出来ます。安心感を得られる場所が明確だからです。

不安はその反対ですね。だからどうにかして抑えつけようとします。

未来は当然「未知」です。何が起こるか分からなくて当たり前だし、分からないことが怖いのも当たり前です。
なのに、どうにかして抑え込もうと躍起になってしまうとき、もう一つ要素が絡んできます。

それは「ちゃんと対処しなければいけない」という思い込みと、それを後押しする責任感が高まっている時です。

≪おすすめコラム≫不安になりやすいのはどうして?
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2.不安を落ち着かせようとするとき、人はどんな行動をとるのか


不安を落ち着かせようとするとき、人は「ちゃんとやろう」とします。

不安だけど、どうなるか分からないし、その時どうすればいいのか確かな方法はわからない。だけど「ミスなく、完璧に、間違えないように」。

こう思うことが未来への不安をどんどん増幅していきます。
その対策として、分からないこと・形になりきってない未来を、無理にでも「自分が対処できる形にしよう」とするのです。

例えばこんな体験をした方がいます。

30代になって初めて転職をし、明日が初出勤の日です。
中途採用であっても、初日は自己紹介とか諸々の説明で終わることがほとんどですよね。この方も事前に人事担当者からそう聞かされていました。
だけど「ちゃんと、しっかり、間違わずに」を意識すればするほど、明日が怖くなりました。

  • 忘れ物はないか
  • 服装は本当にあれでいいのか
  • 電車が遅延して遅刻したらどうしよう
  • もし上司が意地悪な人だったら…


早く眠らなければいけないのに眠れない。
すると「早く寝なきゃいけない」という思いが強まります。
もう日付も変わる時間なのに、ついお酒を飲んでしまいました。
それでも眠くならず、何とか眠れたのは夜中の3時近く。
3時間程度しか眠れないまま頭痛を抱えての初出勤となりました。

体調が悪いから説明もちゃんと理解できないし、書類を書き間違えてしまうし、1日が終わるころには疲労困憊でした。
「こんな会社でずっとやっていけるんだろうか……」
未来への不安はより一層高まってしまいました。

不安を消そうとして取った行動が、結果的に不安を裏付ける現実をつくってしまったのです。

3.不安を落ち着かせるために必要な「価値観」


不安を落ち着かせるテクニックはいくつもあります。
それはもちろん有効です。
ただ、それだけで不安感に対処しきれるか、というと難しい。
一旦は落ち着いたとしても不安に対する姿勢が変わってなければすぐまた再燃します。

不安は、消すものでも抑えつけるものでもありません。
向き合う感情なのです。
不安が

  • なにに対して掻き立てられたか
  • なぜ自分はそれに対して不安を感じたのか
  • 不安感は何を伝えようとしているのか


という問いに対して、自分の言葉で答えを出すことです。
それによって、結果として落ち着いていく、安心が戻ってくる。それが不安感の特徴です。

では、上記の質問にどうやって答えたらいいでしょうか。
それは自分自身の「価値観」にそって答えましょう。
価値観とは何か、は、難しく考える必要はありません。

  • 自分が大切にしているもの
  • どんな自分でありたいか


などです。

価値観に沿って先ほどの質問をもう一度振り返りましょう。

なにに対して掻き立てられたか
 →安心出来ている今の状態への変化の予兆
なぜ自分はそれに対して不安を感じたのか
 →大切な何かが損なわれるかもしれない、と想像した(安心、健康、財産、家族など)
不安感は何を伝えようとしているのか
 →自分が本当に守りたいものが何か、を浮かび上がらせた

ということではないでしょうか。

4.見方が変わると、不安は落ち着き分解される


価値観に照らし合わせて不安感と向き合うと、モヤモヤと不確かだった「不安」が具体的な形を取り始めます。

  • 不安ではない自分の本当の気持ち(○○を失うかも、と想像して怖かった)
  • それを実現しないために自分ができることはなにか
  • 自分だけで出来ないことはどう対処すればいいか


という行動の選択肢が自然と見えてきます。

すぐに直接的な行動を取れなかったとしてもいいのです。

  • 役に立ちそうな本を読む、動画を見る
  • 身近な人に話を聞いてもらう
  • 似た体験をした人はいないか調べる
  • 専門家に相談する


こうした情報収集も充分な「行動」です。

そして具体的な行動をとり始めると、不安は「課題」「目標」「タスク」に落とし込んでいくことができます。
ここまで来ると、あの「不安で動けない状態」からは抜け出しています。

もちろん、不安が完全になくなるわけではありません。
それでも、今の自分にできることが分かると、不安は確実に弱まっていきます。

そしてその感覚が、自分への信頼と、これからへの適応力につながっていきます。

5.まとめ:不安を落ち着かせるために本当に必要なこと


最初にお話ししたように、生きていく上で不安感をゼロにすることはできません。
なぜなら人は常に変化しますし、自分が変化すれば環境も状況も他者との関わりも変化するからです。

不安感を落ち着かせるために「不安をなくそう」とするのは、ひとりで素手で富士山を海に沈めようとするようなものです。どだい、無理なのです。

だからまずは、不安を感じたらそれを受け止める。
自分の価値観を基準に、不安がどこから来たのかを探る。
そしてその根本への対策となる行動をとり続ける。
それによって不安感は「感情」ではなく「行動目標」という形を取ってくれます。

日々、自分の役割や責任に向き合っているあなたなら、ここまで整理できれば、もう必要以上に振り回されることはありません。
あとは、小さくでも動いていくだけです。

その積み重ねが、不安に立ち止まらない自分をつくっていきます。

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西岡惠美子
専門家

西岡惠美子(カウンセラー)

惠然庵(けいぜんあん)

◆うつ病患者家族支援…うつになった家族を支えるご家族を支えます(家族側のカウンセリング・コーチング)◆自分軸構築コーチング…充実した人生の土台となる「自分軸」の構築をお手伝いします

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