適切な役割分担でストレス軽減!ロールクリアティの実践法

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:スキルアップ/キャリアアップ

適切な役割分担でストレス軽減!ロールクリアティの実践法

責任感に押しつぶされそうになったり、やらなければいけない役割でパンクしそうになったことはないでしょうか。
責任も役割も、抱え込もうと思えば無限に集めることが出来ます。
しかし、それを実践する自分には限界があります。
大きくてもバケツに無限に水を入れ続けることは出来ません。処理能力以上の役割が与えられれば溢れてしまいます。人間がキャパを超えると、うつ病や適応障害などを引き起こします。
自分の役割や責任範囲は適切に見極める必要があります。それが「ロールクリアティ」です。


1.ロールクリアティの重要性


①ロールクリアティとは


ロールクリアティとは、個人が自分の役割と責任を明確に理解している状態のことです。
ロールクリアティを実現していることにより、周囲から期待される行動や成果を性格に把握でき、適切に対応することが出来るようになります。
ロールクリアティが高いと、自身のメンタルや行動上の混乱やストレスが少なくなり、パフォーマンスが向上します。

②ロールクリアティの重要性 4点


まず先ほどお話したように、個人のパフォーマンスが向上します。
役割が明確になるため、自分の作業に集中することが出来ます。それによって精度や生産性が向上します。
また、不明確な役割認識によるミスや重複を避けることができます。

二つ目はストレスの軽減です。
自分の役割や責任範囲がはっきりすると、仕事や作業に対する不明確な部分が無くなるため、仕事に対する不安やストレスが軽くなります。
不明確ゆえに起きていた誤解や他者との対立が減り、人間関係が改善されます。

三つ目はモチベーションの向上です。
自分の役割を理解して目標に向かって取り組む体制が整うので、モチベーションが高まります。
役割や責任範囲が明確になることは自己効力感を高める効果もあり、また仕事や作業への満足度も向上します。

四つ目はコミュニケーションの質の向上です。
役割が明確になると、必要な情報の伝達がスムーズになります。
いつ・どこで・誰に・どんな情報が必要か、または自分が必要とするかがはっきりするからです。
報連相を実施するときにも、その相手が誰なのか、が明確なため、効率もあがります。



2.ロールクリアティを高めるステップ 5つ


①役割を定義する


自分と、そして一緒に作業やテーマに取り組むメンバーの役割を具体化します。
誤解を避けるため、紙やホワイトボードなどに書き出しながら認識合わせを行います。
そして全員が了承・理解出来た役割は文書などに残して後で見返すことが出来るようにします。

②役割同士のコミュニケーション


役割は決めることが目的ではありません。実際に決められた役割を実践してみると、認識や理解にずれがあったことが分かります。
初期の時点でコミュニケーションを取り、認識のズレを共有しましょう。

③役割の調整


各メンバーが自分に対する期待を理解し、その期待に応えるために具体的に何をすべきか、を考えて実践します。
②同様に実際にやってみると「あれ?」と思う場面が発生します。
それは作業単体であったり、期待されているものへの疑問だったりします。
メンバー個別で相談して調整するだけでなく、全員で集まって再調整する場を定期的に設けることも有益です。

④定期的なレビュー


定期的に個々の役割や責任を見直し、必要な調整を行います。
メンバーが当初割り振られた役割に適応しているか、を見直したり、現時点~将来的に必要と思われるサポートを出来る人が提供します。

⑤トレーニングとサポート


役割に必要なスキルや知識を習得するためのトレーニングを受ける場を用意しましょう。
元々持っていたスキルやリソースだけで、役割や任された責任を果たせるとは限りません。
実施状況に沿って、メンバーが役割を果たすためのリソースやサポートは何か、を、全員で考えて共有します。



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3.家庭でのロールクリアティ実践例


①事例:病気療養することになった家族の役割とサポートを割り振りを考える


現時点で必要な役割の一覧表を作成する

生活上の重要度をランク付けする

頻度・作業ボリュームを紙に書きだす

家族それぞれから、自分に出来るものはどれか意見を出してもらう

一覧表に新しい担当者を書き入れる

定期的な情報共有の場を設けるルールを作る(週1回○時~○時など)

役割・責任範囲は柔軟に調整する
最初に決めた内容を絶対固定と考えない

②役割の担当者が空白になったら?


例えば夫・父しか車を運転することが出来ない家族で、夫・父が怪我や病気により運転が難しくなったとします。

その場合は家族全員で代替方法を考えます。
自家用車の運転が出来ない=移動上の問題、と限定しないことがポイントです。

今まで車を使って移動していたのはどんな時・何が目的でしょう。
日用品の買い出しのためだとすると結構大きな問題です。週1回バスなどを使ってまとめ買いをして帰ってくる、一人では大変なので必ず2人以上で行く。
家族で旅行に行くときは必ず車を使っていた、という場合は、現時点では旅行自体が難しいでしょう。一旦「なし」とすることが可能です。
今保有している車がSUVやミニバンなど大きめの車であるため、他の免許を持っている家族が運転しづらい、ということもあります。その場合は話し合いをして誰でも運転出来る車に買い替えるという選択肢もあるでしょう。

もちろんバス、タクシーに置き換えたり、病院の通院なら送迎バスの活用に切り替えることも可能です。高齢者や身体障害者の場合は介護保険や居宅介護サービスで移動支援を受けるという方法もあります。

「必ず家族内で・今まで通りの生活をしなければならない」と思い込まないことが重要です。

4.ロールクリアティが不明確だとどうなるか


①抱え込みの発生


冒頭でもお話したように、不明確だと誰か特定のメンバーに負荷が偏ることが想定されます。
そして自ら手を挙げたことで「出来ない」「分からない」「困っている」「手伝って」が言えない人もいるでしょう。
キャパオーバー、適性が無かった、スキル不足などのまま継続し、役割や責任だけでなくそれを果たせないことにより起こった二次的な問題まで抱え込んでしまいます。

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②役割分担の偏り


分担が偏るということは、必要以上に抱え込む人もいれば、出来るけどやらない・割り振られない人も出てきます。
それによって不満を持つメンバーもいるでしょう。偏った状況が続くことでメンバー間の不和が生じます。
ロールクリアティ構築運用ルールの中にある「調整」「サポート」を行える状況ではなくなってしまいます。

③ストレスの増加


役割が不明確ということは、自分がになっている役割や責任が自分のキャパシティやスキル、もっと言うとストレングス(強み)を活かせない内容である可能性があります。
要するに「合ってない仕事をしている」状態になります。
背が高い人がしゃがみこんで小石を拾っているようなものです。その横で背が低い人が脚立を使って高い場所の枝を切っている。
お互いに無理をしている状態が続けば、ストレスが重なり、ストレングスが活かせないことで自己実現も出来ません。



5.すぐに取り掛かれるロールクリアティ対策


①自分の得意分野・ストレングスを明確にする


まずは自分が何を得意としていて、どんなことに経験が豊富で、他のひとより効率よくこなすことが出来るか、を知っておきましょう。
具体的な作業内容だけでなく、どんな環境だと集中しやすいか、とか、どんな人と一緒だとやりやすいか、または一人のほうが効率がいいのか、などを振り返ります。

②今抱えている作業・責任範囲を洗い出す


家庭・職場・その他集まりなどで自分が担当している作業や責任範囲を振り返ってみましょう。
特に家庭内での役割は「ずっとやって来たから」という理由で固定化されていることが多いです。
それが①のストレングスを活かせるものなら問題ないですが、もし他の家族が担当したほうがいい、またはそろそろ手放したい・辞めたいと思っていないかどうか、を見直しましょう。

③エコマップを作ってみる


エコマップとは、主に福祉の現場で活用しています。
対象者を中心として、その人を取り巻く人物・環境・要素を図化したものです。

「エコマップとは、援助者が、利用者を支援するために利用者、家族、社会資源の関係性を図にしたもの。生態地図ともいわれる。1975年にアン・ハートマン(Ann Hartman)が考案した。
主に介護、障害、医療、教育の分野で、支援記録を作成するために使われる」(wikipedia)


【書き方】

  1. 紙とペンを用意します。中心に「自分」を置きます
  2. 周囲に「毎日の生活」に登場する人物・場所・作業・役割・条件・環境を書き込みます
  3. 今自分がストレスに感じている問題に赤丸を付けます


これにより、自分が抱えている問題に誰が関わっているのか、その人とどんな調整がや相談が可能か、を考えやすくなります。



6.まとめ


①ロールクリアティの重要性は、パフォーマンス向上・ストレス軽減・モチベーション向上・コミュニケーション改善
②ロールクリアティを高める5つのステップ
③家庭内でのロールクリアティ実践事例
④ロールクリアティが不明確だと、抱え込み・役割分担の偏り・ストレスが発生しやすくなる
⑤すぐ出来るロールクリアティ対策 3つ


ロールクリアティを高めることは、家族や職場での関係性や効率を向上させるために非常に役に立ちます。
これによって、個々人は自分の役割を理解し、安心してそれを果たせることが出来るようになります。
それぞれがストレングスや特性を生かした役割を担えることで成功体験が積み重なりやすくなり、自己評価も上がるでしょう。

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西岡惠美子(カウンセラー)

惠然庵(けいぜんあん)

私自身がケアラー(病人のケア、療養サポートをする人)です。自身の経験と専門知識による「メンタルケアラーカウンセリング」でケアラーのサポートと成長、家族支援を行います。

西岡惠美子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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