睡眠不足による5つの弊害
自己否定感や強い不安、重すぎる責任でつぶれそうになっていると、自分ではどうすればいいか分からなくなります。
人に相談しても「もっと自信をもって」と言われたりしますが、その方法が分からないから停滞してしまうのですよね。
自信や自己肯定感を感じるためには、そのベースとしての「エンパワーメント」出来た状態が必要です。
今回は自分で自分をエンパワーメントする方法と、それによって何が出来るようになるか、を解説します。
1.エンパワーメントとは何か
①起源は1960年代の社会運動
エンパワーメントとは、1960年代後半から起こった黒人解放運動や女性の権利運動などの社会運動に起源をもつ概念です。
この時期におけるエンパワーメントは、個人や集団が自らの力を取り戻し、意思決定のプロセスに参加し、自分の生活をコントロールすることを指していました。
特に、社会的な少数派や弱者が社会的・政治的な権利を行使し、権力の構造を変革するためのプロセスとして重要視されました。
②エンパワーメントとは
では、エンパワーメントとは何でしょうか。
個人や集団が能力や自己決定権を持ち、自己実現を追求するためのプロセスや状態のことです。
自分や仲間が自分の力を信じて、自分で決めたりやりたいことを実現すること、と言えるでしょう。
③セルフエンパワーメントとは
エンパワーメントとは本来は社会運動なので、他者、特に社会的に弱い立場にある人たちの権利や価値を押し上げる活動です。
「セルフエンパワーメント」とは、自分自身をエンパワーメントすることです。自分の力や環境、強みを活用し、自分自身の成長や幸福を実現するプロセスや状態のことです。
自分で自分の人生をマネジメントし、目標や夢を目指すために必要な意欲を持ち続けることが出来る状態です。
つまり、自分に対して
■私には価値がある
■成長し続けることが出来る
■私なら達成できる
と思えている状態が「エンパワーメントされている」と言えるでしょう。
2.エンパワーメントがない
①エンパワーメントされていない心理状態とは
エンパワーメントが自分には価値がある(まだ分からないけどきっとあると信じられる)状態を指すとしたら、その反対の状態です。
主な心理状態としては
■自分で自分の考えや感情を否定する
■変化や未知、未体験の世界が怖い
■成長や変化を望む気持ちがない、または薄い
■責任から逃れようとする
自分の価値を信じることが出来ないのですから、ある意味抱いて当然の心理状態です。
自分には価値がある、自分に自信がある人とは、周囲が変化しても、自分がネガティブな感情を抱いても「それが自分を傷つけることは出来ない」と分かっているため、安定を保つことが出来ます。
その逆の状態となり、些細な変化や刺激に過剰反応してしまいます。
②エンパワーメントされていないと遭遇する問題
エンパワーメントされていない心理状態は、様々な状況を「問題化」してしまいます。
例えば以下のような問題が考えられるでしょう。
■自分を頼みにできないことから、他者に対して過剰に依存的になる
■依存傾向の高まりが、周囲との比較や過度な同調を引き起こす
■変化する状況が怖いから、外へ出なくなる
↓
■自分の価値を発見する機会が無くなり、更にエンパワーメントから遠ざかる
ただし、エンパワーメントされていない状態がその人個人の責任だ、と考えることも違います。
エンパワーメントの起源を思い出してください。弱者への差別からの解放です。弱者が差別されるのはその人個人の問題ではありません。その人がパワーの無い状態になるように「されてきた」歴史があるからです。現代の個人でもそれは同じです。
■自分の意見は常に無視され、反対された
■自分の強みを高く評価された経験がない
■問題が起きると真っ先に責任を追及された
こうした経験が積み重なった結果であることが多いです。
エンパワーメント出来ていない状態のとき、それが「自己責任である」と考えないことが重要です。
3.エンパワーメントされるとどうなるか
①主体性を再獲得する
まず1つ目は「主体性」を取り戻すことが出来ます。
主体性とは、自分の考えや行動に責任を持ち、自己決定することが出来る意欲やスキルのことです。
周囲の意見に必要以上に左右されず、「自分はこう考えるからこうする」と方針を貫けることです。
主体性は、子どもの頃はもしかしたら「我儘」と捉えられるかもしれません。
しかしその人がその人らしく生きていく上で何より大切なものです。
主体性を、最近は「自分軸」という呼び方をすることもあります。
自分に価値や力があることを信じられる「エンパワーメントされた状態」になることで、自分の意見を表明し、それに沿って行動することが出来るようになります。
②やりがいの発見
二つ目は「やりがいを見出せる」ことです。
生きていく中で人は様々なことを経験します。
その全てがやりがいや学びに繋がるとは限りません。
やりがいと感じられるためには、その前提として
■自分がやりたいと思ったから
■自分の強みを活かせたから
という、「意欲」と「長所の活用」が必要です。
エンパワーメントされていないと、この二つが表面化しません。
エンパワーメントされることで「やってみよう」という気持ちがわいてきます。その時に材料となるのが「自分の長所」です。
自分の長所を活かして挑戦したことが良い結果を残せたとき、「やって良かった」という「やりがい」「達成感」に繋がります。
③前向きな変化
三つ目は、変化に対して前向きになれる、という点です。
先ほども触れたように、エンパワーメントが無い状態では、変化に対いて不安や恐怖が先に立ちます。変化がもたらす状況に自分が対応出来る自信がないからです。
エンパワーメントされると、変化がもたらす状況に対して「自分なら対応できる」と思えるようになります。
これは「必ずうまくいく確証を持つ」こととは違います。
上手くいくかどうかわからない、もし自分が望んだ結果ではなくても、ある程度ならフォローできる、出来ない状況になっても助けてくれる人がいるから大丈夫、と思えることです。
100%の確証はないけれど挑戦してみよう、ダメならダメでまたやり直せばいい、という、前向きな開き直りが出来るようになります。
4.自分をエンパワーメントする方法 5選
①自分の強みと弱みを理解し、受け容れる
それではどうすれば自分をエンパワーメント出来るでしょうか。
1つ目の方法は「自分を受け容れる」ことです。
どうしても自分の欠点や弱点は受け容れがたいですよね。
それがあるから出来なかったことや避けてきたことがあります。更に回避したことで逃したメリットやチャンスもあるでしょう。
「自分は〇〇が苦手だから」という理由こそが、自分を不安や恐怖から守る免罪符になっていたかもしれません。
ただ、弱点や欠点を受け容れることが出来なければ、強味や長所を受け容れることも出来ません。なぜなら「Aが強味かもしれないけど、Bという欠点もあるから…」と、無意識のうちに自分の中で引き算してしまうからです。
そしてエンパワーメントされていない状態だと、欠点のマイナスのほうが大きくなりがちです。
欠点は欠点、強味は強味、別の要素です。平均点や総合点を算出する必要はありません。
電話で話すのは苦手だけれどメールで説明するのは得意、というなら、メールを活用すればいいのです。
②自己表現する
2つ目は「自分を表現する」トレーニングです。
まずは日常的に感じている感情や思考を、どうやって表現していくか、から始めましょう。
心や頭の中でぐるぐる考えているだけでは、感情も思考も表現出来ません。
簡単な表現なら可能でしょう。
だるい、うざい、めんどい、のような言葉は、ある意味的確に「ぐるぐる考えていること」を表現してくれます。色んな意味があるので聞いた人も何となく理解してくれます。
しかし「ではどうすればいいか」という次の一手に進めません。おおざっぱすぎるからです。
自分を表現する目的は、今の状態を理解し分析し、解決につなげることです。
だるい・うざい・めんどい、を詳細化するためにおススメなのが「日記」と「ジャーナリング」です。
どちらも自分の感じていることや考えていることを手書きで文章化する作業です。
日記は記録の役目を持ちます。どの日にどんなことが起きてそれに対してどう感じたか、を書くといいでしょう。
ジャーナリングはひたすら自分の考えていることを自動書記のように書き続けることです。書き続けるうちにどんどん深層心理に近づきます。
この作業を繰り返すうちに、「ぐるぐる」の中身が具体化していきます。
何がネックで、何を不安に感じていて、何が不足していて、自分がどういう結果を期待しているのか、など。
こうした詳細な具体化が可能になることで、自分の思考や感情を表現することが出来ます。
③成功確率が高い目標を設定する
3つ目は目標の設定です。
先ほど「成功するかどうかは二の次になる」とお話しましたが、それはエンパワーメントされた状態が安定したときのことです。
これからエンパワーメントを目指そう、という場合は、まずは成功するだろう目標から始めましょう。
成功、というと何かスゴイことじゃなきゃ!と意気込む方もいますが、それは必要ありません。
要は「自分が予想した通りの良い結果が得られた」ことが「成功」です。
夜になって軽い頭痛がしてきた。念のためシャワーではなく浴槽にゆっくり浸かった。普段より1枚多く布団をかけて寝た。起きた時には少し汗をかいていたが、頭痛は消えていた。
これも十分「成功」です。
これによって「頭痛が軽いうちに体を温めれば自分は回復出来る」という実証が出来ました。
この要領で、小さな目標とそれを達成するための計画を立てましょう。
大事なのは「出来た!」「自分も出来る!」という実感を得ることです。
④フィードバックを受け容れる
4つ目は「フィードバックを受け容れる」です。
急にハードルが高くなったと感じるかもしれません。
フィードバックとは「評価」です。
自分の意見や行動に対して、他者がどう感じたか、の言葉を受け容れることが難しいから、意見を言わなくなったり選択や行動が出来なくなって「エンパワーメントされない状態」になってしまった方も少なくないでしょう。
これもまた段階を経る必要があります。
まずはセルフフィードバックです。自己評価ですね。
自分がやったこと、考えたことを、日記やジャーナリングで自己評価してみましょう。
この時、ネガティブな批評は避けましょう。ポジティブ、または中立的な評価を心がけます。
次に自分に対して日頃からプラスの評価をしてくれる人からフィードバックをもらいましょう。友人、家族、パートナー、カウンセラーがおすすめです。
プラスの評価とはいえ他者からの評価です。それを受け容れることが出来ればまた一歩前進です。
そこまで出来るようになると、更に多様な評価が欲しくなります。
そうしたら中立的な立場にいる他者からのフィードバック、最終的にはあえて厳しいことを言ってくる人に意見を求めましょう。
注意したいのは「厳しい意見」と「悪意」は別です。厳しい意見とは「良薬は口に苦し」な意見のことで、耳に痛いけれど心に温かい言葉です。悪意を向けてくる人は今後ともサヨウナラしましょう。
⑤落ち込んだらセルフケア
5つ目はセルフケアです。
自分をエンパワーメントする作業は、欠点を受け容れたり、未知へ挑戦したり、他者評価を受け容れたりといった、精神的なエネルギーを消耗する体験です。
何もかもが自分に元気を与えてくれるとは限りません。
ネガティブな影響がどうしても起こってしまいます。
このネガティブ体験ですり減った自分を回復させる作業が必要です。
■ゆっくり休む
■好きなことに没頭する
■瞑想、リラクゼーション、リトリート
などを経て回復出来る体験もまた、自分自身がエンパワーメントされることへの助けになります。
[けいぜん庵コラム]日常で出来るリトリート5選
5.エンパワーメントの次に目指せる世界
自分自身がエンパワーメントされた状態になると、次に新しく目指せる世界が広がります。
まずは「夢を実現しよう」というモチベーションが沸いてきます。
自分には出来ることがある、それを実行する力がある、と思えるようになることが「エンパワーメント」です。
これまで「出来ない」と思い込んでいたことで我慢していた夢や目標が表層意識に浮き上がってきます。
具体的に取り組んで実現させるチャンスがやってきます。
他の人を応援したりサポートすることも出来るようになります。
自分が悩んでいたこと、そこから抜け出した体験はそれ自体に価値があります。
それを活かして誰かを支えることが出来ます。
そして「自分はこれからどういう人間でありたいか」という方向性を見出すことが出来ます。
方向性とは目標とは違い、行動や選択に常に影響を与える指針です。
この指針に沿って行動や選択が出来ることが、そのまま充実感や達成感に繋がります。
6.今から始められるセルフエンパワーメントトレーニング 3選
①新しいスキルの学習
何か興味を持てるジャンルを1つ選んで、学習を開始しましょう。
学習というと身構えてしまうかもしれませんが、手っ取り早いのは動画です。
Youtubeなどで興味のあるジャンルで検索すると、そのテーマをレクチャーしてくれる動画がたくさんヒットします。
長い動画だと疲れてしまうなら、5分くらいから始めるのもOKです。
見ていく中で違うジャンルに興味が沸いたらそちらへ移行しましょう。
「新しいことを始めることが出来た」という事実がエンパワーメントへの第一歩です。
②健康的な生活リズムの確立
エンパワーメントが不足している心理状態は、生活リズムや健康に対しても消極的です。
夜更かししたり体重が増えたり体調の悪い状態が続いても「どうせ自分なんか…」と思っているので積極的にケアすることに興味が持てません。
エンパワーメントされた状態になるためには、体から健康になる必要があります。その手始めが生活リズムの見直しです。
■夜11時就寝⇒朝7時起床
■腹八分目の食事を心がける
■アルコールやカフェインの過剰摂取を避ける
■1日15分は徒歩で移動する
ここからスタートしましょう。
③他者と比べず、昨日の自分と比較する
エンパワーメント出来ていないとき、どうしても自分と他者を比較して自分を批判します。そして他人を羨ましく感じ、現実以上に高く評価してまた自分を貶めます。
自分と他者は全く違う人間です。共通点は「人類」くらいです。
トマトとたまごのどちらが良いか、を決めることは出来ません。あるとすれば好き嫌いくらいです。それと同じで、自分と他者を比べることに意味はありません。
もしどうしても比較対象が必要なら、昨日の自分と比べましょう。
昨日は出来なかったことが今日は出来たなら素晴らしいですね。
昨日できたことが今日は出来なかったなら、それはなぜでしょうか。理由を考えるきっかけになります。
7.まとめ
- エンパワーメントとは:自分に価値があると思えること
- エンパワーメントされないでメリットは、自分で自分を信じられないこと
- エンパワーメントされると、ポジティブな意欲がわいてくる
- 自分をエンパワーメントする方法 5つのご紹介
- エンパワーメントされると、自分の方向性が見えてきて充実感が持続する
- 今から出来るセルフエンパワーメントトレーニング 3選
エンパワーメントとは、力を失ったり気づけていない状態を揺り動かすことから始まります。
自分には価値がない、という思い込みにがんじがらめになっている状態を突破して、「そうではない」自分を垣間見ることで、自分らしさや価値を再発見出来ます。
自己評価を高めたり自己肯定感が上がるのはその結果です。
もし今自分がエンパワーメントされていないと感じるなら、その状態にある自分を責める必要はありません。スタート地点に立った、と捉えましょう。
出来ることから自分のペースで自分自身を揺り動かし、自分のパワーに気づいていきましょう。
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