共感と同調:ケアラーの心理的負担と理想的な対応
メンタルを守りながら築く健全なパートナーシップ
自己評価の低い人をパートナーに持つと、自分自身の存在意義、自分がパートナーであることの意味も分からなく、寂しくなります。
私もずっと悩み続けました。夫が「自分には価値がない」と考えるなら、妻の私にも価値がないのでは、と。
しかしながらその発想自体が害だったのです。夫の自己評価と私自身は関係がない、と気づけてから楽になれました。
相手の自己評価の低さをケアしつつ、自分の自己評価も守ることでパートナーシップを築くことが出来ます。
1.自己評価が低い人の特徴と原因
①自己評価とは
自己評価とは、言葉の通り「自分自身をどう思っているか、それに対してどう感じているか」です。
例えば「自分は人見知りするタイプだ。それは良くないことだから直さなければ』と考えていれば自己評価は下がります。「人見知りするけれど一度親しくなれば相手を大事にする」と考えていれば自己評価は下がりません。
自己評価とは、自分で自分についての評価(吟味)をする機能/システムのことを指す。この場合の「自己評価(する)」は英語で「self-evaluation」という。
(wikipedia)
自己評価の内容は、大きく以下の3つで構成されます。
- 自分を愛しているか
- 自分を肯定的に見ているか
- 自信を持っているか
自分を愛していることで、困難に耐える力が生まれます。
自分を肯定的にみることで、自分の意思を持つことが出来ます。
自信を持つと、決断が出来るので行動力が上がります。
自己評価が低い場合はこの3点(全てかどれかか)が不足しているのです。
②自己評価が低い人の特徴
自己評価が低い人は、思考や行動に以下のような特徴が現れます。
- 過度な自己批判…他者に対する評価に比べて、自分への採点が辛いです
- 他者と比較しやすい…常に自分と他人を比べる傾向があります
- 失敗への過剰な恐怖…失敗への恐怖から、挑戦や行動自体を回避する傾向があります
- 過去へのこだわり…特に過去の失敗やミスを長く引きずります
- 他者依存…自分に自信を持てないことで、判断を他者に委ねがちです
- 長所や成功を認めない…褒めてもらっても「そんなはずはない」と考えて受け入れません
頑張っても頑張っても自分で自分を褒められない状態は、想像するだに辛いです。
そして自分で努力を認められないなら、そのうち頑張ることすら嫌になってしまいますよね。
③なぜ自己評価が低くなるのか
誰でも自分で自分を低く評価したいはずがありません。
ではどうして自己評価が低くなってしまうのでしょうか。
色んな理由が考えられますが、一番は周囲からの評価による影響です。
小さい頃から、親・先生・年長のきょうだい・その他周囲の大人など、子どもから見て「この人が言うことなら正しいのだ」と思わざるを得ない人から低い評価や批判をされ続ければ、「自分はそういう人間なのだ」と思っても仕方がありません。
大人になれば交友関係も行動範囲も広がりますから、色んな価値観を持った人に巡り合えます。
ですが子どもはそうはいきません。基本的に家と学校の往復です。そしてこの二つの世界は非常に狭く固定されています。決まった人、似たような価値観を持った人とばかり接する時期が続きます。
自分で交友関係を選べるようになるまでの十数年間の間に、自己評価の基礎が出来上がってしまうのです。
2.自己評価と精神疾患の関係
うつ病(その他精神疾患)を患う人は、自己批判的になりがちです。
もちろんそれは病気のせいでもありますが、自己評価の低さがストレス耐性を弱めてしまっている、というケースも少なくありません。
①自己評価の低さによる自己「不信」がストレス耐性を弱める
上述したように、自己評価を高くたもつ為には「自分を愛する」「自分を肯定的に見る」「自信を持つ」ことが必要です。
この中の「自分を愛する」ということは、自分で自分を労わり、ケアし、落ち込んだら励ます、頑張ったら褒める、というセルフコンパッションが含まれます。
セルフコンパッション、つまり自分に対する慈悲心が不足しているので、ストレスを感じる場面で対抗手段がありません。ストレスによるダメージをもろに受けてしまいます。
結果としてうつ病や不安障害、対人関係上の問題などを抱えやすくなってしまいます。
②病気の症状は薬で和らぐが、自己評価は高まらない
抗うつ薬や抗不安薬は、病気の症状を和らげて、日常生活を送りやすくする手助けをしてくれます。
ですが自己評価まで高くしてくれる薬はありません。
自己評価とは、自分で自分をどう見ていて、それに対してどう感じているか、だと最初に申し上げました。つまり自分への認知です。
認知は薬では変えられないのです。
うつ病の症状自体が改善しても、元々自己評価が低かったのだとしたら、「自分には価値がない」という見方もそれほど改善は見られないでしょう。
③ネガティブな思考パターンと孤独感が疾患へ大きく作用する
うつ病を改善するポイントの一つに「物事をポジティブに見る」というものがありますが、自己評価の低い人は病気かどうか以前に「どうすればポジティブな見方が出来るか」の方法が分からないので、どうしてもネガティブな思考パターンに偏りがちです。
更に自己評価が低いことで他の人との交流も避けるようになり、孤独感が強まります。
ネガティブ思考と孤独感が合体すれば、メンタルバランスは崩壊の一途です。精神疾患になってしまうのも無理からぬことでしょう。
3.自己評価が低い人との付き合い方3選
ではこうした特徴を持つ自己評価の低い人がパートナーや家族、友人の時、どのように付き合えばいいでしょうか。
①相手の言動を批評・批判しない
上述したように、自己評価が低い人は幼少期から自分に対する批判的な意見を浴び続けてきました。
そのため、基本的に自分から行動したり発言したり選択することが、苦手を通り越して恐怖になっていることも少なくありません。
そして彼らの言動にはどこかしらネガティブな要素が含まれます。
つい、そのネガティブな部分を突いて「そんなことじゃいけない」と言ってしまうことがありますが、やめましょう。
ネガティブ要素が含まれていてもいいのです。行動・発言・決断したこと自体に意味があるのです。
②ポジティブな面に気づいたら積極的に肯定する
自己評価が低い人は自分のネガティブ要素には過敏ですが、ポジティブな面には異常に鈍感です。
例えば時間や期限を守る、身の回りを整理整頓する、相手に敬語を使う、書字が丁寧、といったことは十分美点なのですが、当人は「そんなことは当たり前」と考えて少しも評価しません。
自分の美点は、自分では分からないものですから。
少しでもポジティブに見えた面があれば、肯定的な言葉で伝えましょう。
③自己評価が高まらない原因に共感する
自己評価を自らすすんで下げる人はいません。低い自己評価をしてしまうのは、幼少期の過ごし方、人間関係、トラウマ体験など何かしらその人にとって重要な理由があるはずです。
その理由を知る機会があったときは、辛さに共感しましょう。
共感とは「あたかも自分がその人になったつもりで」その状況を自分の中に再現して体験することです。
「もし自分だったらそんなことで自己評価を下げないのに」と考えるのは感想に過ぎず共感ではありません。
共感し、相手の立場になってみることで見えることがあります。
そして辛い体験に共感してくれる人がいる、という経験は、当人にとって大きな支えになります。自分は辛い体験をしてきたのだ、と自覚することは自己評価の見直しにも影響を与えます。
4.自分のメンタルを守るコツ3選
自己評価が低くなってしまう理由とそうした人たちと接するポイントは分かりましたが、とはいえ一緒にいる時間が長くなればこちら側もストレスを抱えることは否めません。
しかしながら相手が家族となれば、一緒にいない、という選択肢も取れません。
自己評価の低い人とのパートナーシップを築くためには、自分自身のメンタルを守る必要があります。
①相手の自己評価と自分の自己評価をリンクさせない
冒頭でお話したように、これは私の実体験でもあります。
夫が「自分には存在価値がない」と発言すると、ではその夫を大事にしている私にも存在価値がないのか、配慮は無駄なのか、と考えてしまい、落ち込みました。そしてそう考えさせる夫の言動に怒りを感じました。
しかしよくよく考えれば、夫自身の自己評価と私の自己評価は関係が無かったのです。夫は自分自身への評価を口にしているだけで、私がしていることを無駄だと直接言っていたわけではありません。そして私も夫に感謝してもらいたくて配慮していたわけでもなかったのです。
近しい人、特に夫婦やパートナーなら、相手が「自分には存在価値がない」と考えていることは大きな悲しみです。ですがそれと自分自身の存在価値を混同しないことが重要です。
②自分の自己評価を自分で守る
自己評価は、自分が自分をどう見るか、です。他者がどう思うか、は間接的な影響しか及ぼしません。
自分の生活の100%が家族やパートナーだという人は少ないでしょう。自分自身の仕事、趣味、生活、目標があります。自己評価はそれらも含みます。
自己評価を高める3要素である「自分を愛する」「自分を肯定的に見る」「自信を持つ」を高めながら、自分の自己評価を守りましょう。
③人として適切な距離を保つ
自己評価が低い人から影響を受けやすくなるとき、自分と相手の境界線があいまいになっていることが多いです。
家族やパートナーは接する時間が長い分、相手が別人格を持つ他者であることを忘れがちです。
他者と認識することは、他人と切り捨てることではありません。
自分とは別の思考も意見も持っている人である、と尊重することです。
親しい間柄であることを重視するあまり、境界線があいまいになってお互いに領域を犯すことが起こりがちですが、これは愛情ではなくリスペクトの欠如です。
自分を守り、相手を尊重出来る、心身の適切な距離感を理解し、保ちましょう。
5.自己評価が低い人へのNG行動3つ
①ポジティブのゴリ押し
後ろ向きで否定的なオーラを発する人を前にすると、なんとかしてポジティブに前向きになって欲しいと思ってしまって、本人のネガティブオーラを否定したくなります。
そしてポジティブな言動を押し付けてしまうことがありますが、やめましょう。
それは眠くてたまらない時に「面白い映画があるから一緒に見よう」と言っているようなものです。本人は望んでいません。
②自己評価を無理に高めてあげようとする
自己評価が低い人は自分の長所や美点に鈍感です。それは翻せば他者から見ればいくらでも長所も美点もある、ということです。
低い自己評価発言を繰り返す人に「そんなことないよ、もっと自信もちなよ」と言いたくなる気持ちはわかりますが、やり過ぎると「励ましてもらっても元気になれない自分」を浮き彫りにし、更に自己評価を下げる、という負のスパイラルを招きかねません。
自己評価を高めるために必要なのは、本人の納得感です。
相手の美点を肯定するのも、相手に無理やり納得させる必要はありません。
③無理な決断を迫る
自己評価が低い人は自分に自信がないので選択・決断が苦手です。
しかし自信を持ってほしくて無理に決断を迫るようなことをしては逆効果です。
自己評価が低い人に必要なのは、決断してもらうことではなく相談です。話し合いながら相手の希望がにじみ出てくるのを待ちましょう。
6.今すぐ出来ること3選
①ゆるい接し方
自己評価は、低いのが駄目で高ければいいということでもありません。
「私は内気だから」と言われたとしたら、「そうなんだ」「そういうこともあるね」とゆるく受け流しましょう。
無理に共感しようとすれば自分のストレスになるし、強引に否定すれば相手が苦しみます。
②求められていないならアドバイスしない
自己評価の低さ故に出てくるネガティブな言動を、その人の「悩み」と解釈して「~~すればいいんじゃない?」とアドバイスすることがあります。
ですが「どうしたらいいのかな」という明確な働きかけが無いなら、アドバイスは不要です。
③アイメッセージで話す
アイ(I)メッセージとは、自分を主語にした話法です。
「あなたは内気だから~~したほうがいい」というのは「あなた(You)」が主語になっています。
「私はあなたの~~なところは○○だと思うよ」のように、自分を主語にして伝えることで相手も情報の一つとして解釈することが出来、自分も押し付けではない意思表示をすることが出来ます。
7.まとめ
相手の自己評価の低さと自分の存在意義は関係ありません。
家族・夫婦・パートナーが自分の存在意義を疑っていたとしても、自分へのメッセージではないのですから、切り離して考えましょう。
切り離して考えることで、不要な悲しみやストレスを抱えることなく、相手とのパートナーシップを守ることが出来ます。
そのために、お互いの領域を尊重しつつ肯定的な面を強化するコミュニケーションを続けることをおすすめします。
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