言葉にする大切さと難しさ

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:スキルアップ/キャリアアップ

言葉にする大切さと難しさ
人は24時間言葉を使っています。
誰とも会話していなくても頭の中で考え事をするときに使っている。

ですがその言葉が全て自分の本心とは限りません。
自分の気持ちを的確に言葉にする大切さと難しさ、どうやったら言葉に出来るようになるか、を考えました。

1.どうして大切なのか

人の心は奥がとても深いです。一番代表的なのはS.フロイトの「構造論」ですよね。
上のほうに表層意識があり、下に降りていくにしたがって深層意識になる。氷山のように表に見えているのは上のほうのちょびっとだけ。

人から見えているのも、自分が「これが私の考えだ」と意識しているのも表層意識部分だけです。それもすべてかどうかは分かりません。
それくらい人の心は奥が深く広いのです。

問題は、「自分の気持ちは自分が全部わかっている」と思い込んでしまうことによって、無意識部分に押し込めた本音に気づかず、無視し続けてしまうことです。

例えば「何を置いても仕事に全集中して時間も気にせず働き続けることが正義」みたいな職場にいるとします。
最初はそれが自分に合っていると思っていましたが、数年経って家族が病気になり家のこともやらなければいけなくなりました。
自分としては家族も大事にしたいから、仕事の時間を削りたいと思っても「仕事が何より一番大事なんだ」という思い込みで蓋をし続けると両者の間で葛藤が起こります。

やりたいこと・やらなければと思い込んでいること・自分の主義や正義がぶつかり合う。
そしてうつ病や適応障害といった病気へつながってしまうのです。

きっかけは「今の自分が何を大事にしたいか、を言葉にすることが出来ていなかった」ことです。




2.どうして難しいか

自分が自覚しているはずの感情や思考なのに、なぜ言葉にすることが難しいのでしょうか。

理由の一つが「べき思考」です。
自分の本音と「~すべき」「~であるべき」と考えていることが相容れないとき、「~すべき」のほうが優先されてしまいます。
べき思考を優先させる「べき」理由ばかりたくさん思いついてしまいます。
そしてどんどん本音が遠ざかって行ってしまうのです。

二つ目は表現方法の仕方が分からないときです。
ふと湧き上がってくるふわっとした幸福感や満足感、安定感、ワクワクする感じってありますよね。
突然やってくるし、馴染みが無いから戸惑ってしまう。そのうちに気持ちが消えてしまうので、言葉にしている暇がない。ぴったりする言葉を探す暇もなくなってしまいます。

三つめは「今」との繋がりを失っている場合。
「今この時の自分」と向き合うことは意識しないと出来ません。意識しなければ人の思考は過去や未来ばかり彷徨っています。
あの時こうすればよかった(過去)とか、これからはこうしなければ(未来)ばかり考えている。
すると、ずっと考え続けている「べき思考」が自分の今の本音と勘違いしてしまうのです。
自分のことなのに自分の変化に気づけないから、言葉にすることも出来ません。

3.言葉にする練習をしよう

①長い文章を作る練習をする

自分の気持ちを言葉にしようとするとき、たった一言でぴったりくる表現をするのは結構上級編です。
まずは長い文章から始めるほうが、実はやりやすいです。

ブログ、日記、手紙、ジャーナリングなどで、考えるよりも思いついたことをそのまま書いていきましょう。
こんがらがった毛糸をほどくときに一発でほどくことは出来ません。時間をかけてもつれを解いていきます。
それと同じように、言葉を自分で紡いでいく習慣をつけることで、「自分の気持ちはこれだ!」と思える言葉を見つけることが出来るようになります。

②語彙を増やす

気持ちを言葉にするためには、言葉の種類、つまり語彙(ボキャブラリー)を増やす必要があります。

それには他の人の話を聞くことが役に立ちます。
有名人、作家、学者、インフルエンサーなど、今は色んな人が自分の言葉で話したり語ったりしているのを聞くことが出来ます。
言葉のシャワーを浴びると、意識しなくても自分の中に語彙が溜まっていきます。
本を読むのもいいでしょう。映画やドラマ、アニメでもいいと思います。
人が話すのを聞いていると、話し方も学べます。

③「今、ここ」にいる自分と向き合う

前項で「べき思考と、変化した自分の気持ちとの間に生まれる葛藤が問題を引き起こす」とお話しました。
この葛藤を解決するためには「今ここにいる自分はどうしたいのか」を知る必要があります。
マインドフルネスですね。

マインドフルネスとは、現在において起こっている経験に注意を向ける心理的な過程である。瞑想、およびその他の訓練を通じて発達させることができるとされる。
語義として「今この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに捕らわれのない状態で、ただ観ること」といった説明がなされることもある。
(wikipedia)


今この瞬間の自分は何を感じて何を見て何処にいて何をやっているのか、を、良い悪いなどの評価をせずに集中して意識することです。
実は喉が渇いていた、脚が疲れている、背中が痛い、外が暗くなっていた、など、色んな事に気がつきます。
この繰り返しで、「今自分がどうしたいと思っているか」に近づいていくことが出来ます。

④便利な言葉を使わない

一言で何となく言いたいことが周囲に伝わる言葉が増えているように思います。
うざい、だるい、きもい、やばい。
または政治家がよく使う「遺憾」とか。
その一言で自分の気持ちを言い表した気になっているだけかもしれません。
「やばい」なら、何が・どれくらい・どうして・どんなふうにやばいのか、を考えるようにしてみましょう。
すると、実は「やばい」のではなく「辛い」「もうやりたくない」「悲しかった」のような言葉と置き換えられるかもしれません。
それによって次に自分が取るべき行動が見えてきます。



4.まとめ:言葉にする習慣は自分を知る手がかり

①周囲の環境や条件と本音のズレによる葛藤が大きいと、メンタルヘルスを損なう原因になる
②べき思考・語彙の少なさ・マインドレスな習慣が気持ちを表現することから遠ざける
③言葉にする練習は、長い文章を書く/語彙を増やす/マインドフルネス。また便利な言葉を使わないこと。


自分の気持ちを言葉にする習慣は、自分で自分を知る第一歩です。そして自分で自分を知るからこそ、他者に伝えて理解してもらえます。更に他者を理解するときにも豊富な表現力が役に立ちます。

身近な「言葉」を使ってもっと自分を自由にしていきましょう。

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西岡惠美子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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