日常レスパイトでケアラーケア

テーマ:ケアする人のメンタルケア

日常レスパイトでケアラーケア
前回は福祉サービスを活用したレスパイトについてご案内しました。
本日は公的サービスの活用以前に、生活の中で出来る「日常レスパイト」について考えてみたいと思います

1.メンタルケアラーにレスパイトが必要な理由

身体ケアや日常動作介助が必要な高齢者・身体障害者介護と、うつ病などの精神疾患を患った家族のケアは内容に違いがあります。

精神疾患の場合は以前より出来ないことが増えたとはいえ、トイレや食料摂取、横になったり起き上がったり、着替えなどは本人が可能です。

ではどこでレスパイトが必要になるか。
それはコミュニケーションに由来する疲労です。
些細な言葉の取り違え、本人とは関係ない行動への誤解、周辺環境から受ける刺激に対する反応が違うことだったりします。

感性が全く同じ人間などいないですから、精神疾患ではなくてもある程度こうした問題は起きるでしょう。
しかし精神疾患の場合は、これらによって本人の症状が悪化したり再燃し、危機状態になる可能性もあります。

家族は常にそれらに配慮しながら生活することになります。
一見普通に生活しているようで、神経をすり減らしているケアラーは少なくありません。

だからこそ、メンタルな問題を抱える家族と暮らすケアラーにもレスパイトが必要なのです。

2.レスパイトの意味を広げて考える

レスパイトとは「休息」「息抜き」「小休止」という意味です。
転じてレスパイトケアとは、支援対象者を施設に任せる時間をケアラーの休息時間にあてる、という意味になります。

これを広げて考えてみました。

休息、息抜き、一時的な解放

誰かに任せる、頼る
リフレッシュする
延期する
猶予を作る
ケアラーのためのケア
本人と物理的・心理的距離を取る


ただ「休む」だけなら夜眠る時間が該当する、と考えるかもしれませんが、それだけではケアラーの疲労は回復しません。
上記のように広げて解釈することで、レスパイトが必要であることがご理解頂けると思います。

更にこうしたレスパイトを実現させることで、ケアラーの状態はどう変化するでしょうか。

休息、息抜き、一時的な解放

心と体を休ませる
自由を得る
緊張感を下げる

考える余裕が出来る
冷静になる
問題を整理する

第三者に話せるようになる
行動が増える
本人を理解できる


24時間絶え間なく気を配り続けていたケアラーが休息をとることで、本来のその人らしさを取り戻し、忘れていた思考や行動力が戻ってきます。
それは精神疾患を患った家族にとっても強い支えになるのです。

3.日常レスパイトの例

では実際にどんな日常レスパイトが可能か、を考えてみました。

①生活の中で「今すぐ必要ではない作業」を見つけて止める/頻度

毎日やっていることの中でも頻度を下げたり止めてしまえることは結構あります。
例えば仏壇の花を毎日替えるのは、手間だしお金がかかります。
私はプリザーブドフラワーに変えました(笑)

②必要な作業の中で、道具に頼れる作業があれば置き換える

今は本当に便利な道具が溢れています。しかも安い。
お風呂掃除が手間なら、シュッシュと吹きかけて洗い流すだけの洗剤を使って楽することも出来ますよね。

③ケアラー自身が「休息」「息抜き」出来る条件を考える

これが一番重要です。どうすることが休息になるか、は、人によって全然違います。
実は家族と一緒にいることのほうが息抜きになるかもしれない。逆もあります。
長い目で生活の安定を図るためにも、ケアラーが自分をよく知ることは大事です。

④家事・仕事などの効率化、手抜き方法を考える

ケアラー自身の負担軽減にもなりますし、やり方によっては家族本人にやってもらうことも出来ます。もちろん回復度合いによりますが。
リハビリ効果もありますし、「出来た」ことは本人の精神にも良い影響を与えるでしょう。

⑤自宅内レスパイトを習慣化する

1回やっただけでスッキリ元気になれるものではありません。
この方法がいい、というレスパイト方法が見つかったら、家族と相談の上習慣化・スケジュール化しましょう。
毎週土曜日の午後は自分の趣味に没頭する、外出する、一人で昼寝する、など。
いちいち誰かの許可を取らなきゃいけない、と考えると気が重くなります。
習慣にしてしまえば家族本人の許可は必要ありませんので、遠慮することなく休息をとることが出来ます。

4.日常レスパイトするときのルール

やり方は様々あると思います。
守っていただきたいルールは、以下の2つです。

①自分(家族側)の「出来る」を無限にしない

「いつでも何でも言っていいよ」と言いたくなる気持ちは痛いほどわかります。
実際その時の本音でもあります。
めちゃくちゃ辛そうにしているんですから、自分に出来ることなら何でもしてあげたい。
ただ、無限に半永久的に続けられることではありません。
家族は家族を支える、仕事をする、という大きな責任と役割があるのですから。
「ここまでなら出来る、これ以上は難しい」という限界があることを覚えておいてください。
そして可能なら、本人にもそれを理解してもらいましょう。

②離れている時も一人ではないことを伝える

常に一緒にい続けるのは不可能です。本人が外出できないなら、その分を家族がこなすしかない。
しかし今まで日中働いていた人が1日中家の中にいれば、そのギャップで寂しさを募らせる可能性は十分あります。
物理的には一人でいても、気持ちの上では配慮しているよ、忘れてはいないよ、ということを伝え、理解してもらいましょう。

5.まとめ

持続可能なケア生活のコツはメリハリです。
一緒にいるとき、例えば食事をとっている時はTVを消して二人で会話する。
別々に過ごすときは自分の好きなことややるべきことに集中する。
ケアも仕事も家事も「ながら」や「マルチタスク」にしようとすると集中力が持ちません。それは長い目で見てストレス化します。

レスパイト=休息は、逃げることでも放棄することでも怠けでもありません。
公的私的織り交ぜて、自分たちに合った方法を探してくれると嬉しいです。

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西岡惠美子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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