うつ病のタブーとどう向き合うか

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:ケアラー支援

うつ病のタブーとどう向き合うか
うつ病の人との接し方にはいくつかポイントがあります。厚生労働省のHPをはじめ「うつ病の人には○○をしないようにしましょう」という情報はたくさん発信されています。
どれも大切なことですが、家族がそれを字義どおりに受け取って実行しようとすると、生活が回らなくなる恐れがあります。
家族は、うつ病のタブーとどう向き合っていけばいいでしょうか。

【1】『はげまさない』→回復度による

ずっと踏ん張り続けた挙句にうつ病になった人に、むやみに「頑張れ」と言うのは確かに危険です。
頑張り過ぎた結果がうつ病、という方がほとんどですから。

ただこれは、「状況も事情も分かっていない人が定型句のように言う」からこそ、害なのだと思います。

タイミングうつの回復度合いによって、励ましがNGかどうか、が分かれると思います。
療養生活も大分経っていて、本人も「そろそろ復職しようかな」と気持ちが動き始めた時は、周囲の適切な励ましや支援が有効です。
逆に「もっとゆっくり休めばいい」という気遣いが、やる気のブレーキになることもあります。

言葉やタイミングが難しいですが、一緒に生活している家族だからこそ言える『頑張れ』にはメリットがあると思います。

【2】『大きな決断は先延ばしにする』→時間をかけて一緒に考え

転職・退職、転居、別居、離婚、または大きな金額の買い物などは避けたほうがいい、とも言われます。
うつの時は思考が停滞して、偏りがちです。一番症状が重かった時のことは後から思い出せないこともしばしばです。そんな状況で大きな決断を下すことは確かに難しいでしょう。

ただ、大きな決断は、そもそも一人でするものではありません。うつ病ではなかったとしても、必ず誰かと相談して決めるものです。
それに、こちらが避けようとしても「決断せざるを得ない場面」が訪れることもあります。

うつ病の人と一緒に大きな決断をするときは、いつもより時間をかけて、うつ病の人が判断しやすい選択肢を用意し、状態が安定している時間帯を選んで相談しましょう。

【3】『原因探しをしない』→再発予防には必要

これも内容によると思います。
本人にだけ、状態が良くない時に『どうしてうつ病になったか』を考えさせれば、当然ですが『全部自分が悪い』という結論になります。
生きていることすら辛いのに、自罰的になりすぎてしまって、最悪の事態にもなりかねません。

しかし、これからどうしようか、と将来を考えた時、再発予防の観点から行くと、原因を考えないままではおまた同じことを繰り返してしまう危険があります。

原因探しは必要です。ただし、犯人捜しにならないように注意しましょう。
この場合の犯人は「うつ病本人」になってしまう可能性がとても高いからです。

【4】『話を聞く』→うつ本人が「話そう」と思える土壌づくりが

うつ病になってしまう人は、辛さを吐露したり他人に甘えたり頼ったりすることが苦手です。というか下手です。だから失敗体験も多いです。
そうした人に「何でも話してね」と言うだけで、本当に話をしてくれるでしょうか。
表面上の会話は成立しても、当たり障りのない、相手が答えやすい話しかしないで終わってしまいかねません。

話を聞く、とは、話す側が能動的に行うものだと思われがちですが、「話そう」と思えるかどうか、も同じくらい重要です。
「何でも話してね」と善意からの声かけも、「話さなくてはいけない」と思わせてしまっては逆効果です。

「話そう、聞いてもらおう」とうつ病の人が思える空気を作ることが重要です。

【5】『特別なことはしない』→うつ病にとっての「特別」「普通

特別なことをしない、とは、例えば無理に外へ連れ出したり、普段はやらないレジャーを提案したり、といったことは避けよう、という意味だと思います。
確かにこうしたことは避けたほうがいいのは、一緒に生活していれば分かることだと思います。

ここで考えたいのは「日常生活における特別と普通」です。
うつ病にとって「特別なこと」「普通のこと」が何なのか、を知ることが大事です。

うつ病とはどんな病気で、本人は今どんな状態にあるのか。
うつ病になった今、どう過ごすことが普通なのか、何をすることが特別なのか。

例えば病気なら、予約日時に病院へ行くのは「普通」のことでしょう。
しかし、それが必ず出来るとは限りません。
朝起きて夜眠ることが健康な人にとっては「普通」でも、うつ病の人は自律神経がガタガタで体内時計が狂いまくっているので、朝型生活は「特別」なことなのです。

自分たちの「特別・普通」うつ病の人の「特別・普通」違うことを、知っておきましょう。

≪まとめ≫

家族がうつになって、一緒に生活している時、家族にしか分からない辛さや悩みが生まれます。
それは、「家族」という環境の中で特有の、個別の悩みです。
一般論に縛られすぎないで、自分たちの事情や強味を活かして乗り切りましょう。

≪オンラインカウンセリング 惠然庵≫
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