感情をモニタリングする

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:心の保ち方

感情をモニタリングする
自分を知る、とは、実際にやろうとすると難しいものです。
その中でも「自分の感情」を知ってコントロールするのはもっと難しいしやり方が分かりません。コントロール=我慢、になってしまっては逆効果です。

自分を知る方法の一つとして、感情をモニタリングしてみましょう。

1.モニタリングとは

モニタリングとは

「監視、観察、観測を意味し、対象の状態を継続または定期的に観察・記録すること」(KDDI Evolva)

です。

監視カメラなどで定点観測していると、実際に見ていた時とは違う変化や異変に気付くことがあります。
人は目で見ていることがすべてではありません。目や耳に入ってくる情報の全てを取り入れていると情報が多すぎてその刺激でパンクします。無意識に自動的に、必要な情報だけピックアップしているのです。

必要な情報だけピックアップする、と言いましたが、何を「必要」と思うか、によって、ピックアップする情報が変わってくる、とも言えます。

例えば怒りの感情を強く感じているときに、その原因追及ばかり考えていれば、それ以外の情報は当然無視されたり、「怒り」関連情報ばかりを集めてしまうことで感情が増大・増強されていく恐れもあるのです。

2.何のために感情をモニタリングするのか

自分の感情をモニタリングするときは、対象は「自分」見ているのも「自分」です。
どういうこと? と思われるかもしれませんが、何かの感情を感じている自分を、定点カメラで外側から観察するのです。

それを試みると、「感情を感じている自分」と「感じている自分を見ている自分」が分離します。

天井に設置されたカメラが室内を撮影していると、室内の人物や家具などが小さくなって全体が見渡せますよね。
それと同じで、距離を取ることで、感情そのものがぐっと小さくなります。
小さくなるというより、実際以上に大きくなって感情に支配されることから逃れられるのです。

感情をモニタリングするのは、自分自身と感情を引き離して囚われなくするための手段なのです。



3.感情をモニタリングする利点

小さくなると、全体の形や大きさが分かります。
大きさが分かると、まず安心できます。
(感情の)中にいると自分より巨大に思えて手が付けられないと考えてしまいますが、そもそもが感情は「自分の心・思考から発生したもの」なのですから、自分より大きくなるはずがないのです。

全体像が見えることで、どこから手を付けていけばいいかが思い浮かびます。
例えば自分の怒りの感情を外側からモニタリングしたとき、一番敏感になっている部分、重く暗くなっている部分、逆に触れやすそうな部分などが混在していることに気づくかもしれません。

事例で考えてみましょう。
朝の通勤電車のラッシュの中で足を踏まれました。
痛いし、踏んだ人がむかつくし、よくあることなのにイラつく自分が情けないし、毎日満員電車で通勤しなきゃいけない境遇も腹立たしいし、怪我がひどかったり靴が汚れたらどうしようとか、考えることはたくさんあります。
「むかつく」の一言で片づけようとすると、場合によっては騒動に発展しかねません。

怒りを感じている自分を外からモニタリングすることで、

①一番重要だと思っていること
②簡単に解決出来そうなこと
③無視は出来ないけど後でゆっくり考えること

などを仕分けることが出来ます。

足を踏まれた件で例えれば

①一番重要だと思っていること=足の痛み
②簡単に解決出来そうなこと=声をかけて足をどけてもらう
③無視は出来ないけど後でゆっくり考えること=毎日通勤電車で通っていること

のように、一つずつ対処することが出来るかもしれません。

4.感情をモニタリングする方法

①自分を将棋盤、感情や出来事を将棋の駒に見立てる

自分自身は、ベースです。将棋盤は将棋をしている間に形を変えたり移動することはありません。動きがあるのはその上にある駒です。
自分自身はいつでも一定、変化しません。変化するのは感情で、出来事、周囲の環境です。

自分自身を駒にしてしまうと、盤上から取り除かれたり、他の駒に追い立てられたりしますが、盤だと知っていれば他の駒=感情を恐れる必要はなくなります。
自分の目の前の光景=感情、出来事、周囲の環境を把握出来ます。
(チェスに例える方法もありますが、日本人なので将棋にしてみました)

②自分の感情の波を実況中継する

スポーツの観戦実況を思い出してください。

「ピッチャー、振りかぶりました」
「投げた!」
「ストライクです」
「次は何を投げるでしょうか、ストレートか、カーブか、フォークか」
「キャッチャーのサインに首を振っていますね」
「次、投げた!ボールです!」

これと同じことを、自分の感情の発生⇒高揚⇒沈静化までやってみましょう。

「足、踏まれたみたいですね、痛そうです」
「踏んでること、気づかないのかな。気づいてどいてくれればいいのに」
「次の駅でたくさん降りるから、その時に体勢を変えてみましょう」
「毎日満員電車だから、こういうこともありますね」
「早起きして違う電車にしましょうか。でも起きれるか不安ですね」
「まずは踏まれて怪我していないかが心配です」


こうしていると、痛み⇒怒り⇒未来予測⇒不安、と、考えていることが変化していることに気が付きます。
この中で、
①一番重要だと思っていること
②簡単に解決出来そうなこと
③無視は出来ないけど後でゆっくり考えること

はどれか、に気づくことが出来ると、ただ怒りを感じているだけよりも実りがありますし、スルーできない状況に恐怖を感じることも減っていきます。

5.感情処理の「3ない」

感情をコントロールするとは、どういうことでしょうか。
色んな考えや方法があると思いますが、私がおすすめしたいのは
「おさえない・無視しない・恐れない」
です。

力技で押さえつけてもどこかで爆発します。
無視しようとしても出来ないから悩んでいるのに、感じている自分を無視する、というのは無理です。
自分自身の感情を恐れるようになると、喜びや楽しみからも遠ざかってしまいます。

感情が湧き上がるのを止めるのでも、原因となりそうな刺激を避けるのでもなく、自分にとって厄介な感情は何かを知り、表出方法を知ることで、適切な対処方法を探すことが出来るようになり、結果として厄介な感情が湧き上がることが怖くなくなります。

そのための「モニタリング」で、その結果として「自分を知る」ことへつながっていくのです。

≪オンラインカウンセリング 惠然庵≫
Twitter:https://twitter.com/keizenan
instagram:/keizenan.counseling/

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