我慢は「心」に毒

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:心の保ち方

我慢は「心」に毒
日本人はとかく我慢が大好きです。
忍耐、耐え忍ぶ、石の上にも三年、忍の一字、辛抱強い。
少しずつ薄れ始めていますが、それでも我慢することの美点ばかりが取り上げられることのほうが多いです。

しかし我慢は体だけでなく心にも毒です。
どうして毒なのでしょうか。
我慢しないためにはどうすればいいでしょうか。
全ての我慢が毒なのでしょうか。

1.どうして我慢は毒なのか

まず、シンプルに「しんどい」ですよね。
『今我慢している』と実感するときは、痛みや不快感、不安、怒り、苛立ちのような感情に抗っているときです。
感情は、放置すると暴走しますが、我慢しても消えません。むしろ強く蓋をするほど同じ強さで突き上げてきます。
我慢している、と感じるほどに、その原因となっている感情を強く実感してしまうことになります。

理由が分からない我慢も毒です。
子どもの頃から、親や学校の先生などは「我慢しろ」と繰り返して教えてきます。
我慢は時として必要です。ただ、「どうして我慢が必要なのか」の理由を教えてくれたり、一緒に考えてくれる人はほとんどいません。
理由が分からないのに辛い状態を継続しなければいけないのですから、終わったときは疲労困憊です。

繰り返すことで癖になってしまうのも問題です。
我慢しなければいけない理由が分からない、ということは、どんな時に我慢が必要か、の判別も出来ません。
しかしとりあえず我慢しておけば、周囲はそれ以上を求めません。場合によってはほめてくれたりします。
周囲が良しとするならいいのか、と思って繰り返すと、どうしたらいいかわからないときに、思考停止して我慢するだけになる場合があります。
結果として自己評価が下がり、自分に自信が持てなくなります。

2.どんな我慢が毒なのか

我慢や忍耐の全てが毒、ということではないと思います。
状況によっては必要ですし、自分にとってメリットになることもあります。
では、どんな我慢が「毒」なのでしょうか。

一つは「無期限・長期間」の我慢です。
いったいいつまで我慢すればいいのかわからない半永久的な我慢はただの苦痛です。

二つ目は「自分だけ」が我慢を強いられるときです。
他の人もみんな我慢している、と思うと、不思議と気持ちが楽になり、我慢することに前向きになれます。
しかし周囲は誰も我慢していないのに自分だけが我慢を強要されていればストレスでしかありません。

三つめは「理由がない」我慢です。
上述した内容と重複しますが、我慢する必要性は説かれても、何故我慢しなければいけないのか、何のための我慢なのかを考えることを教えられることはほとんどありません。
「とりあえず我慢しとく」を理由に出来る程度の我慢は子供の時だけです。
大人になればそうもいっていられないレベルの「我慢」がやってきます。
理由や目的が分からないまま我慢だけ続けた結果として、メンタルヘルスが損なわれてしまうのです。

3.毒になる我慢を回避する方法

我慢しなければならない場面は、日常のいたるところに存在します。
朝は眠いのを我慢して起きる。
満員電車では降りる駅まで混雑に我慢し続けます。
仕事で上司や顧客に苦言を言われれば我慢して聞き続けるしかないときがほとんどです。
疲れたから早く帰りたいと思っても、期限が迫っている仕事があれば我慢してこなします。
家族と意見が衝突すれば、どちらかが我慢してその場を収めることもあるでしょう。

しかし、我慢している状況をまるっと全部耐え続ける必要が、果たしてあるでしょうか。
「逃げる」または「向き合わない」「スルーする」というのも大事です。
満員電車がしんどいなら、早起きして30分早い電車に乗って、座れたら寝てしまう。
上司の叱責は、自分が同意できるポイントだけ拾って、後は無視する。
期限が迫っている仕事があっても、どうしても体調が悪いなら帰りましょう。辛い時に無理するより、元気な時に取り組んだほうが早く終わります。

自分だけが我慢している、と思うときは、我慢以外に「孤独」という毒もセットになります。
同じような我慢をしている人を探して気持ちを共有しましょう。
他人と気持ちを共有することは、上記の「逃げる」方法を見つけるためにも役立ちます。
「そういう方法があるのか」と気づきを得ることが出来ます。

我慢の上限を自分で決めておくのもいいでしょう。
今週は3つ我慢したから、これ以上はしない、とか。
〇〇については我慢するけど□□については我慢しない(反論する、逃げる、スルーする)
など、自分が比較的ストレスにならないジャンルでは「我慢しとく」、自分がセンシティブになってしまう問題は「逃げる」ようにすると、「我慢しない」ことへ罪悪感を覚えてしまうような真面目な人も、心のバランスを取ることが出来ます。

4.有益な「我慢」の条件

とはいえ、我慢の全てが毒・無駄・無意味ということはないと思います。

「短期間・期間限定」であれば、それほどメンタルが削られることもありません。
期間限定も、出来れば年単位は避けましょう。年単位になりそうなら、そもそも我慢するだけでは解決になりません。他の方法を考えるほうが得策です。

自分だけではなく「我慢の仲間がいる」時は、一緒に我慢することが団結力を増します。
複数人で我慢していれば、愚痴も聞きあえるし、そのうちに対処方法を考え出すことも出来ます。

「目的が明確」で「自分が納得できている」ときは、我慢というより一種のトレーニングです。
その時はただひたすら我慢するのではなく、過程が重要になります。
耐えている間に何をしたか、何を考えて、どう試して、何が上手くいって何が失敗したか。
この「あがき」が、のちに体で言うところの「筋肉」になります。

5.まとめ

我慢はしんどくて、する理由が分からなず、習慣化しやすいため、心にとって「毒」になりやすいです。うつ病などの精神疾患につながる理由にもなります。
我慢の全てが美徳ではありません。我慢してそれが後から実りになることが明確ならしてもいいでしょう。しかし理由もわからず無期限で自分だけが耐え続ける状態は、逃げていいし避けるべきです。

普段無意識にしている「我慢」が、果たして自分にとって有益なものかどうか、振り返ってみましょう。
ずっと続けてるけどただ習慣化してるだけかも、という我慢は、思い切って止めてみて、どんな効果が出るのか試してみましょう。

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