【発達障害の夫婦】配偶者が感じるストレスと対処法
前回は「ライフスキル」についてお話しました。
今回は仕事をする上での「ソフトスキル」について考えてみたいと思います。
特に「精神障害」「発達障害」を持つ方が働くときに気を付けるポイントを中心に述べてみたいと思います。
1.ソフトスキルとは
ソフトスキルとは、仕事をこなすうえでベースとなるスキルのことです。具体的にはコミュニケーションスキルや協調性、論理的思考力、創造性などが該当します。
(Shcoo)
これとは別に「ハードスキル」もあります。業務をする上で必要な専門知識や技術、一般的に「スキル」と使う時に想起されるものです。
ハードスキルは勿論重要ですが、ソフトスキルは、そもそも「持っていて当たり前」と思われる向きがあります。更に年齢や性別、過去の経験から「この程度のソフトスキルは身についているだろう」と見立てをたてて来ます。
しかしあくまで想像ですから、そのようにみられているとは当人は理解していません。
実際と想像がズレると、摩擦が起きます。
それが続くことで、人間関係がぎくしゃくしたり、業務が円滑に進まなくなったり、メンタルに支障が出て、適応障害やうつ病等になることもあります。
2.ソフトスキルの具体例
具体的には以下のようなスキルを指します。
1.コミュニケーション能力
2.問題解決能力
3.リーダーシップ
4.タイムマネジメント
5.創造性
6.学習意欲
7.EQ
どれも一定程度は持っているものかもしれません。
しかし上述したように、年齢や経験、経歴によって「この程度は…」と想定・期待されるレベルは様々です。
更に、これらを習得する方法は、就学中に直接学ぶことは出来ません。友人関係や教師とのやり取り、受験勉強などに取り組みながら「サブスキル」として身について行くものです。
ですから、仕事についたからといって自動的に習得・上達するものでもなければ、誰かが教えてくれるわけでもありません。
それなのに「仕事をする上でベースになるスキル」とみなされるのですから、働くとは本当に厳しい世界です。
3.精神・発達障害の人がソフトスキルに困るとき
障害をオープンにして「障害者雇用枠」で就労していると、これらのスキルはプラスアルファの能力として取り扱われます。
年齢が高くても、必ずしも身についているとは限らない、と、雇用側も認識しています。
それでも、チームの中で職歴が長かったり、年齢が上だと、新しいメンバーから「リーダー的存在」と目されて頼られる場面は出てきます。
「この次どうすればいいですか?」のような業務的な相談もあれば、
「○○さんはどうしてこの仕事選んだんですか?」みたいなキャリア相談まで受ける可能性があります。
精神障害の人は真面目で責任感が必要以上に強く、発達障害の人は部分的に能力が高いため、「相手にとって役に立つ立派な返答をしなければ」と気負ってしまい、気負い過ぎてそうした人間関係に疲れて自分の症状を悪化させる場合があります。
自分の状態を差し置いて、相手の事情を優先してしまうため、更に言うとそのバランスを取ることが出来ないため、背伸びをすることが多くなり、ソフトスキルを身につけるより先に症状を悪化させてダウンしてしまうのです。
4.精神・発達障害の人がソフトスキルを習得するとしたら?
上記引用のように、ソフトスキルは主だったものでも7つあります。
どれも重要ですが、まずは自分が自立したスタッフとして働くため、と考えた時、重要なのは「コミュニケーション能力」だと思います。
仕事の場で必要なコミュニケーションの代表格は「報連相」ですね。
しかし報連相も、
・何を誰に報告するのか
・どのタイミングで連絡するのか
・相談の仕方(内容、相手、解決を求めるのか、聞いて欲しいだけなのか、など)
が難しいです。
報連相を上手く使いこなすために、精神・発達障害の人はどうすればいいでしょうか。
1つは、「分からない部分」を出来るだけ減らすこと、です。
例えば仕事で「終わったら報告してね」と指示された時、
・どの段階まで完了したら「終わった」ことになるのか
・誰に、どんな方法で、どんな内容を報告するのか
がホワンとしたまま「はい」と言ってしまうと、相手の指示を了解したことになりません。
「終わったら報告してね」と言われた時、思い浮かぶシチュエーションがあると思います。
それを相手に伝えましょう。
「コピーを30部作ってホチキス止めして会議室に設置が完了したら、○○さんにお声かけします。不在の時はメールで完了時刻をお送りします」
その内容に問題がなければ何も言われないと思いますので、その通りに作業します。
違う部分があれば指摘が入るので修正しましょう。
2つ目は、思い込みを極力減らすこと、です。
特に悪い思い込みです。
よくあるのが「挨拶」に関する悪い思い込みです。
社内ですれ違ったときに相手から返事が返ってこなかったりすると、「自分は嫌われている」と確信して、その後その人を避けるようになります。
こちらから挨拶しても無視されるなら、最初から挨拶しなくなったりするのです。
しかし、たまたま挨拶に気づかなかった(他のことをかんがえていたり)とか、あいさつの声が聞こえなかっただけの偶然である可能性が限りなく高いです。
必要以上の思い込みが、その後のコミュニケーションを本当に悪化させてしまいます。
3つ目は、背伸びしないことです。
前項のように、同僚に頼られたときの対応方法ですね。
精神・発達障害の人は、「~~でなければならない」という理念がとても強い人が多いです。
他者への要求の強さに出ることもありますが、誰よりも自分に厳しくなります。
ですから相談されると、「ねばならない」姿に自分を近づけるためにあらゆる無理をします。
自分には抱えきれない問題を抱えてしまったり、答えられない質問に無理に解を見つけようとします。
「わからない」が言えないのです。それを言うことは相手への拒絶だと考えているのでしょう。
相談は、必ずしもすべてに対してYESで答えられるものでもないし、相談者が望むものを返せるとも限りません。
手に余ると思ったら、自分には分からないと伝えることも責任ある対応だということを知っておく必要があります。
何より背伸びをすると自分自身の症状が悪化します。それをみて相談した人も責任を感じてしまいます。負の連鎖が回ってしまうのです。
5.ポイントは「他者と比べない」
自分の中に基準を持っていないと、どうしても周囲の誰かと比較して自分のことを評価しがちです。
「Aさんと比べたら、自分は会話が下手だ」
「自分はBさんみたいに人へ声かけが出来ない」
など。
しかし他人と自分では特徴も背景も全く違うのですから、比べること自体が無理なのです。
精神・発達障害の人は、自己評価の低い人が多いです。特に職場では顕著になりがちです。
自信が無いからこそ誰かと自分を比べてしまい、更に落ち込んでしまうのです。
自分にどんなスキルがどれくらいあるか、は、絶対評価です。誰かと比べて上か下か、は関係ありません。
自分のソフトスキルを見直す時は、今まで自分がしてきたことを振り返りましょう。
その時、誰かと比べる必要はありません。
今の自分に、どのスキルがどれくらい必要か、を、絶対評価で分析し、取り組みましょう。
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