睡眠不足による5つの弊害
前回は「自律神経とは」について、うつ病と比較したり交感神経や副交感神経の役割を含めて考えてみました。
https://mbp-japan.com/chiba/ke
自律神経とは自動的に働いてくれるため、止めたり動かしたりを自分で決めることが出来ないけれど、生きていく上でとても重要な役割を担う「縁の下の力持ち」です。
今回は、その大事な自律神経を崩さないために毎日の生活で出来ることを考えてみましょう。
1.食習慣で出来ること
①一口をゆっくりたくさん噛む
「一口につき30回嚙みましょう」
というのを、子どもの頃親から言われたことはありませんか?
実際に30回噛もうとするとめちゃくちゃ大変ですし、途中で固形感はなくなってくるし、30回カウントしていることに疲れたり飽きたりしますよね。
30回噛め、と言いながら、どうして30回噛んだほうがいいのか、まで教えてくれる大人も少ないです。
唾液が出て消化を助けるから胃腸に優しいとか、ゆっくり食事をすることで満腹感を感じて食べ過ぎないから、とかも理由のうちですが、私が一番大事だと思うのは「マインドフルネス」です。
箸で食べ物を摘まんで、口を開けて中へ入れる。舌の上に食べ物を乗せて箸を口から抜き、顎を動かして歯で食べ物をかみ砕く。一口が大きければ最初は口が動かしづらいかもしれません。噛み続けることで食べ物が口の中で移動したり、舌の裏側に入ったり、味を感じたり料理の香りが鼻に抜けたりして食事を楽しみます。
この時、食べ物を食べる、という動きに集中します。仕事のことや人間関係の悩みが思考から排除されます。脳を余計な働きに使わない分血液が順調に体内を流れ、自律神経が整い、マインドフルになることでメンタルも安定します。
30回噛むことが大事なのではなく、食事に集中することが大事なのです。
②1日2リットルの水を飲む
ダイエットするときに、水を飲むように、と言われますが、ダイエットしていなくても水を飲む習慣は大事です。
お茶、コーヒー、味噌汁、ジュースなどでも水分を取ることは出来ますが、大事なのは「水」です。
カフェインや糖分、塩分が含まれていない水を摂取することで、腎臓の機能を助けて体から毒素が正常に排除されます。
また、自律神経と血流には強い関連があります。
血液がドロドロになってスムーズに体内を流れなくなると、体の隅々まで酸素や水分、栄養が行き渡らなくなり、腸内環境が崩れて自律神経が乱れます。
血流が低下すると交感神経が優位になり、気分がイライラしたり焦ったりします。仕事は何もしなくても緊張感が高まるものですが、水分不足が拍車をかけます。
私は100円ショップで買ってきた500ミリリットルサイズのボトルに水を入れてデスクに置いてます。そのボトルに1日3~4回分飲むのを目安にしています。
③カフェインの飲み方を工夫する
カフェインは交感神経が刺激されるため、気分を切り替えて集中力をアップさせてくれたり、眠気覚ましに有効ですが、最近はエナジードリンクの飲み過ぎなど、過剰摂取が問題になっています。
しかしこれも「適度に」摂取することで、交感神経と副交感神経のバランスを取る役割を果たしてくれます。
適度な摂取であれば、セロトニンやドーパミンの分泌を促してくれるので、気分を安定させてくれます。
適量は、1日にコーヒーをマグカップ3~4杯程度が目安です。
<厚生労働省HP>
https://www.mhlw.go.jp/stf/sei
薬などとは違うのでガチガチに意識しすぎる必要はないと思いますが、エナジードリンクを1日に何缶も飲んだ上にドリップコーヒーを何倍も飲んで、合間にチョコレートを食べたりすると明らかに過剰ですので、自分のライフスタイルや食の好みと相談しながら、健康的な摂取量を心がけましょう。
ちなみにスターバックスコーヒーの「グランデ」サイズは470mlなので、このサイズのドリップコーヒー1杯飲んだらその日は終了と思っておきましょう。
2.生活習慣のなかで出来ること
①深呼吸
1日に何回くらい呼吸していると思いますか?
人によって速さはまちまちなので回数もそうだと思いますが、約2万9千回くらいだそうです。
その全てを意識的にすることは出来ませんし必要ありませんが、何かに集中していると、気づかないうちに浅くなったり止まったりしていることがあるでしょう。
呼吸が浅い状態が続くと、「緊張状態にある」と脳が理解して、交感神経のスイッチが入ります。血管が収縮し、非常事態に備えます。瞬間的であれば問題ありませんが、1日8時間の労働時間のほとんどを緊張状態で過ごしていれば、体にかかる負荷は大きくなります。
30分に1回くらい休憩が取れれば一番ですが、現実的とは言えませんよね。
なので、1つの作業のケリがついたら、深呼吸をしましょう。
1)鼻から吸う(5秒) → 2)息を止める(5秒) → 3)口から吐く(8秒)
これを3回くらい繰り返します。これで大体1分くらいかかります。
時間に余裕があれば、3回×3クールで、3分くらい深呼吸を繰り返しましょう。
酸素不足だった体内にしっかり酸素が行き渡り、血流がスムーズになり、血管が開いて体温が調整され、脳が安定してスッキリして、次の仕事に取り掛かりやすくなっているでしょう。
②ゆっくりめに動く
これも副交感神経を働かせるための対策となります。
時間に追われるように過ごしている社会人は、移動は素早く、と早足になりがちかもしれませんが、実際は早足を心がけてもゆっくり歩こうとしても、かかっている時間に大差はありません。
むしろ「早く、早く」と自分を追い立てることで焦りが高じて、数秒早く到着した代わりにストレスや疲労が増大しているかもしれません。
普段から動作が素早い人ほど、あえて「ゆっくり」動いてみましょう。
せかせか小走りであるくより、一歩を大きく、ゆっくり呼吸を意識しながら歩く。
これも「歩く」という今の動作に集中するマインドフルネス効果があります。
更に、家を普段より早く出て、一駅先まで歩いて朝のウォーキングを取り入れることでセロトニンの分泌を促す、と言う方法もありますが、出勤前はどうしてもその日の仕事のことを考えたり、遅刻してはいけない、と思って無意識のうちに小走りになっているかもしれません。それでは逆効果で、自律神経が乱れてしまいます。
仕事で外出するとき、ランチで外へ出る時、上下階のフロアへ移動するときなどは、あえてゆっくりと移動して、自律神経のバランスを調整しましょう。
③睡眠は1日7時間、入眠直後の90分を死守
睡眠のリズムは、自律神経だけでなく健康やメンタルヘルスにもとても重要です。
しかし日中活動とやり残した仕事が気になるあまり、気がつけば削られる一方です。
若い頃徹夜した経験が、こういう時には仇になります。少しくらい寝なくても大丈夫、と、自分を過信して、気がついた時には睡眠がボロボロになって、日中活動にも悪影響を及ぼします。
何があっても7時間睡眠は確保しましょう。仕事の都合上、夜間は眠れない、というかたは、出来るだけ部屋を暗くして音を遮断し、夜間に近い状態を寝室に整えて眠りましょう。
そして、入眠後の90分間は可能な限り起きないようにしましょう。
どうしてもやらなければいけない仕事が残っているなら、90分寝た後で起きてからやりましょう。
現代で睡眠の最大の敵は「スマートフォン」だと思います。
スマホのアラームを目覚まし代わりにしている人も多いでしょう。であれば、枕元へ置いておく必要があります。すぐに眠れない時につい手が伸びてしまいますよね。
しかしスマホのライトと閲覧内容は、交感神経にだけ働きかけるので、全くの逆効果です。
出来ればスマホは寝床から離して置く、目覚ましは時計を用意しましょう。
3.その他
上記以外にも
- 1日30分~1時間のウォーキング
- 背筋を伸ばす
- 朝食をしっかり食べる
- 昼食後2時間はリラックスに専念する
- 夕食は就寝の3時間前までに済ませる
- ぬるめのお湯にしっかり浸かる入浴方法
- 就寝前1時間は寝る準備に当てる
などもありますが、働いている人には非現実的です。
時間に余裕があるときは是非試していただきたいと思います。
次回は「心、認知(考え方)との関係」から、自律神経を考えてみたいと思います。
≪参考資料≫
「決定版!図解いちばんわかりやすい自律神経」小林弘幸 (監修)、河出書房新社、2021年
「眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話: 自律神経のギモンを専門医がすべて解説」小林弘幸 (著)、日本文芸社、2020年
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