心のすれ違いを超えて:家族間の対立を乗り越える
うつ家族に必要な力の最後は「行動力」です。
行動する、と聞くと、思考型の型はハードルが高く感じるかもしれません。
しかしここでは、そんな大きな行動ではなく、ごく小さな行為・言動を差します。
では、どんな行動を増やせばいいか、どうやって増やすか、を考えていきましょう。
1.考える<行動する、のメリット
①思考・感情より、行動のほうがコントールが楽
例えば、昨夜夫婦喧嘩をした、と仮定します。
「ケンカの原因について考えないようにしよう」とするのと、
「じっとしていると(ケンカのことを)考えてしまうから、洗濯をしよう」とするのと、
どちらが「ケンカについて考えずにいられる」でしょうか?
②行動は第三者にも見える
心の中で「これからは〇〇のように考えよう」と決意することはとても大事です。
ただ、それは自分の胸の内だけの問題で、第三者には見えません。
言葉で宣言したところで、まだ話半分にしか聞いてもらえていないかもしれない。
例えば「もっと相手の気持ちを理解しよう」と決意するだけよりも、
「今日は〇〇が出来たんだね」
「疲れていそうだから無理しないでいいよ」
と声をかけるほうが、家族に分かりやすく伝わります。
③ガス抜き効果
家族がうつ病になった時、頭と心の中だけで考え込み始めると、どうしてもネガティブな、後ろ向きな、不安に引っ張られるような思考になりがちです。それは仕方のないことです。
そういうときに行動する、身体を動かす、環境を変えることは、頭と心に溜まったガスを抜いて空気を循環させるような役割を果たしてくれます。
2.極小レベルの行動からスタートしよう
①あいさつ
家族間ならほぼ無意識に交わしているだろう、「おはよう」「おやすみ」「いってらっしゃい」「ただいま」「いただきます」「ごちそうさま」を、意識して繰り返しましょう。
どんな言葉を掛けようか迷うのがうつ病患者の家族の悩みですが、あいさつなら言う内容もタイミングも決まっています。こちらからあいさつをした時点でコミュニケーションは発生しています。
相手からの返事がなくても悩まなくて大丈夫。
うつ病が重い時は、あいさつの声すら聞こえていません。
繰り返しているうちに、相手からも返事が返ってきます。
その変化も一つの前進です。
②自分一人の行動→相手と二人の行動→その他の人との行動、と広
まずは自分だけで出来る行動から手をつけましょう。
やっているうちに、「これなら家族(うつ病)と一緒に出来る」ものが見つかりますから、相手の状況をみてふたりで取り組みましょう。
そしてもっと時間が経ってうつが良くなってきたら、家族以外の人、例えば義家族や知人、地域の人を含めた行動を試しましょう。
いきなり最後(その他の人との行動)から始めようとするとハードルが高いので、気をつけましょう。
③「何もしない」ことを選ぶのも行動のひとつ
行動=何かする、と考えすぎなくて大丈夫です。
状況をみて、あえて何もしないことを選ぶのも「行動の選択」の一つです。
疲れたり、どうしても気分が向かないなら休みましょう。
3.「行動」についてのポイント
①行動した結果が期待通りじゃない=失敗、ではない
何かをする時は、「AをしたらAAという結果が得られる」ことを想定して動くことが多いです。
しかし、その通りになることのほうが珍しいのではないでしょうか。
例えば初めて作る料理は、レシピ通りに作っても思っていたほど美味しくなかった、ということは良くあることです。
でもそれは、行動が無駄なわけではありません。
「次はもっと長く火を通してみよう」
「塩をいれすぎないように注意しよう」
のように、対策を取ることを考えるはずです。
同じように、期待した結果ではなくても、「このやり方は合わないから、違う方法を考えよう」と思うための「実験」と捉えましょう。
②相手(うつ病)の動きも見る
自分が行動し始めることで、少しずつうつ病患者の行動や発言も変化していきます。
もし昨日と違う行動だ、と思ったら、マインドフルに「観察」して、暫くは本人に任せて「放置」しましょう。
③もっともっと、と欲張らない
自分に対しても、欲張ったり期待し過ぎたりしないように気をつけましょう。
家族がうつ病になったことで、意識していない部分で気力も体力も、それ以前よりは消耗が激しいはずです。
うつ病の人に「頑張れ、は禁物」と言われますが、うつ病家族こそ、自分に「頑張れ」を連発しないように気をつけましょう。
④大事なのは「得か、損か」
行動や言動に対して、「良し悪し」や「正しい・間違っている」の判断は必要ありません。
今の自分達にとって、それが得か損か、だけ考えればいいと思います。
A:「今はやっても疲れるだけ→もう少し元気になってから試そう」
B:「やっても疲れるだけ→だけどやるべきだから無理してでもやろう」
どっちが「今」の「自分達」にとって得か・損か、を考えましょう。
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「うつ病家族に必要な〇〇力」3つ、如何でしたでしょうか。
もっと他にもあるのでは、と思われた方も多いと思います。
もちろんこの3つだけで乗り越えられるものではありません。
この3つの力(スキル)は、家族と自分を守る土台のようなものです。
降りかかる不安や情報に振り回されず、「こうなりたい」という自分たちの思いに沿って生活していくために、必ず役に立ってくれる力です。