相手の言いなりになる<前編>
うつ病、適応障害、不安障害、対人恐怖症。
医師から診断を受けて治療をしている人から、「そうかもしれない」と不安を感じているひとまで様々です。
辛さと向き合い自分を持て余し、どうしたらいいか苦しんでいる時に、
『そんな病気になるのは心が弱いからだ』
と言われたこと、ありますよね。
心が弱いから、病気になるんでしょうか。
心が強かったら、絶対にこうした病気とは無縁なのでしょうか。
心の強さ・弱さって何でしょうか?
結論から言うと、私は「強弱」は無い、大事なのは「柔軟性」だと考えています。
心の強さとは?
言葉から受けるイメージでは
- 多少のことでは動じない
- どんな状況でも自信に満ちている
- 失敗しても落ち込まない
- 揺るがない意志を持っていて主張出来る
などの特徴を、持って生まれた人、のような印象を与えます。
しかし、こうした特徴を持った人が、本当にうつ病のような精神疾病や、心のストレスと無縁なのでしょうか。
何があってもへこたれないように見えているだけで、他人から見えないところで必死で自分を励ましたり、一人でお酒を飲んで忘れようとしたりしているのかもしれません。
又は自己暗示のように「自分はつよいから大丈夫だ」と言い聞かせていたり。
いずれにしても、何かしらの対処をしているケースがほとんどではないでしょうか。
更に言えば、自己流の対処で何とかしのげている、とも言えます。
そしてある程度なら、どんな人でもやっている対処法です。
心の弱さとは?
強さとは反対の意味ですね。たとえば、
- 些細なことで動揺したり落ち込んでしまう
- 動揺したり落ち込む自分について悩んでしまう
- 自分が不得意な状況だと、本来の実力が出せない
- 人に「こうだ」と言われると、それに必要以上に影響を受けてしまう
のような特徴があるかもしれません。
強さと対比した言い方をすれば、確かに「弱さ」といえなくはないでしょう。
ただこれも、捉え方の違いですよね。
- 些細なことで動揺して落ち込む→感受性が高い
- 落ち込む自分について悩む→思考力がある、わが身を振り返れる
- 状況によって実力が出せない→自分に合う状況なら問題ない
- 人の意見に必要以上に左右される→「聞く耳」を持っている
といえるのではないでしょうか。
だとすれば、確実にこれはその人の「長所」であり「武器」です。
使いどころや活かす場面を間違えなければいいだけです。
柔軟性とは?
「レジリエンス」という言葉を、聞いたことはないでしょうか。
英語のresiliencyは、弾力性・回復力を意味する。心理学の領域では、ストレスフルな経験や、脅威的な状況に置かれているにもかかわらず、精神的健康や適応的な行動を維持できる能力や特性を意味する。
マスン(Masten,A.S.)によれば、レジリエンシーには、楽観性、意欲的活動性、関係指向性の側面がある。ハーディネスがストレッサーに対する頑健性を意味する一方、レジリエンシーは、ストレッサーの影響を受けるが、認知の変容やコーピング方略により回復する力を意味する、という違いがある。レジリエンスとも呼ばれる。
「心理学辞典 新版」誠信書房 より
ストレッサーとは、押しつぶす力やその原因のこと。
押しつぶされれば変形します。凹んだ部分は、ゴムボールであれば徐々に元の形へ戻ります。
その「戻る力」を持っていて、自分なりの力の発揮方法を知っている人は、柔軟性が高い人、だと考えます。
ただ、ゴムボールと違って、人それぞれ元の形へ戻るまでの方法や、必要な道具や、かかる時間はまちまちです。
すぐ戻る人は、ぱっと見そもそも凹んでいないように見えます。
ゆっくり何日も何カ月もかけて戻る人、またはそれだけ大きく押しつぶされてしまった場合は、「中々元気にならないね。力が弱い=心が弱いんじゃない?」などと誤解されてしまうでしょう。
つまり、心の強さ、弱さ、なんてものは無くて、あるとすれば
- 自分の特徴をどこまで自覚しているか
- 自分の特徴の活かしどころ、活かし方を知っているか
- 自分の苦手な状況をどうやって回避するか
- 凹んだ場所が元に戻るまでの時間や方法の違い
だと思います。
心が弱いからうつ病になったんじゃない、誰もがやる対処方法(コーピング)では誤魔化すことが出来ないほどしんどくなったから、病気になって、特別な回復方法(服薬治療、休養、専門家への相談など)が必要になった、ということではないでしょうか。
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日本には素敵なことわざがあります。
柳に雪折れなし
しなやかでしたたかで、美しい柳の木のような心持でありたいですね。