働き方:コロナ禍の対応:アジャイルな働き方が注目されている理由

小川芳夫

小川芳夫

テーマ:働き方

このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。

新型コロナウイルスが流行する以前からVUCA(ヴーカ)は言われていました。VUCAとは、Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字です。不安定で、不確実で、複雑で、不明確といったところでしょうか。

コロナ禍になり、不安定性、不確実性、複雑性、不明確性は増していると感じます。

このような環境の下、アジャイルという言葉を最近良く見聞きするようになりました。
アジャイル、英語のagileで「機敏な」という意味の形容詞です。
アジャイルはソフトウェア開発で使われている開発方法の1つです。ソフトウェア開発で使われている方法が、ソフトウェア開発以外でも見聞きするようになっています。例えば、働き方、経営、組織文化。

このコラムでは、働き方について何故アジャイルが注目されているのか、について考えます。

はじめに、現状を整理します。
次に、整理した現状での対応策について考えます。
最後に、多くのビジネスパーソンの方々に関係する「働き方」について、アジャイルな働き方に必須なマインドセットとスキルについて考えたいと思います。


『働き方:アジャイルな働き方とは:アジャイルな働き方を導入するには』というコラムで、アジャイルな働き方を紹介しました。このコラムは続編という位置づけです。紹介ではなく、本質を掘り下げてみようという試みです。

私がアジャイルな働き方と出会ったのは2014年頃です。アジャイルな働き方が腑に落ちるまで時間がかかりました。試行錯誤しながら約4年間アジャイルな働き方を実践しました。コロナ禍でVUCAの今、アジャイルな働き方は1つの有力な選択肢ではないか、と私は思っています。自身の経験を踏まえて、このコラムを書きます。

このコラムは次の3つの章で構成します。10分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。

ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。


1. 現状の整理

ウィキペディアによるとVUCAについて下記の記述があります。

『VUCAはビジネス用語。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたアクロニム。1990年代後半にアメリカ合衆国で軍事用語として発生したが、2010年代になってビジネスの業界でも使われるようになった。「今はVUCAの世界になった」というような文脈で使われることも多い。

1990年代以前の戦争は、国と国との戦いであった。参謀本部が作戦を立案し、現場の部隊が作戦を実行する。ビジネスも同様で、経営陣は経営戦略を立てて、現場が実行する。軍隊もビジネスに携わる企業も組織の形態はヒエラルキーであったと言える。

1990年代以降に発生したアルカーイダがアメリカ合衆国を標的として実行された数々のテロ行為をアルカイーダとアメリカの戦争と見た場合、以前のような「国と国との戦い」とは根本的に異なる状態であった。アルカーイダは国ではなく、組織のようだがトップが誰かはよく分からない。また、トップが作戦を立て現場が実行しているわけでもなく、アルカーイダの思想に同調した人たちが同時多発的にテロを実行している。このようなアルカイーダとの戦争のスタイルを呼ぶのにVUCAという言葉が生まれ、それに応じた新しい戦い方が必要になった。

ビジネスの現場においても、テクノロジーの進歩は急速であり予測は困難、世界の市場は不確実性や不透明性を増した状況となっており、不安定なビジネスの状況を表すのにVUCAが用いられるようになってきた。』

新型コロナウイルスが流行する以前から、変革のスピードが速く、破壊的な変革が起こる時代になっていました。

自転車
いつ何が起こるかわからない。上の画像は悪路を自転車で走っている様子です。画像の出所は、Google画像(クリエイティブ・コモンズ ライセンス)です。
石を踏んでバランスを失い転んでしまうかもしれません。転んだら骨折してしまうかもしれません。鋭く尖ったものを踏んでパンクするかもしれません。危険が伴っています。それでも走っています。上の画像はレースをしている感じに見えますが、レースでなくても、少し危険でも風を切って走る爽快感は良いものです。そもそも100%の安全なんてあり得ませんし。

現状、私たちは上の画像のように、悪路を自転車で走っているような感じなのではないか、と私は考えています。

次の章では、このような現状の下で、どのような対応策があるのか、具体的に考えていきます。


2. 対応策

1章では私たちが置かれている現状を簡単に整理しました。
この章では、具体的な対応策について考えていきます。

自転車で悪路を走る時の対応策

まず自転車で走ることから。
悪路を自転車で走る時には怪我をしないように注意をしながら走りますよね。何が起こるかわからないので。街中を走る時でも歩行者やクルマが飛び出してこないか注意して走っていると思います。

ところで、「失敗」という言葉を辞書で調べると、「やり損なうこと」、「⽬的を果たせないこと」、「予期した効果をあげられないこと」とあります。自転車の場合は障害を負うような怪我をしてしまうことや命を落としてしまうことかもしれません。

そうした事態をできるだけ避けるために、機敏に対応すると思います。例えば、「うまくいかなそう」という状況を機敏に察知し、機敏に打ち手を考えて行動し、機敏に振り返りを実施すると思います。例えば、「以前このくらいの大きさの石を踏んだ時バランスを失って転びそうになって危険だった」という体験をしていれば、とっさに「数秒後にうまくいかなそう」と判断できます。それで、石を踏まないようにバランスを失わないようにしながら石を避けます。うまく走れたら「よかった。また集中しながら走ろう。」と思うでしょう。

以前に危ない体験をした、失敗とまではいかなかったものの結構ヤバい体験をした、その体験を振り返って「あのくらいの大きさの石を踏むと危険だ」と学習する。次に走った時に、学習したことを活かしながら走る。そしてまた振り返る。「前回学習したことを活かせた。集中して走ることは大切だな。」と学習する。このサイクルを繰り返す。こんな感じです。

自転車を例に出して、機敏に自転車を走らせること、すなわちアジャイルに自転車を走らせることを説明してみました。

教育における対応策

次に教育から。
『2020年度、子供の学びが進化します!新しい学習指導要領、スタート!』という2019年3月13日に出された政府広報があります。
2021年の新学期の時期に新聞やテレビなどでも紹介されていたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

予測困難なこれからの時代。子供たちには自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力が求められます。学校での学びを通じ、子供たちがそのような「生きる力」を育むために、学習指導要領が約10年ぶりに改訂され、2020年度より小学校から順に実施されます。』とあります。
小学校は2020年度、中学校は2021年度、高等学校は2022年度から始まるそうです。

新学習指導要領で『主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)』が重視され、児童生徒同士の対話型の活動を増やし、学ぶ過程を丁寧に解説する傾向が強まったそうです。

朝日新聞2021年3月31日朝刊に、『高校教科書「探究」重視 新科目、課題解決の力育む 検定終了、来春から』という記事が1面トップに載りました。記事は『検定結果が公表された高校の教科書には「探究学習」のコーナーがちりばめられている。問いを立てて調べ、表現する学びだ。』とし、教員の指導力がカギであるとしています。アクティブ・ラーニングでは、教員の方がファシリテーターになり、児童や生徒が主体的に対話をしながら学びを深めていきます。

1章で整理したとおり、私たちの現状は、不安定で、不確実で、複雑で、不明確で、予測困難です。子供たちは、変化の激しい社会に必要な生きる力を育むこと、人生を自ら切り拓いていく力、この力を対話しながら模索し身につけることが大切になったのだと思います。新しい学習指導要領が目指している「生きる力」。大人のあなたには備わっているでしょうか?


以上、教育での対応を見てきました。
次に、ビジネスでの対応というか、対応すべきことについて見てみます。

ビジネスパーソンにとっての対応策

世界経済フォーラムが2020年10月20日に出した『仕事の未来2020』("The Future of Jobs Report 2020")というレポートを参照して、どう対応すべきかを考えます。

ここでは、レポートの情報、データ、知識を視覚的に表現した資料("Infographics")から下図を見ましょう。図はタップやクリックで拡大します。
仕事の未来2020 Top 10 Skills 2025
拙い訳ですが日本語訳は私がつけました。どのようなスキルが求められているのか、ご理解いただけたら幸いです。

これらをまとめると、下記の4つの能力がコロナ禍の今求められているのだろう、と私は考えます。

  • 問題を分析し、課題を洗い出し、解決する能力
  • 自部門だけでなく各部門から集まった専門家たちを、チームビルディングし、チームで協働する能力
  • テクノロジーを活用する能力
  • チームとしてメンバーの自己管理能力(回復力、ストレス耐性、柔軟性)を向上させる能力


児童生徒たちに求められているのは、予測困難な環境の下、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力でした。

大人にも、関係する人たちと協働して、問題を分析し、課題を洗い出し、そして解決する能力が求められている、と世界経済フォーラムは主張している、と私は考えています。

大人も子供も、コロナ禍でVUCAの今、自律的に問題を分析し、自律的に課題を洗い出し、そして自律的に解決できるようになること。そしてこのサイクルを振り返り、何が良かったのか(うまくいった理由は何か)、何が良くなかったのか(うまくいかなかった理由は何か)、次はどうしたら良いのか(次チャレンジすること)を学習して、次のサイクルは今より良いものにすること。このサイクルを継続して回すこと。こういうことが求められているのではないでしょうか。

これが対応策なのだろう、と私は考えます。


3. アジャイルな働き方に必須なマインドセットとスキル

2章ではコロナ禍でVUCAの今に対する対応策を考えました。
この章では、対応策を実施するために必須なマインドセットとスキルについて考えます。


アジャイルな働き方に必須なマインドセット

予測困難で、不安定で、不確実で、複雑で、不明確。何が正解か誰も知りません。でも今のまま立ち止まり続けることもできません。行動を起こすことが必要です。じゃあ、何をすることが必要なのでしょう。

小さな失敗をすることが貴重だ、と私は考えます。2章で、障害を負ってしまうような怪我や命を落とすようなことがあってはいけない、と書きました。一方、転んで擦りむいて少し出血をする程度であれば、貴重な体験だと私は思います。小さな失敗をする。その失敗を振り返り、何が良かったのか(うまくいった理由は何か)、何が良くなかったのか(うまくいかなかった理由は何か)、次はどうしたら良いのか(次チャレンジすること)を学習する。自転車の場合なら個人で振り返れば良いのかもしれません。ビジネスの世界では、チームで振り返ることが必須です。このサイクルを機敏に回すことが必須です。年に1回とか月に1回とかではアジャイルな働き方ではありません。毎日回すくらいの頻度でやることが必要だと考えます。

アインシュタインは "We cannot solve our problems with the same thinking we used when we created them."(「問題を作りだした時と同じ考え方では、その問題を解決することはできない」)という名言を残しました。エジソンは "I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work."(「私は失敗していない。 ただ、1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ」)との名言を残しました。

小さな失敗や、失敗しそうになったヒヤリ・ハットを、学習材料にして、自分たちを成長させる糧とするべきです。今までのやり方や考え方が合わないのであれば、変える勇気が必要です。新しいやり方や考え方でトライする。うまく行かなそうなら、そのことを機敏に察知し、機敏に打ち手を考えて行動し、機敏に振り返りを実施する、この一連のことから学びを積み重ねていく。このマインドセットが必須です。ゆっくりやっていたら、自転車で転んで大怪我してしまいますよ。機敏に対応すること、アジャイルに対応する働き方が大切です。

ここで大切なことはビジョンをしっかり持つことです。目標をしっかり持つことです。自転車の例で言うと、「ゴールとして目指す◯◯までたどり着くこと」。ここは安易に変えるべきではありません。一方、「そのために何か起きた時に迅速に対応すること(対応できる能力があること)」「ゴールにたどり着くための手段は迅速に変える勇気を持つこと(そういう判断力を持つこと)」は大切です。

小さい失敗を放置し続けて大きな失敗につなげてしまうのか、小さな失敗から学習し続けて目標を成し遂げるのか、この差は大きいです。

さて、どこまで回し続ければ良いのか。
そのプロジェクトが終わるまでです。商品であれば、販売が終了しサポートが完了するまででしょう。終わりがない、ということです。常にβであるということです。しかし、前のβよりも今のβの方が優れている、ということを続ける。例えるならスマホのiOSやアンドロイドのような感じです。アップデートし続けていますよね。不具合もありますが進化を続けています。あんな感じです。


アジャイルな働き方に必須なカンバン管理

マインドセットがらみで、ツールとフレームワークを使うことに触れます。
アジャイルな働き方をするために、上の節で説明したマインドセットを実行に移すためには、ツールとフレームワークが必須になります。

アジャイルな働き方を実践するにはカンバン管理が必須です。
例えば、Trello というツールがあります。
コロナ禍でテレワークやワーケーションなど、チーム全員が対面で会わない働き方が定着しつつあります。リモートで働いていても、オフィスで働いていても、チーム全員の進捗が把握できるようにしておくことは必須です。


ツールがあっても、それをどう使うのかが決まっていないと、何の役にも立ちません。
つまり、ツール以前に「どうカンバン管理するのか」がチーム内で合意されていることが必須です。例えば、1つのTo Do項目の粒度はどのくらいの大きさにするのか、1つのTo Doについて誰が何の役割を持つのか、完了基準はどうするのか、こういったことが合意されていることが必須です。「誰が何の役割を持つのか」については、RACI(レイシー) というフレームワークが役に立ちます。

マインドセットに関しては以上とします。
次に、スキルについて考えます。

アジャイルな働き方に必須なスキル

自律的に問題を分析し、自律的に課題を洗い出し、そして自律的に解決できるようになること。そしてこのサイクルを振り返り、何が良かったのか(うまくいった理由は何か)、何が良くなかったのか(うまくいかなかった理由は何か)、次はどうしたら良いのか(次チャレンジすること)を学習して、次のサイクルは今より良いものにすること。これが対応策だ、と2章に書きました。

これをするには、何のスキルが必須なのでしょうか。

「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、BTFコンサルティングという屋号で開業した私としては、ソフトスキルが必須である、と主張します。

ソフトスキル

ソフトスキルとは、対人系のスキルで、ファシリテーションコミュニケーションプレゼンテーションリーダーシップチームビルディングなどのスキルです。

ソフトスキルの対語はハードスキルです。ソフトウェア開発のスキルやプロジェクトマネジメントのスキルはハードスキルです。ソフトウェア開発やプロジェクトマネジメントは内容が体系化されていて文書化されている、このように言うこともできると思います。例えばプロジェクト・マネジメントの領域でのPMBOK (Project Management Body Of Knowledge)。プロジェクト・マネジメントに必要な知識が体系化され、まとめられたもの、これがPMBOKです。なお、BOK (Body Of Knowledge) を日本語にすると「知識体系」です。体系化されて文書化されているということは、AIが学習する材料が既に存在しているてAIに学習させやすい、ということです。例えば、コールセンター分野、医療分野、会計分野などでは、既にAIが進出しています。

ソフトスキルはハードスキルと比較すると、体系化されていない・するのが難しい、また文書化されていない・しにくい、と言えると思います。コロナ禍となり、ソフトスキルの重要さを訴える人が増えています。ソフトスキルのことをパワースキルという人も出てきています。("Let’s Stop Talking About Soft Skills: They’re PowerSkills"

ここでは、具体的なイメージを持っていただくために、複数の部門が関わらないと解決することができない規模感の問題が発生したと仮定して、ソフトスキルがどう役立つのかを考えます。
今まで自組織内の改善活動はよくやっていたものの、複数の部門での協働はあまりやったことがないと仮定します。しかも過去の経緯から◯◯部門とはあまり仲が良くないと仮定しましょう。


チームビルディング

関係者が集まってだけではチームとして機能しません。ただ集まっただけです。チームとして機能するようチームビルディングする必要があります。
「そのチームで協働するという体験に価値を感じられること、納得できる体験価値があること」これが必須である、と私は考えます。複数の部門のトップ、例えば事業部長が、この問題を解決することの必要性や意義について、明確なメッセージをチームに与えることも重要です。集まった関係者が、この問題解決に取り組むことの必要性や大切さを理解できるからです。

リーダーシップ

リーダーシップとは、チームで問題解決という目標に向かって協働し、解決という目標を成し遂げる力です。目標を達成するよう働きかける力とも言えます。リーダーとは役割や職責であり、具体的には主任、課長、部長などです。リーダーシップは、リーダーの職責を担う人だけに求められる能力ではありません。チームの目標を達成するために活動する集まった関係者の一人ひとりに必要な力なのです。

ファシリタティブ(facilitative)は、「物事の進行などを促進する」という意味の形容詞です。ファシリタティブなリーダーシップとは、ファシリテーションを中核に置きながら、チームに働きかけチームが目指す目標に到達するようリードするリーダーシップです。リーダーシップの領域では、ファシリタティブなリーダーシップが必須になっていく、と私は考えます。

ファシリテーション

さて、実際にチームで協働して、問題を分析し、課題を洗い出し、課題解決に優先順位を付けて、優先順位が高い課題から解決する、という行為は、具体的には会議やワークショップを開催することになります。コロナ禍では、全員が会議室に集まることは無理かもしれませんので、オンライン会議やオンラインのワークショップを開催することになります。

ファシリテーターが必須です。ファシリテーションを活用して議論することが必須です。

リテラシー(literacy)とは読み書きの識字能力という意味から使われ始めた言葉だと思います。今は、識字能力に加えて、特定の分野の技能、知識、能力という意味でも使われるようになりました。会議を実施する技能、知識、能力を「会議リテラシー」と言うならば、ファシリテーションを活用した会議リテラシーを根付かせることはとても大切なことだ、と私は考えています。ここは私がBTFコンサルティングという事業を起こしたモチベーションでもあります。

問題を分析し、課題を洗い出すためには、現状を見える化することが必須です。業務プロセスを見える化する、プロセス・マッピングというフレームワークがあります。海外では、LOVEM (Line Of Visibility Enterprise Modeling) と呼ばれている手法があります。ハードスキルとしての業務経験知識が必須です。

下図は、バイクをショップから受注しショップに販売すると言う業務を行っている会社のプロセス・マッピングです。(図はタップやクリックで拡大します)
この例では、自社の受注業務の経験知識を持つ人、生産業務の経験知識を持つ人、出荷業務の経験知識を持つ人、納品業務の経験知識を持つ人などがいないと、プロセス・マッピングできないことがわかります。さらに、課題が見つけるためには、他業務への影響分析が必要となるかもしれません。
プロセス・マッピング

ハードスキル

上の項でハードスキルとしての業務知識が必須だと書きました。
また、現状の問題を把握し分析するためには、実際のデータを分析するハードスキルが必要になる場面もあるでしょう。ハードスキルのデータサイエンスのスキルを持つ人の参画が必要かもしれません。

思考法

問題を分析し、課題を洗い出し、解決するための打ち手を議論するためには、クリティカル・シンキング(Critical Thinking)ロジカル・シンキング(Logical Thinking)などの思考法を活用することが有効な場合もあります。ファシリテーターは、フレームワークや思考法などを活用して、議論プロセスを設計することが必須です。

言い換えると、自部門だけでなく、各部門から集まった専門家たちをチームビルディングし、チームで問題を分析し課題を洗い出し解決策を議論するプロセスを設計する、ということです。

コミュニケーション

このような複数部門が関係するプロジェクトの場合、関係者との様々な調整を行うコミュニケーション能力が必須です。

ソフトスキルのコミュニケーションは、誰に何を伝え理解して欲しいのか、そのためにどうアプローチするのか、そのコミュニケーションの目標が達成されたことをどう確かめるのか、これらを事前に計画することが大切になります。

プレゼンテーション

説明が必要な場合も多々ありますので、プレゼンテーション能力も必須になります。わかりやすく説明し理解してもらう能力です。

3章のまとめ

自律的に問題を分析し、自律的に課題を洗い出し、そして自律的に解決できるようになること。そしてこのサイクルを振り返り、何が良かったのか(うまくいった理由は何か)、何が良くなかったのか(うまくいかなかった理由は何か)、次はどうしたら良いのか(次チャレンジすること)を学習して、次のサイクルは今より良いものにすること。
ソフトスキルなしでこれらを成し遂げることはできない、と私は考えます。


ソフトスキルは座学や研修に参加すれば身につくといった類のものではありません。スポーツが座学や研修だけで上達しないことと同じです。座学や研修に加えて、リアルな仕事の場で実践を通じて研鑽することが求められます。既にソフトスキルを保持している人をコーチ役やメンター役に付けて、適宜アドバイスを受けながら研鑽することが上達への近道である、と私は考えます。

私が提案するアプローチは下記です。
最初にファシリテーションを学ぶ。
会議をファシリテートすることをリアルな仕事の場で経験していく中で、他のソフトスキルが必ず必要になりますので、都度必要なソフトスキルを学ぶ。そしてリアルな仕事の場で研鑽する。これを繰り返す。

こうしたアプローチを提案します。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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小川芳夫プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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