質問:胚移植周期でも自然妊娠することはあるのでしょうか?
そもそもDHEAとは?
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は、副腎で生成されるステロイドホルモンの一種で、男性ホルモン(アンドロゲン)や女性ホルモン(エストロゲン)の前駆物質として機能します。加齢とともに体内のDHEAの量は減少し、特に40歳以上の女性において、卵巣機能や妊娠率に影響を与える可能性があると考えられていました。
以前の主張:DHEAの不妊治療における効果
かつては、DHEA補充が高齢女性の卵巣機能を改善し、卵子の質を向上させることで、妊娠率を上げるとされ、特に40歳以上の女性を対象に不妊治療で使用されるケースが増えていました。これは、DHEAが卵巣の老化を遅らせ、卵巣の予備能力を高めるとの仮説に基づいており、以下のようなメリットが期待されていました。
・卵子の質向上:DHEAが卵子の発育をサポートし、染色体異常を減少させることで、妊娠の可能性が高まるとされました。
・卵巣予備能の改善:卵巣の老化を遅らせることで、卵巣から排卵される卵子の数が増えるとされました。
このため、DHEAは高齢の不妊治療患者に対して積極的に使用されてきました。
最新の研究:効果の限界と副作用の問題
近年の研究では、DHEAの効果は過去に考えられていたほど強力ではなく、特に年齢による妊娠率の向上にはあまり影響を与えないことが示されています。いくつかのポイントが注目されています。
・限定的な効果:最新の臨床試験やメタ分析では、DHEA補充が卵巣機能や卵子の質を顕著に改善する効果が認められないケースが多く報告されています。一部の研究では、DHEA補充によってAMH(抗ミュラー管ホルモン)値が若干改善する例が見られたものの、妊娠率や出産率に大きな影響を与える証拠は不十分です。
・副作用のリスク:DHEAはアンドロゲン(男性ホルモン)に変換されることがあり、これにより体毛の増加、声が低くなる、にきびができるといった副作用が報告されています。特にホルモンバランスの乱れが起こる可能性が指摘されており、過剰な補充がかえって健康に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
なぜDHEA補充が話題にならなくなったのか?
以前は不妊治療においてDHEA補充が注目されていましたが、以下の理由からその使用は減少しています。
1)効果が限定的であることの発覚:研究が進むにつれて、DHEAが卵巣機能や妊娠率に与える効果が予想よりも限定的であることが明らかになりました。特に年齢に関係なく、補充による妊娠率向上の効果は期待されるほど大きくないとされています。
2)副作用の懸念:DHEA補充によるホルモンバランスの乱れや男性ホルモンの増加による副作用(にきび、体毛の増加など)のリスクが高まっており、安全性への懸念が広がっています。
3)より効果的な代替治療の登場:DHEAに代わる、より科学的に裏付けられた治療法が増え、DHEA補充の必要性が薄れてきたことも一因です。たとえば、エストロゲンやプロゲステロンの補充、体外受精(IVF)の技術進歩などがより高い成功率を示しています。
結論
DHEAは一時的に不妊治療において注目されましたが、現在ではその効果が限定的であることが明らかになり、副作用のリスクも高いため、使用が減少しています。特に高齢女性の不妊治療におけるDHEA補充は、かつて期待されたほどの効果がないことが最新の研究で示されており、安全性と有効性に関する懸念が増えています。
初心者にとっては、DHEA補充の効果に過度な期待を持たず、医師と相談しながら慎重に判断することが重要です。また、DHEAに代わる他の治療法も検討することが望まれます。